第27話 わかったよ

「では……」依頼者は立ち上がって、「謎の解明、お願いしますね。私は……今日のところは帰ります」

「お帰りに?」ちょっと意外だった。「大丈夫ですか? 護衛とかは……」

「問題ありません。護衛はすでにいます」やっぱり金持ちなのかな……「依頼料のほうは……」

「まず事件の概要を調べてからですね」わからないことが多すぎるので、まだ金銭は受け取りたくない。「ご安心を。謎はちゃんと解明してみせますよ」

「期待しています」


 そのまま、依頼者は立ち去っていった。だが……まだ彼女との会話は終わっていない。


 俺は立ち上がって、依頼者が座っていた席を調べる。


 すると……


「やっぱり……」案の定、盗聴器が見つかった。「こういうのは感心しませんね。必要なものなら取りに来てください。取りに来ないなら……壊しますよ」


 盗聴器に向かって呼びかけてみたが、反応はない。なら壊しても良いものなのだろう。俺は盗聴器を握り潰して、念のため水没させる。ゴミ出しについては……あとで調べよう。


「さてと……」


 俺は自分の席に座って、パソコンを起動する。


 すると、


「依頼ッスか?」いつの間にか、弟子が目の前にいた。「さっきの女子高生さんから、なにか依頼を受けたんですか?」

「……ああ……」できる限り平静を装って、「なかなかクセモノみたいだ。盗聴器を仕掛けていったよ」

「なるほど……まぁ探偵に依頼するなら、必要な警戒かもしれませんね」

「そういうことだ」


 盗聴器を仕掛けるな、とは言わない。むしろ素晴らしい自衛策だと褒めよう。強いて問題点を告げるなら……バレないように仕込め、という話だ。


 そんで……


「キミは……あの依頼者と知り合いだったりするのか?」

「……」


 珍しく無言を返してきたので、


「わかったよ。聞かないことにする」

「ありがとうございます」誰だって言いたくないことくらいあるものだ。「これから学校に調査に行くんですか?」

「そのつもりだよ。連絡して許可が取れたら、だけどな」


 突っぱねられる可能性もあるが。


「だったら……お面とかあるッスか? 顔さえ隠せれば、なんでも良いッス」

「お面?」

「はいッス。私があの学校に行くと、ちょっと混乱させそうなので」やっぱり……同じ制服だったもんな。「でも、久しぶりに事件はおもしろそうッス。ついていくッス」

「……大丈夫か?」おそらくトラウマになっているだろう。「留守番してても良いんだぞ?」

「大丈夫ッスよ。珍しくちゃんとした推理ができそうじゃないッスか。留守番なんてしてられないッス」


 それはたしかに……今回ははじめて、まともな推理ができそうな気がする。気がするだけだろうけど。


「わかった」本人の意志を尊重しよう。「じゃあ……学校の概要を調べて連絡して……お面を買ったら学校に向かうか」

「はいッス」


 元気の良い弟子の声を聞きながら、俺はその学校について調べ始めた。


 はてさて……今回の事件はどうなることやら。

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