第5話 これから先はあなたの隣で
しばらくして岡田君が、そういえば、と言って高校時代の告白の噂の話になった。「告白の噂ってなんで流れたの?」
「あー。本当は私たちの学年で1番可愛いっていわれてた人が告白して振られたの。でも、プライドの高い彼女は振られたのが相当嫌だったみたいで。たまたま現場を見てしまったがために、私が告白して振られたことになった」
「まじ? それ最悪じゃん」
「ほんとだよ。それがなかったら―」
「どうしたの?」
「高校時代から付き合えてたかもって思ったけど、もう後悔しても仕方ないから途中で言うのやめた」
「なるほどね」
「もう、そういうの言わないようにする、今の幸せを大事にしたいし」
「僕も」
そして、私も聞きたいことがあったので尋ねた。
「そういえば、配信してるって言ってたけど?」
「ほっと」
「え、ほっとさんなの?!」
「そうだよ」
まさかの好きな人が推しだったなんて! 信じられなくて彼から距離を取った。
「ちょっと、なんで離れるの」
「目の前に推しがいて動揺しているの」
「妹から聞いてたけど、僕を推してくれてありがとう」
「うん。なんか配信の時と普段の声と違うね?」
「まあ、配信の時は少し高めにしてるよ。バレ防止」
「そっか。だから何年も聞いているのに気が付かなかったのか」
「どう? 推しが恋人に慣れた?」
「慣れない!」
「慣れて。推しの前に恋人でしょ?」
そりゃそうだ。そう言われたら彼の元から離れられなくなってしまった。
しばらくして私と岡田君はリビングに行った。そして、岡田君のお母さんと桃ちゃんに今までの謝罪と交際開始の報告をした。お母さんは、『愛想笑いも出来なかった息子を変えてくれてありがとう。いろいろあったみたいだけど、幸せになって、応援してる』、と言ってくれた。桃ちゃんには、
「千佳さん、だましてごめんなさい。昔兄に同じようなこと聞いて。名前は言ってなかったから千佳さんって知らなかったけど。千佳さんが岡田恭一、って言っていたから、この2人を会わせて誤解を解かなきゃ! って思いました」
と言われた。桃ちゃんのおかげで今があるわけなので、気にしないで、ありがとう、と伝えた。
それからは、岡田君とよく連絡を取り合うようになった。今までの空白を取り戻すかのように。よく食事にも行くようになったし、私の部屋に泊まりに来ることもたくさんあった。
しばらくして、恭一君が就職活動をすると言って、コツなどを聞かれた。
「でもどうしたの? 配信で結構稼いでいるじゃない?」
「まあ、そうなんだけどさ。配信って今はたくさんの人に応援してもらっていて稼げているけど、これが5年、10年先は分からないじゃん。将来に不安があったらご両親に認めてもらえるか不安でさ」
「何を? っていうか恭一君のご両親が恭一君を認めるってどういうこと?」
「え、あー。結婚」
「結婚?」
「そう。やっぱり安定した職業の方が千佳さんのご両親も安心するかなって」
「……」
恭一君が私との将来をもう考えてくれている。それがすごく嬉しかった。
「え、まさか結婚するつもりない?」
「いや、あるけど。もう考えてくれているんだって思って嬉しくなってた」
「付き合い始めた時から結婚したいって思ってたけどね」
「ふふ。うん、私も結婚したいな」
「うん。ちゃんと就職してからになるから時間かかるけど、待ってて。プロポーズはちゃんとする」
「分かった。楽しみにしてるね」
そう言って私は恭一君を抱きしめた。
そして数年後、私たちは結婚した。あの時は自分自身を恨んだけれど、ほっとさんに出会って、桃ちゃんに出会ってそして彼と再会できた。たくさんの偶然が重なって手に入れられた幸せを私は絶対に離さない。
「千佳さん、今日は一段と奇麗だね」
「ありがとう。恭一君もいつも以上に格好いいよ」
そう言って私たちはもっと幸せになることを誓った。
再会したら有名配信者になっていた しがと @Shigato
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