第33話 魔の森の主 教授たちの意見
その日はリュティアの素晴らしい手料理を堪能してから。私は親しい教授達を訪ねて今の状況を話し。それぞれに助言を戴きました。
クラリセ教授はロザリンドの修行に付き合ってらっしゃるので最後になると思いました。
まず大好きなリデル教授。
図書館はいつもと同じく静謐で清潔でした。
リデル教授は私の用向きを聞くとプライベートルームに連れて行ってくれました。
「カッコ可愛いわ!」
リデル教授は私のレナーティアーを一目で気に入り様々な角度で画像記録を残しました。
「賭けても良いけど。あなたはいずれ何かの物語の主人公になるわ。これはその時に必要な資料よ」
如何にも図書館長らしいお言葉でした。そして。
「矛盾してるようだけど。目立たないように生きるのよ。あなたは既にあなたの物語のヒロインなんですから。永く生きる道を選ぶのよ」
と素晴らしいお言葉を戴きました。
「面白いわ。あなたは何か魅了のスキルのようなものがあるのは分かっていたけど。今はそれが強くなってる」
最も知的と言われるゴルウェン教授も独特のお言葉でした。
「デザインはなかなか美しいわ。古い時代の天使のようにも見える。あなたの可愛らしさを引き立てているわ」
やはりこの姿には問題無いとのこと。超絶美しいゴルウェン教授に褒められると落ち着きませんけど。
「あなたは充分に強いわ。その自覚を持つべきね。そしてもしも神獣をテイムする機会が訪れたら。強さでは無い別の要素で選ぶのよ。あなたに必要なのは今や決して強さでは無いわ」
私たちの近い未来にとってとても大切な助言を戴きました。
「私は露出が多いとは思わないわ。個人的感想で言えば。あなたらしく可愛いし。客観的に美しいわ。昔から現代までもっと露出の多い女性の戦士は多いわ」
いつも私の味方をしてくれるアイリスの言葉は暖かいものでした。教授は素の私にハグしてくれてレナーティアーを纏った姿でも再び強くハグしてくれました。
アイリスの髪が優しく香りました。私は美しく愛らしいアイリスと同じくらいの身長で良かったと思いました。
「ほぼ完全な防御能力は良いわ。私はあなたに長生きして欲しいもの」
美しいアイリスの声で囁かれるとリュティアに感じるのと似たちょっと切ない気持ちになりました。
「私はあなたが強くなって嬉しいわ。もう私より強いと思う。素晴らしいわ」
あくまで肯定的なアイリスの言葉や仕草で私は暖かい気持ちになりました。別れる時は私から強くハグしましたが可愛いアイリスが切ない顔で溜息をつくので何だかモヤモヤとした気持ちになりました。ある種の男性にはきっと致死的な女性ですね。
私もリュティア以外の人にこんな気持ちになったことはありません。
悩ましい吐息まで香しくて危うくアイリスの可愛らしい柔らかそうな唇にキスしそうになったことは内緒です。絶対。
次はエディスです。まだエディスに対するネガティヴな感情は知られたく無かったのでこの順番にしました。
エディスはしげしげと私の戦闘形態を真面目に調べました。そしてまるで学級の優等生のような口調で言いました。
「素晴らしいわ。世界の大企業はこれに巨万の富を積むでしょう。また世界の軍事に携わる人間はこれを得る為ならどんな罪も罰も厭わないでしょう。つまりチハヤ。あなたは自分の責任で自分をちゃんと守らないとならないわ」
と至極もっともな内容でした。
つまり世界のあらゆる闇ギルドやカルトもこれを欲しがるということですね。
「その意味では実質これがあなた専用でいわば高度なセキュリティがかかっているのは良いことだわ。あなたが正気である限りこれは悪用されないもの」
何か引っかかる言い方ですね。
「もう私では決してあなたの防御は抜けないわね」
でも私に油断させる為の言葉かも知れませんけど。疑い過ぎ?
女性教授陣のリーダー格のイフィゲーニアが次の人でした。あの運命のリヒタルでの出会い以降。全ての機会に常に私とリュティアを気遣って守ってくれたのがイフィゲーニアでした。
「性能が素晴らしい事は良く分かるわ。クトネシリカと伯爵のコントロールなら色々な意味で安心ね。安全性も当然」
やはり私の事を第一に考えてくれている感じでした。
「チハヤは大きな力を得たけれど私は実は心配していないのよ」
なぜでしょう?不思議です。
「なぜならあなたは絶対に悪には染まらない子だし。その上リュティアの庇護下にあるから。ちゃんと成長できるに決まってるわ。私はリュティアを良く知っているしあなたの成長も見て来たから。だから分かるの」
こんなに信頼されて嬉しいですけれど。でもイフィゲーニアはまだまだリュティアのことを私より知っているようですね。
そんな日々の中。サアヤが学院に戻りました。
お母さまとたっぷり過ごして研究生になる決意を固めていました。
そしてロザリンドとクラリセ老師も戻りました。
私はクラリセ老師に報告に行きました。
クラリセ老師は他の人と少し違いました。
素の私を見て。
「チハヤ。ずいぶん修行したんだね」
「え?なぜですか?」
「知らなかったかね?あんた気が随分増えてるよ」
驚きました。リュティアでも少し時間をかけたのに一瞬で見抜くなんて。
「だからその素のままでもチハヤが強くなったのは良く分かるよ。ロザリンドを呼んでも良いかい?」
「もちろんです。私たちの中で戦闘力の高いロザリンドにも見て欲しいです」
ロザリンドは呼ばれると開口一番。
「チハヤ。修行頑張ったのね」
とクラリセ師匠と同じことを言いました。
「あなたにも分かるのね・・・」
「分かるわ。さぁ見せて。噂になっているあなたの戦闘形態を」
噂になっちゃったんですね。諦めてレナーティアーを着装しました。
「これは・・・」
ロザリンド絶句。
「なるほど。これは素晴らしい。武器があったら見せてごらん」
クラリセ師匠はお見通しでした。
輝く弓を顕現させると。
「こりゃ凄いね。攻守に隙が無いね。こりゃ私や黒騎士だって厳しいね」
大魔導師様と同じような事をおっしゃいます。
「しかも伸び代もある。ロザリンドも素晴らしい仕上がりだったのにね」
とロザリンドに視線を向けました。
するとロザリンドはしっかりと頷いて。
「嬉しい。チハヤと一緒に戦えるのは幸運ですね」
「ロザリンド。あんたの剣も見せておやり」
そこでロザリンドはシルマリルの魔剣を抜きました。
片手でも両手でも使える美しいバスタードソード。
炎熱系の極限とも言える白い光を放っています。
斬れないものは無いと思えるような剣です。
長さもある程度は自在に変化するようです。
私もあまりお相手したくありません。
「良く成長しただろ?この剣はマスターによっていくらでも成長するんだよ」
まだ伸び代があるんですね。凄いです。
「チハヤ。私もあなたに追いつけるように頑張るわ」
あの頑張り屋さんに火を付けちゃった?マズい!
「良いねぇ。でもね。まだ二人とも子供なんだから本気で戦っちゃダメだよ」
「はい!」
師匠の前では素直な良い子の私たちなのでした。
「リュティア!」
「なぁに。甘えん坊さん」
縋り付いた私をリュティアは優しく抱きしめてくれました。
「ん?あなたアイリスと同系かな?」
「何ですか?」
「魅了のスキル」
ゴルウェン教授と同じ事を!
「そう何ですか?」
「良く分かんない。どうも私も同系統らしいし」
「リュティアは絶対魅了のスキルありますよ。あと幻惑とか混乱とか支配とか・・・」
「プッ!何それ。あなたお笑いのスキルもあるわね」
私がむくれているとしばらく楽しそうに笑っていました。
「また私行っちゃうんですよ」
「寂しいわ」
「じゃ行くの止めようかな」
少し下を向いて呟くと。
「また笑わせようとしてる?それとも困らせようとしてる?」
強く抱かれてあの花の香がして。
私は陶酔と混乱の状態異常でした。
※※※※※※
結局私たち優等生グループは全員が研究生としてのモラトリアム延長を選びました。
私とロザリンドは特に現在でもAクラスに近いとのお墨付きもらってたのでまぁまぁ当然という感じでしたけど。
これで2年後には全員Aクラス以上で魔導師ギルドに登録が確定。Bクラスのお給料も払い込まれていました。前払い制ですね。
私とロザリンドはイシュモニアに口座を作りました。
サアヤは利回りの良いフェニスに。マリアは母国ヴァイエラに。ソフィは商会の口座をそのまま使うようでした。
迷宮攻略の計画を策定したソフィとマリアは私のレナーティアーとロザリンドのシルマリルの剣を見たがりました。
そこで全員の前でお披露目です。
私の戦闘形態を見てマリアはソフィよりスカートが短いのではとか。自分もミニにした方が良いかとか変なところを悩んでいました。
むしろA級魔導師を目指すのですから長めの方が良いのではと思いますが。
私の周りのS級魔導師はリュティアとアイリスは短めですけどミニスカじゃありませんし。イフィゲーニアもリデルもゴルウェンも長めです。エディスは中間的ですね。
ソフィとサアヤは防御性能と攻撃能力を慎重に確認していました。
そしてロザリンドがシルマリルの剣を抜くとかなり衝撃がありました。
大魔導師の迷宮のご褒美も含め皆それぞれ戦力アップしていますが私のレナーティアーよりもロザリンドのシルマリルの剣のパワーアップが凄くて分かり易い感じでした。
私は全然目立たない方が良いので(と言ってもレナーティアーは見た目がちょっとだけ派手ですが)何も問題ありません。
それよりロザリンドに脚が見えた方が可愛いとか言われて・・・その被害が大きかったかも。
シルマリルの魔剣は試し斬りではアダマンタイトも容易く切りました。さすがですね。おまけに衝撃波を飛ばす能力もありました。
クラリセ師匠のお言葉では育てれば伝説の名剣を超えるだろうとの事でそうなるとやっぱり軍事レベルです。
もっともクラリセ師匠やシャラザール老師やリュティアのように装具の力では無くて軍事レベルの人も(たぶん黒騎士さんも)いるわけですから。
上には上がいます。
ゴルウェン教授たちは神獣を動かせば戦略級なのですから恐ろしいですね。
もっとも私のレナーティアーも全開なら既に戦略級らしいですから驚きます。
夜の復習の時間に私はクトネシリカと真祖である伯爵に問いました。
『レナーティアーはロザリンドの攻撃を阻めるの?』
『私と伯爵がコントロールしているレナーティアーの防御は完璧です。はっきり言ってクラリセ教授の攻撃だって耐えられると考えています』
『クトネシリカの言う通りだな。私もあれを貫く攻撃を想定できん』
『もしも私がレナーティアーの能力を使い熟せればリュティアにも負けない?』
『勝てないまでも負けることは無いと思う』
『もうマスターを害せる存在は殆ど無いと言って良いでしょう』
二人の言葉を聞いて私は考え込んでしまいました。
※※※※※
私は何になれば良いのだろう。
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