第42話 魔の森の主 ネイキッドでの強さ
サアヤが気を利かせてくれて私はリュティアとイシュモニアに戻りました。
しばらくはリュティアの飛行艇で休養ということになったそうです。
既に迷宮氾濫の鎮圧の功績で私たちのA級魔導師資格は繰り上げで認められたそうです。
私は消耗してるという体でスティングレイに閉じこもりました。
リュティアが何も言わずに付き添ってくれました。
私は分かっていたんです。
龍を倒した時に。
私はレナーティアーの能力を安全に扱う為に一層の修行が必要でした。
また大魔導師様に助けて戴くつもりでしたが。
またリュティアと別れて頑張らなければなりません。
辛いんです。寂しいです。
でも仕方が無いんです。
もうすぐララノアも一段成長します。
勇気をだして頑張らなければなりません。
縋り付いた私をリュティアはいつも優しくハグしてくれました。
あの不思議な花の香りの中で。
※※※※※※
「よう来たよう来た」
シャラザール老師がご機嫌です。
シャンブロウさんも笑顔です。
お約束のように沢山のお料理を上納しました。
老師もリュティアに負けないハイストレージがあるようでかなりの量のお料理をスッと収納してました。
「今度は光りのスプライトも一緒か。また強くなりそうじゃな」
さすが大魔導師様。
「今度はレナーティアーを使わずにネイキッドの強さを高める修行です。宜しくお願いします」
大魔導師様もシャンブロウさんも心得ていらっしゃる感じでした。
「ケルビム5体ヴァルキュリア5体からスタートじゃな」
「そんな感じでお願いします」
※※※
レナーティアー無しでネイキッドの能力を高める。
言うは易く行うは難し。
ケルビム5体ヴァルキュリア5体は前回も経験していました。
ネイキッドで戦うには限界近いんです。
もっと飛翔能力と転移能力という基本の能力を上げないと厳しいんですね。
防御能力だけの向上で戦うと直ぐに限界が見えてしまいます。
例えばケルビム10体でもう撃ち落されちゃいます。
空間支配で余力が無いとダメなんです。
レナーティアー無し弓も無しで相手を手玉にとれるくらいの余裕が欲しいんです。
飛翔速度。
急加速。
急減速。
誰も追いつけない程の連続転移。
不規則な飛翔と転移。
絶対に背後をとらせない空間支配。
いつの間にかレナーティアーやクトネシリカに頼っていた自分を思い知りました。
ネイキッドでエディスに勝てないと勝ったことにならないと思いました。
飛翔時の方向転換の鋭さ。
加速と減速の不規則さ。
そこに自由自在の転移を混ぜて行く。
1日目は自分のイメージを実現できませんでした。
2日目は無理かと思われたんですがケルビム10体とヴァルキュリア10体に増やして戴きました。
何度も撃墜されてケルビムに治癒魔法を使われました。
あまり厳しく負けるとララノアが泣くのがつらかったです。
3日目。
4日目。
だんだん撃墜されなくなって行きました。
ついに5日目。
逆に撃墜できるようになりました。
6日目からは治癒魔法を使われることが無くなりました。
7日目。ケルビム10体ヴァルキュリア10体に対してついに完全勝利しました。
その夜。
「また1段階いや2段階くらい強くなったのう」
大魔導師様にお言葉を戴きました。
「これでまた先生たちに見て戴こうと思います」
シャラザール老師はうんうんと頷いて。
「それがええとわしも思うぞ。ここでの修業は何度でもできるからな」
私もリュティアとクラリセ師匠に見てもらいたくなりました。
シャンブロウさんもにっこりしています。
「まぁ今夜はゆっくりしてお行き。もう長距離転移も自在なんじゃから」
「はい。お邪魔します」
すると老師とシャンブロウさんが同時に笑いました。
「遠慮はいらんぞ。もうわしの娘同然じゃからな。また修行の方もいつでも来るが良い」
※※※※
「おかえりなさい」
リュティアは優しく抱きしめてくれました。
ララノアも嬉しそう。
『リュティア好き』
え?
「あら。心話ができるのね?」
『チハヤもリュティアが好き』
きゃー!
「可愛いわ。ララノアちゃんもあなたも」
香しい花の香りで苦しいくらいです。このまま眠ってしまうかも知れません。
「いいのよ。ここままベッドに行きましょうか?」
読心術!
『ララノアもおねむです』
「ふふ。可愛いのね二人とも」
そのままふかふかのベッドに転移しました。
ララノアは楽しそう。
私も嬉しいです。
リュティアは豊かな髪もしなやかな身体も優しい吐息も良い香りなんです。
※※※※
「お目覚め?」
「おはようございます」
『ララノアもおきました~』
「用意できてるわ。美味しいかしら?」
見事な朝食ができていました。
ララノアには冷やしてカットしたマンゴーに生クリーム添え。
私には大好きなリュティアの卵サンドと野菜スープ。
パンケーキにこしあんと生クリーム。
フルーツの盛り合わせ。
良く冷えた黒豆のお茶。
最高です。
「二人とも美味しそうに食べるのね」
「美味しいです」
『んまいです』
リュティアの笑顔は値千金ですね。
「私また強くなったんですよ」
「ホントね。2段階くらいネイキッドで強くなったみたい。私もうかうかしてられないわね」
「リュティアは美人さんだから良いんです」
「嬉しいわ。でも可愛いチハヤを守らなきゃですから」
『ララノアも』
花のような笑顔のリュティア。
「そうね。可愛いララノアも守らなきゃね」
『うんうん』
「楽しいわ。可愛い子が二人もいて」
ご機嫌です。ララノアも。私も。
「二人とも良い香りね。まるでお花畑みたいよ」
一番良い香りなのはリュティアですけど。
それより美少女がお鼻ピクピクさせて。可愛いんですけど。
※※※※
「そう言えばリュティア。授業とかは?」
まだリュティアは教授のはずです。
「あなたが落ち着くまでは授業はしないわ。アイリスたちが味方だから大丈夫よ」
リュティアは味方が多い人ですから。
「あなたもかなり自由よ。あの氾濫の制圧が凄く評価されましたからね」
どうでも良いんですけどね。それに悪龍の片付けは大変だったと思います。
「あの龍の素材を毒抜きして加工する職人さんで街は賑わってるらしいわ」
言うのを忘れていた事を思い出しました。
「リュティア。私言い忘れてました。あの龍の毒を迷宮に流してはなりません」
リュティアは真面目な顔ですぐに遠距離通信しました。そして。
「・・・大丈夫みたい。あの見者の坊やが的確に警告してくれたらしいわ。あの毒を迷宮に入れると次の氾濫が早くなるのね?」
「そうなんです。良かった・・・」
そうなんだ。まぁ災害クラスの龍でしたからね。誰かが気づいて当然と言えば当然ですけど。ちょっと迂闊でした。
「これからクラリセさんに会うんでしょ?その次は私を相手にレナーティアーの慣熟ね」
「はい。宜しくお願いします」
「こちらこそよ。ほぼ全力で動けるって勉強になるわ。あのリヒテルの時に予感はあったけど」
思ったより早かったという感じでしょうか?
また花の季節です。
少しですが新しい学生も増えました。
クラリセ老師のところに向かうと途中でロザリンドに会いました。
「おはよう」
「おはよう。あなたも老師のところ?」
「うん。もう死ぬまで特訓が続きそうだよ」
笑顔のロザリンドを見ていると特訓も楽しそうです。
魔導師の迷宮で得たグリフォンの腕輪がありますからロザリンドは魔法防御は完璧ですね。
首飾りで致命の攻撃も日に10回は無効。聖女王陛下に戴いた指輪で状態異常は無効。不死鳥が守護獣で守りは隙がありません。
そして攻撃はシルマリルの魔剣があります。
恐らく単騎で私の全力に近いのは案外ロザリンドかもしれません。
「チハヤはまた強くなったね」
ギク!
「凄いよ。私が強くなってもいつもその先にいる」
あなたと競うつもりはありませんけどね。
「可愛いチハヤが相手じゃどうせ本気はだせないけどね」
また誘惑スキル?相変わらず後輩の女子にもてるらしいけど。
「でもその内お手合わせしたいな」
こっちはお断りですけどね。
クラリセ教授の道場はいつも清潔です。そもそも匂いが無い。教授はいつも言っています。
「シャドウが匂いがあったら台無しだろう?」
確かに忍者が化粧品の匂いとかしてたら笑っちゃいますね。
教授はグランドマスターでシャドウマスターなんだから当たり前なのかも知れませんね。
今日は先客がいました。サアヤです。
直ぐに出迎えてくれました。
「ロザリンドにチハヤ。学院最強の二人ね。おはよう」
「あまりおだてちゃダメだよ。もっとも油断させる作戦ならアリだけど」
教授の冗談にみなで楽しく笑いました。
私もまだまだだしロザリンドもそう思っているでしょう。
「チハヤはまた修行したね。2段階くらい強くなってる。ネイキッドで強いことが大事だと悟ったのは偉いよ」
やっぱり教授にはすぐ分かるらしいですね。鑑定魔法かな?武術家だから?
「ロザリンドも真面目に修行してるし。後生畏るべしだね」
ロザリンドも強くなったのね。私には何となくしか分からないけど。
そういえばロザリンドは私の強さを見抜いていました。
鑑定魔法も大事だと再認識しました。
久しぶりに老師に投げてもらって受け身の練習を楽しみました。
「受け身が一番大事って良く覚えていたね。それに体幹が凄くしっかりしてる。良いね」
老師も楽しそうでした。
ロザリンドはサアヤと格闘の練習。
サアヤも強くなってます。
何しろWLID無しで魔法をポンポン撃ってたのがサアヤです。
今はAクラスの普通の賢者だけどいつ化けるか分かりません。
それより私はネイキッドでエディスに勝てるでしょうか?クラリセ教授にも聞けない疑問です。
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