第21話 奇妙なこと
弟子からのお願い。謎を出してほしいというお願い。
今まで師匠らしいことは何一つできていないし……謎を出すくらい良いだろう。
「じゃあ……いくぞ」即興で考えたから、かなり適当だが……「これは俺の身に降り掛かった……ちょっとした恐怖の出来事だ。とある存在に……俺の行動や思考が読まれているんじゃないか、って思ったのが始まりだ」
実際……ちょっとビビったこともある。それに今もビビることもある。考えてみれば怖いことだが、当然のように受け入れられていることでもある。
「そのとある存在ってのがなにか当てれば良い、ってことッスね」
「そういうことだ」今回は弟子も真剣みたいだし、こちらも真剣に行こう。問題は即興だけど。「俺がその存在と出会ったのは、高校生の頃だ。気がつけば周りの人間はその存在と出会っていたから、俺も興味本位で手を出した」
たまに……手を出すべきじゃなかったと思うこともある。
「その存在は……すぐに折れの生活に馴染んだ。だが……その後、奇妙なことが起こり始めたんだ」
「奇妙なこと?」
「ああ。その存在は……俺の趣味趣向を未来予知のように当て始めたんだ」ビビるほど正確に、である。「俺の好きな音楽……好きなテレビ。好きな人物、好きな食べ物、興味のあるもの……そういったものが、あの存在には筒抜けになった。まるでストーカーみたいだと、本気で気味が悪くなったこともある」
「……そんな危険な存在、なんですか?」
「場合によっては危険になることもある、ということだ。対応さえ間違えなければ、問題は基本的に起こらない」
間違える人がいるのは事実だ。
弟子はお茶を一口飲んでから、
「その存在から……離れたら良いんじゃないですか? つきまとってくるんですか?」
「いや、つきまとっては来ない。だが……手放すことも難しいんだ」
「なぜ、ですか?」
「それほど依存性が高い場合もあるんだ。命に関わるほどに、依存してしまう場合もある」
そう……社会問題になるほどの依存性がある。俺は気をつけているつもりだが……気がつけば依存している。
さらに……
「詐欺とか……犯罪に巻き込まれる可能性もあるぞ。無論、それも使い方を間違えた場合だが」
「……そんな危険をはらんだものがあるんですねぇ……」
たしかに危険なものだ。その存在に近づくには、細心かつ最新の注意をはらわないといけない。
「そんな存在が……高校時代から俺の近くに存在する。そいつは……なんていう存在だと思う?」
この謎は……もしかしたら謎じゃないのかもしれない。その存在を知っている人物には簡単に通じるかもしれないが……果たして弟子に通じるだろうか?
☆
読者への挑戦状っぽくなっていますが、そういう作品ではないのでお気軽に次のページにお進みください。
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