第34話 魔の森の主 神獣の迷宮
そんなこんなで次の迷宮攻略の準備も出来ていました。
さすがソフィとマリア。
今回もゴーレムを使います。
ソフィは既に立派なゴーレムマスターで商会でも好評だそうです。
デチューンしたバージョンを売ろうかとかの計画もあるとか。
軍事の世界に革命が起きるかもしれませんね。
話しが逸れました。
イスカネルとカリストの間の神獣の迷宮。
エルフの国イスカネルに拠点を置くことはできませんので今回の旅の拠点はカリストの北方になります。
カリストはヘルヴィティアに大きく圧迫された国ですが今はヴァイエラやサリナス。あるいはフェニスと防衛についての協定を結んでいますから簡単には侵略されません。
同様な国であるオーラーツェンはヴァイエラとサリナスの他にムイ共和国と協定を結びましたからこれも簡単には侵略されないでしょう。
ヘルヴィティア帝国の北方への野望は当分の間は閉ざされたと言って良いでしょう。
ヴァイエラとサリナスは共に大きな国ではありませんが軍事的には強国であり先のリヒタル戦役の時のように協力すれば容易くヘルヴィティアの強大な軍隊も退けてしまいます。
世界の軍事バランスに関して主導権を握っていると言われる所以ですね。
カリストの北方にファベルジェ商会が建てた拠点はそれでも前回と違って迷宮の目の前とはいきません。
それでもポータルを設置してもらって行程は非常に短縮できました。
全員転移魔法が使えますから何の問題もありません。
食料関係は今度も商会の素晴らしいシェフが腕を奮ってくれたので補給も含めて万全でした。
今回は私の他にもイドの腕輪を持つサアヤと高価な魔導具を持っているソフィがストレージ全開で物資を詰め込んでいますから補給系は完璧ですね。
※※※※※※
神獣の迷宮は前回の魔導師の迷宮と大きく異なり未だに全ての階層を踏破され尽くしていないとされています。
100階層までは記録が残っていますが深ければ良い神獣と出会えるというモノでは無いのです。
逆に浅い階層で素晴らしい神獣と出会った記録も多いのです。
そもそもテイムの資格がある人間が潜れば優れた神獣も浅い階層に出てくると言われています。
なので今回の仮の目標は第10階層。それまでに望みの神獣を得られなければもっと潜ると決めました。
この迷宮はいろいろな意味で変わった迷宮です。
例えばテイムできる神獣以外のいわゆる迷宮の獲物はスライムだけです。
ただし深く潜るほど強くなるのは通常の迷宮と同じです。
ただこの迷宮のスライムは浅い階層では魔石も魔晶もドロップしませんから殆どの冒険者には人気がありません。
つまりテイムしたい神獣がいる。またはテイムの能力がある冒険者たちにのみ需要がある迷宮です。
まぁ私たちは冒険者ではありませんけど。
この特殊な迷宮がAダッシュと認定されているのは完全攻略の難しさです。
Aクラスの冒険者パーティーが何度も完全攻略を諦めたのですから簡単な迷宮ではありません。しかし総合的な利益の面では評価が非常に難しいのです。
というわけでこの迷宮の周りには適当な街も無ければ宿屋もありません。
冒険者で賑わう迷宮ではありませんから。
その意味では探索者を選ぶ魔導師の迷宮に似ています。
なのでファベルジェ商会の造った拠点は本当に役に立ちました。
さて第1階層です。
この階層のテーマは海。
広大な海岸線が続く階層です。
今回は海系の神獣には用が無かったので最短距離を進みました。ボス部屋も無視です。この迷宮はボス部屋無視のルートが既に途中の階層までは開拓されているんです。
第2階層は山。
壮大な山岳が続きます。
この階層は望みの神獣がいる可能性があるので楽しむ事にしました。
とは言え通常の冒険者なら急峻な山を登らなければならないのですが。
私たちは自由に飛翔できるので優れた神獣の目撃例が多い“神獣の野”まで飛んで行きました。
神獣の野は中央に美しい泉があり花々が咲き乱れる夢のような場所です。
で早速ユニコーンを発見してしまいました。
ユニコーンは極一部の女性にのみ適性がある神獣で美しく素晴らしいのですがあまり人気はありません。
まぁ王族や皇族が女の子の守護獣として購入する例はありますが。
今回はマリアが最大3体の神獣をテイムするのが最大の目的なのでユニコーンは残念ですね。
マリアは他人が決めた相手はお断りですが自分の子孫を残す気は満々なのでいずれテイム無効になってしまうユニコーンは不要なのです。
他の仲間たちも同様な理由でパスでした。
次に見つけたのは麒麟です。
麒麟は特別な幸運を主に齎すなど非常に優れた神獣です。
案の定。
マリアは魅惑のティアラの力を全解放して麒麟をテイムしました。
素直で可愛い麒麟はとても高貴でもありますからマリアの神獣としてぴったりですね。
次に見つけたのは
鳳凰。
こちらも幸運の神獣です。
一方ではテイマーの不老長寿を確定する神獣とも言われています。
テイマーの周囲の親しい家族などにも恩恵があると言われています。
私たち魔導師は魔力循環によって通常の10倍とも100倍とも言われる不老長寿を獲得します。
ですから魔導師に限ってはそれほど好まれるとも言えません。
でもマリアは躊躇なくテイムしました。
恐らくは一族の誰かの長寿を願うのか。あるいは自分自身の長寿を確定するのでしょう。または鳳凰は他の神獣や場合によっては魔獣にも大きな影響を与えます。
小物の魔獣は鳳凰に近寄らないほどです。
いずれにしてもこの辺は本人が言わない限り黙っているのがマナーです。
その後は好ましい神獣も見つからず。
誰かの目的の神獣も来なかったため次の階層に移ることにしました。
次の階層のテーマは森です。
ここには“神獣の園”と呼ばれる美しい庭園があるそうです。
私たちは飛翔の魔法で一気に進みました。
噴水と花園がある素晴らしい庭園は上空からでも目立ちました。
好みの神獣がいてもいなくても。
今夜はここで野営することにしました。
ソフィの野営装備も進化しており。
テントはかなり立派になりました。
お風呂もついて女子会も万全です。
食事はストレージを減らしたいサアヤとソフィが提供しました。
ローストビーフ。
ローストチキン。
シェフ自慢の野菜スープ。
山盛り海鮮サラダ。
焼きたてのパンと炊き立てのご飯。
卵料理。
ガトーショコラにガトーフロマージュ。
上質のお茶とコーヒー。
爆食しておしゃべりして爆睡でした。
・・・当然警戒はゴーレムですよ?
今回は既に2体のテイムが済んでいますから。
後は気長にのんびりと頑張りたいですね。
とりあえず朝食は軽く。
山盛りの温野菜。
野菜スープ。
パンケーキとロールパン。
ベーコンとソーセージ。
アップルパイとマロンパイ。ミートパイにラタトゥィユのパイ。
コーヒーとお茶。
アップルジュースと牛乳。
マリアがテイムしたばかりの麒麟と鳳凰が既にいますから。
今回の攻略については危険は非常に低いレベルでしょう。
神獣の園は美しく気候も良く怠惰に過ごすには最高です。
良く探すと食べられる果実も見つかります。
コケモモ。サルナシ。竜眼。甘口のオレンジ。マンゴーにパパイヤ。甘い柿も栗も見つかりました。
さすが季節感とか関係ないですね。
美しい花々と美味しい果物に釣られて神獣もやってきます。
マリアを除いて一番最初に望みの神獣を得たのは。
厄介なあの子。ロザリンドです。
迷宮で得たシルマリルの剣。極大を超える成長する攻撃力がヤヴァいのに。
鉄壁の護りとも言える不死鳥を得てしまいました。
それもお昼寝していたらいつの間にか肩に停まっていたそうで。
悔しいけど人徳ですね。
私のような策を弄する陰キャと違います。たぶん。
次に望みの神獣を得たのはソフィです。
それもペガサス。
攻守に隙が無い彼女はやはり逃走の手段の確保が第一。
ペガサスなら打ってつけですね。やっぱり翼のチカラで飛んでいるわけではないようです。何故ならドラゴンより速く飛べるそうですから。
高貴な神獣に跨った彼女は大商会のまさに姫君らしいオーラを発していました。
ブリアレオスの腕輪で強力な重力魔法グラヴィトンを確保。
智天使の祈祷書とヴァルキュリアの魔導書。2体のゴーレム。そしてペガサス。ソフィは実は侮れないんです。
賢く可愛いというのもソフィにぴったりの要素です。
ますますファベルジェ商会のシンボルとして祭り上げられちゃいますね。
ペガサスの後はティアマトとかベヒモスとかゴツい神獣も来たのですが皆のお眼鏡には適わず。
その上何となく神獣の出現が減ってきたので。
また1層潜ることに。
次の階層は草原です。遭遇ポイントは神獣の森。
その名の通り美しい森です。
透明で神秘的な湖の周辺に広がっています。
つまりこれまでで最も広いポイントですね。
ここは少し滞在すべきところです。
マリアはあと1体。
サアヤが1体。
私もできれば1体。
可能ならばここで決めてしまいたいところです。
何故なら・・・
実はザコのはずのスライムが10階層を超えると明確にしかも急激に強くなるんです。
それでも今の私たちには問題になりませんけれど。たぶん70階層くらいまでは。
もう一つの理由はテイムしたい神獣の出現率がかなり落ちることです。
つまりこの迷宮は潜れば潜るほど目的達成率が下がるということです。
一般の迷宮と逆ですね。
ただ90階層を越えてからバハムートを得た魔導師もいるそうですが。
あまり参考にはなりませんね。
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