第31話 魔の森の主 レベルアップとパワーアップ
「どうする?」
とソフィ。
「私の気持ちは研究生を選ぶのに傾いてる。絶対レベルアップは必要だから」
と真面目なロザリンド。
「私はちょっと実家に戻って考えたいな」
これはサアヤ。
「チハヤは?」
マリアが問う。
「私は研究生で決まり。モラトリアムが長くできるし。はっきり言って独り立ちする前にエディスの防御を貫きたい」
私が答えるとマリアが返した。
「みんなが研究生なら私も残るわ」
ですよね。そこにリュティアからデータが届いた。
「ちょっと待ってリュティアから連絡が来たわ」
「音声画像付きならみんなで見たいわ」
ソフィの言う通り。ホログラフィに切り替えました。
『今期の最優秀のみなさん。お疲れ様。
進路を決めかねてる人もいると思うけど。ちょっと聴いて。
シャラザール老師のところでティアラを得たわよね?
誰が使うかは私は分かりませんけど。
それなら全員で“神獣の迷宮”に挑んでみたら?
きっと良い収穫があると思うし。
ティアラを持ってる人は相応しい守護獣を得ることができると思います。
持ってない人も良い神獣をテイムする機会ですよ。
場所はイスカネルとカリストの国境の山の中。
強さはAダッシュだから今のあなた方にぴったりよ。
ソフィのゴーレムも使える。老師の迷宮で得たモノも使える。
つまりレベルアップのチャンスよ』
立体画像はここで切れました。
「私決めました」
サアヤ。やっぱりね。リュティアを尊敬してるもんね。敬愛かな?
「研究生になります」
「私も」
ソフィ。え?冷静なソフィまで?
「自分の価値を大幅にアップできる機会です。利益しか無いわ」
なるほど。明らかにプラスですもんね。
「私も」
ロザリンドも成長の機会は逃さないと。そうすると。
「当然私もです。もしもA級魔導師になれれば結婚相手は自分で決められます」
マリアも宣言。これで全員ですね。
「私ソフィにお願いがあります」
「何でしょう?」
「また迷宮攻略の総合的なアレンジメントはあなたにお願いしたいんです」
ソフィは私のお願いに軽く笑って答えた。
「私も立候補してでもそのお役は勤めたいわ。というかもう我が商会のバックアップ無しの迷宮攻略は無理です。今の私には」
「私も同感。そこで提案があるんですよ。次の攻略もテイムなどの個人に依拠する場合のご褒美以外はまとめて後で選ぶ方式で良いと思うんですよ。その場合今度こそソフィがまず自分のを選んで欲しいんです」
「それは私も賛成だな。あの迷宮攻略では明らかにソフィだけ赤字だもん」
ロザリンドの賛同を得ることができました。
「私も異論は無いわ」
マリア。さすがの判断ですね。
「私も同感。そして私からも相談があるんですけど。迷宮攻略は少なくとも1ウィル後にして欲しいんです。私は母に報告しなければなりませんから」
サアヤも決断しました。
「今から新しい迷宮攻略となれば少なくとも2ウィルは準備期間が必要です。どうでしょう。攻略の為の参集の日時は2ウィル後ということで。それならサアヤも充分な時間ができますし全員が研究生への手続きを終わらせることができると思います」
さすがソフィ。
皆口々に賛成の言葉を述べました。
※※※※※※
サアヤは帰郷の為に転移して行きました。ちゃっかりリュティアに助けてもらったのは・・・まぁ大目に見ましょう。
ロザリンドはアーティファクトの剣を使い熟すためにクラリセ教授と特訓です。
ソフィは攻略の準備。マリアはその参謀ですね。
私も自分の能力を最大限に発揮する為の修行をすることにしました。
修行の場所は・・・ここは大魔導師にお願いすることにしました。
※※※※※※
ソフィに頼んで魔導師の迷宮の近くのファベルジェ商会の仮設の拠点を利用させて貰う事ができました。
おかげで私の特訓はかなり効率良くすすめる事ができました。
まずトルキスタンの首都であるイスファハーンまでは魔導師ギルドのポータルを利用して転移で移動できました。
途中でハイストレージの中にかなりの量の食料を詰め込みました。
そして迷宮の近くに転移すると真祖の腕輪を起動しました。
『どうしたのかな?巫女姫』
最近夜のおしゃべりが御無沙汰だったのでちょっと懐かしい伯爵の声が心話で聞こえてきました。
「シャラザール老師に会いたいのです」
『お易い御用だよ』
私たちは直ぐに老師の部屋に転移しました。
※※※※※※
老師は今度は起きて読書をされていました。
「こんにちわ。老師」
豪奢な銀のローブに身を包んだ老師は既に私に気づいていたようでした。
「どうしたのかね?お嬢さん」
「まず老師にお礼の品を持って来ました」
「お礼の品?」
「はい。こういった品々です」
私はストレージから様々なスイーツやミートパイや果物類やポットに入ったシチューなどを取り出しました。
「これはこれは。遠慮なく貰っておこう」
老師は手際よくご自分のストレージに沢山の食べ物を収納しました。
「老師のお茶の時間が楽しくなるものを。と思って選んだんですよ」
「ありがとう。これは素直に嬉しいよ。まぁ本当はお嬢さんが時々遊びに来てくれたらもっと嬉しいけどね」
老師は茶目っ気たっぷりでした。
「しかしこれほどの贈り物をくれるということは。何か願い事かな?」
なかなか鋭いのは当たり前ですね。なので素直にお願いしました。
「私たち今度は神獣の迷宮に行くつもりなんです。だから私は戦力アップのための修行にきました。協力して戴けませんか?」
大魔導師シャラザールはにっこりと微笑みました。
「良いとも。お易い御用さ。さしあたりヴァルキュリアと1対1で戦うことからかな?お嬢さんが強くなったら敵の数を増やせば良い」
さすが老師はお見通しのようですね。
「おっしゃる通りの方法で修行したいと思います」
「1対10で戦えるようになったら次の段階に進むと良い」
次の段階?何のことでしょう?リュティアと同じような事をおっしゃいますが。S級魔導師には見える何かでしょうか?
※※※
その日のうちからヴァルキュリアとの修行が始まりました。初日のうちに3体のヴァルキュリアを同時に倒した私は老師に大層褒められました。
二日目には5体のヴァルキュリアを倒し。三日目には7体のヴェルキュリアを倒しました。
四日目は老師の助言でヴァルキュリア5体と天使5体を倒しました。
その夜から私の運命が大きく動く“次の段階”への扉が開きました。
「良い感じで強くなったなぁ。もうそろそろじゃと思うが」
「そろそろって何ですか?」
私は老師と世界の美食を味わっていました。リュティアの手料理にはちょっと劣ると思いますが。
「お主のアーティファクトの制御じゃよ」
??アーティファクトの制御?レナーティアーの制御?できるんでしょうか?
「お嬢さんのWLIDと真祖の腕輪が協力すれば可能じゃと思うぞ」
クトネシリカと伯爵が?どゆこと?
『問題はマスターのお気に召すか否かなんですよね』
突然クトネシリカが心話で語り掛けてきて驚きました。
控えめで大人しいクトネシリカが。
「どういう事?伯爵も一緒で良いから話して下さい」
大魔導師シャラザールは静かに微笑んでいました。
『では私から話そうか』
伯爵ですね。真祖であるヴラッド伯爵。
『クトネシリカはレナーティアーが巫女姫にとりついた時から分析を開始していたんだよ』
『とりついたって失礼な!』
突然レナーティアーの心話がはいって驚きました。
『まぁまぁ。レナーティアーは巫女姫をほぼ完璧に守れる上に攻撃力も大幅にアップ。その上飛翔も転移もかなり自由になる。しかしその恰好がなぁ』
「どんな格好なの?」
するとレナーティアーから大きな力を感じて目の前に3マールほどの龍人?のようなモノが顕現しました。
『巫女姫は殆ど全裸になってそのレナーティアーとハーモニクスすることになる。それがほぼ無敵のいわば代償だな』
「それはイヤ!」
『ほーらね』
クトネシリカの勝ち誇った心話。
『何でよ。かっこいいじゃない』
レナーティアーの悔しそうな心話。
『だから私とクトネシリカの管理の元にレナーティアーのリソースを使ってもっと良い姿を探っておったのだよ。これはレナーティアーの暴走に対する保険でもあるのだ』
暴走?
『いわゆる呪いの鎧なども共通するのだが。脆弱なニンゲンの身体を守る着装型の魔導器ないし魔導機の場合それ自体が暴走して内部のニンゲンを摂り込んでしまう可能性がある』
『そんなこと無いって!』
レナーティアーの必死の反論。しかし私は伯爵の言葉を否定するほどの説得力は無いと思いました。
『だから私と伯爵は私たちにコントロールできる形でレナーティアーという優れたリソースを活用する方法を考えていたのです』
クトネシリカの言葉は信頼できますね。クトネシリカに伯爵が100%協力しているのも分かりました。
『今。相当なレベルでマスターに使っていただける万能の鎧ないしは防具を構築できたところです。ただ問題はマスターの美意識がこれを認めるか否かです』
クトネシリカの苦悩が分かりました。
『一度使って見たいわね。完全に安全なんでしょ?』
『それは保証できます。使ってみますか?』
思わせぶりなクトネシリカ。最近大人しいと思っていたらリュティアのクレセントムーンに焼き餅焼いてたんじゃなくてこんな事をしてたのね?
『試したいわ』
『では宣言して下さい“着装!レナーティアー”と』
大げさね。
「着装!レナーティアー!」
すると私を中心に直径1.6マール程の物理防御イージスと魔法無効のインヴァリッド。そして光学迷彩オプティカルハイディングが同時に即時展開されました。
そしてクトネシリカや伯爵の腕輪やレナーティアーの指輪以外がストレージに一旦収納。
新たに肌触りの良いベースレイヤーがまず着装されました。
ついでとてもしなやかなミドルレイヤーがほぼ全身を覆いました。最後にカヴァーレイヤーが展開されました。
全部で所要時間は1セクほど。まぁあっと言う間に近い。これなら充分実用に耐えるでしょう。
しかしそのデザインは・・・
「キャ!」
全体のカラーは純白です。まぁ聖女ですから当然ですね。それに白銀の縁飾りがされています。上品な感じです。
またベースレイヤーはデザイン的には下着というか水着みたいなモノです。当たり前ですね。
ミドルレイヤーは薄くて透明な身体全体を覆うフィルムのようなモノです。
これは一種の強固な結界のようです。
だから問題は最も外装を構成するアウターレイヤーです。
まず靴は純白のショートブーツです。防御力は完璧なんでしょう。履き心地は素晴らしいです。
同様に手袋は純白のしなやかな革のグローブに見えます。これも防御力は素晴らしいんでしょう。魔力の透りも良さそうです。指が出ているタイプで舞の技を使うのも苦労しません。
頭はティアラです。プラチナ色というか白銀に輝く美しいティアラです。何か機能がありそうです。
そして一番上には純白から白銀そして闇銀とでも言うのでしょうか?複雑に色が変わるミドルマント。
その下に上半身には7分袖くらいのジャケット。これも純白です。
でも下半身には・・・ミニスカじゃないですか!色は純白ですけど。
『ミニスカじゃ無いですよ。ちゃんとおしりもベースレイヤーも隠れていますし。マスターのしなやかな脚線美が見えてるだけです。ミドルレイヤーの透明な防護膜は完璧な防御性能がありますし』
クトネシリカが色々言ってますがアタマがクラクラしました。おしりもベースレイヤーも隠れてる?当たり前でしょ!!大体おしりはミドルマントが隠してますし。
『防御性能を完璧にしてレナーティアーの龍の要素を除き聖女らしいデザインを保つギリギリの線なのだ。私は美しいと思うが』
伯爵もそんな事を言ってます。
「何か気にいらんのか?」
大魔導師様。察して下さいよ。
「えとあの。露出がちょっと・・・」
「良く分からんが。昔一緒に戦った聖女様はもっと露出が多かったぞ」
え?聖女って露出多めなの?
『ほーら。ドラゴンの機神のが良いよね?ちゃんと全身隠れるし』
レナーティアーが勝ち誇っています。
「大魔導師様」
「何じゃ?」
「昔の聖女様のお姿の画像って保管されてますか?」
「たしかみんなで集合した仲良し画像がいくつかあるぞ?」
「見せて下さい!」
老師は気軽に2次元と3次元のデータをクトネシリカに送ってくれました。
うーむ。なるほど。確かに全体的に聖女様(美しい方でした。ちゃんと育ってらっしゃる・・・ケホンケホン)は露出が多いですね。上着はノースリーヴですし。靴はサンダル。スカートも短い上に前が開いたタイプで。丸見えです。ちょっとヴァルキュリアに似ています。手も脚もほとんどむき出しです。でも結界というか魔導の防壁が強固にある感じですね。水着の上にマントを羽織ったようなデザインです。
「大魔導師様。ちょっとケルビム10体ヴァルキュリア10体と戦闘して確かめたいです」
「うむ良いぞ」
でこの全身鎧?の性能を確認して見ました。
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