第11話 練習相手の正体
ちなみに俺たちがいる喫茶店は風光明媚と呼ばれる喫茶店である。
「この作者の作品によく登場する喫茶店ッス。名前を考えるのが面倒だから適当に使いまわしているだけッス」
だからメタ発言はやめろ。嫌いだから。
「まぁ、こんな具合ですよ。推理したいのに……その場面が訪れないんです」
「なるほど……」この女性店員さんだけが、俺の話をまともに聞いてくれる。「では……1つなぞなぞでも出題しましょうか」
「なぞなぞ、ですか」美女がなぞなぞっていうだけで、なんかかわいいな。「……あなたの出題するなぞなぞは、ちょっと怖いですね」
「そうですか?」そうなんですよ。「まぁ、なぞなぞというのは言い過ぎましたね。ちょっとした……高校時代の疑問です。ただの世間話に近いものですよ。あまり身構えなくても大丈夫です」
めっちゃ身構えてしまった。
というかアレだ……俺がこの喫茶店に来ているのは、この店員さん目当てなのだ。要するに好きなのだ。好きな人の前でいいところを見せたいのだ。
常連になって話しかけるまでに数年を要している。そろそろ……良いところを見せたい。いつもバカみたいな事件の話題しかないからな。
「では問題です」……緊張しすぎないようにしよう。「私は高校時代にバスケットボール部に所属していたんですが……そのときに発生した、ちょっとした事柄なんです」
バスケットボール部か……似合うな。長身でスラッとしているし……
……
ちょっとユニフォーム姿の店員さんを想像してしまった。めちゃくちゃ似合っててニヤつきそうになった。
「私が一年生の時の話です。いつも居残り練習に付き合ってくれる人が、たまたま用事で先に帰ってしまったんです。仕方がなく、私は一人でフォームチェックをしていました」
熱心な部員だったんだな。1人で居残り練習とは……
「ですが……やはり1人での練習は味気ないな、と思っていました。そもそも私が居残り練習を誘われたのも、もう1人の部員に誘われたから、ですからね」
この店員さんを居残り練習に誘うのか……結構ハードルが高そうだが、なかなかお友達とやらもやる。
「そんなときに私は、とある人物を見つけました。その人物はずっと体育館の中に……私の近くに存在していたんですが、私はその存在に気づいていませんでした。盲点にいたというかなんというか……」
……盲点、ね。
「ともあれ、私はその人物との練習を開始しました。幸い技量も私と同等で……素晴らしい練習相手でした」技量が同等の相手は、意外と見つからないものだ。「ですが不思議なことに……その人物の足元からは音がしないんです。ドリブルをしても、シュートを決めても……聞こえるのは私の足音やボールの音だけだったんです」
……ふむ……なるほど。そいつは奇妙だ。
店員さんは話をまとめる。
「というのが……高校時代の私の身に起きた、不思議な出来事です」店員さんは皿洗いを終えて、「どうでしょう探偵さん。この練習相手の正体……見破ることができますか?」
☆
読者への挑戦状っぽくなっていますが、そういう作品ではないのでお気軽に次のページにお進みください。
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