その存在
第20話 怖い顔は生まれつきだ
「ネタ切れッス」
「言われなくてもわかってる」なんなら一話の時点でネタとかなかった。「しかし……アレだな」
「そうッスね。物語に整合性をもたせようとするとメチャクチャになるのに、メチャクチャにしようとするとなぜか整合性を見出したくなるんですよね」
ままならないものである。まぁ……この物語に整合性などないが。あと俺はメタ発言が嫌いだ。
「ちなみに前回の話で書き忘れましたけど……『エサは焼肉ヤクザはニタリ』は『下手の考え休むに似たり』の間違いッス」
「知ってるなら間違えるなよ」というか間違えすぎだろ。「そもそも、その手の種明かしは前のエピソードに書けよ」
「忘れてたッス。思い出しただけでも褒めてほしいッス」
「何度でも言うが、俺はメタ発言が嫌いだ。正確には……たまに挟まるメタ発言は嫌いじゃない。だが乱発するのは苦手だ」
「なるほど……では、メタ要素があるゲームは?」
「それを主題として、しっかりと向かい合ってるなら好きだ」
ただのメタ発言じゃなくて、第四の壁に挑戦してるなら好きだ。
この作品は、明らかにふざけているだけである。
「ではなぜ、こんな作品を?」
「苦手だからこそ、書いてみようかと思っただけだ」要するにただの気まぐれである。「そして何度もいうが、俺はメタ要素が嫌いだ」
「本当に何度も言いますね」
「そうだな」
……
……
……
「……そういえば今更、かつ聞いて良いのかわからないことなんだが……」
「なんでしょう」
「キミは……学校とかはいいのか?」
毎日俺の事務所に入り浸っているけれど……年齢的には高校生くらいだろう。出会った頃は、制服しか服を持っていなかった。途中で買い与えたので今は私服だが……
というか制服姿でホームレスしてて、よく補導されなかったな。まぁ……警部があれだからしょうがないか。
「学校……ああ、どうなってるんですかねぇ……」遠い目をしていた。「一応バイトして……高校に入学はしたッス。でもつまんなくなって……すぐにいかなくなったッス。ずっと無断欠席してるんで……退学あつかいッスかね」
「……確認とかは、しなくていいのか?」
「いいッスよ。私、嫌われてましたし」この性格を煙たく思う人もいるんだろうな。「学費払ったのは私だし……出てけって言われたので。とくに未練はないッス」
未練がないのはわかったが……
「……出てけ、ってのは?」
「先生に言われたッス。そしたらクラスで大合唱になったので……そもそも出ていきたいと思ったので、ちょうど良かったッス」
……
「私は気にしてないッス」俺が表情を変えたのを見て、弟子が言う。「私はたしかにクラスの和を乱してました。まぁ……わざとやってたわけじゃないんですけど、同年代との会話の仕方がわからなくて」
わかんないだろうな。俺だってわからない。誰だってわからない。わかったフリをしているだけだ。
「私が集団から排除されるのは当然だと思うッス。あれは彼ら彼女らの防衛反応なんですよ」教師がしていいことじゃないだろうに。「そもそも……私はあんなつまんない空間、願い下げッス。追い出されてよかったと思ってますよ」
「……」
「だからそんな怖い顔しないでくださいッス」
「……怖い顔は生まれつきだ」俺は息を吐いて、力を抜く。「キミは……」
なにか声をかけようとして、なにも言葉は出てこなかった。
なんて声をかける? どうしたら彼女の傷を癒せる? 強がっているが、傷ついていないわけじゃないのだろう。そんな彼女に俺ができることなんて、あるのだろうか。
とりあえず……その学校とやらは無視できん。いつか調べに行くとして……
「そうですねぇ……」俺の変化を察した弟子が、「じゃあ、1つ弟子からのお願いッス」
「なんだ?」
「謎を出してほしいッス」
「……謎……? そんなんでいいのか?」
「はい。私は、探偵の弟子ッスから」
その理屈はよくわからんが……まぁ謎で良ければ出してやろう。
……
だが……
突然言われても、思いつかんな……
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