激闘の末
『何が起きているのやら』
『分かりませんね。なんか凄いことが起きているとだけしか』
『ここまで過激な戦闘を見た事がありません。これがダンジョンですか』
『このレベルの魔物が何体もいると考えるべきなのかこの魔物は異常と見るべきなのか……』
『何体もいると思います』
観戦組には何が起きているのかもはや分からない
それ程までに早く激しい戦い
重力の玉を部屋中に放つ
異能で移動するが避け切れず刀で受ける
玉を受け流す
玉が地面や壁に当たると当たった部分が抉れる
接近して斬りかかるが防がれ炎のブレスで反撃を食らう
異能で回避して胴体に一撃入れて攻撃を躱して距離をとって攻撃を誘う
お望み通りと言わんばかりに瓦礫と重力の玉を飛ばし攻撃をしたあと空を飛び上から炎のブレスを放つ
「くかか」
バルフェリアは笑みを浮かべながら戦っている
同等の力を持つ魔物と全力でやり合えている
本来なら出る予定はなかったが澪は死にかけた以上バルフェリアが出なければ死んでいた
魔物にとってもバルフェリアにとっても想定外の出来事
瞬間移動を多用して魔物を削っていく
覇王に至ったバルフェリアの異能は2つ
異能五十歩百歩の条件の消失と使っている武器に空間干渉の力を与える力
1つ目は条件を失った事で距離の制限と条件の歩数が必要なくなり無制限の瞬間移動が可能となった
そしてどれだけ硬くとも切り避ける力
今回の魔物は重力を圧縮する事で空間を歪ませ防いでいるがこう言った例外を除けばほぼ防御不可の攻撃と化している
最高位の異能
「くかか、そろそろ終わりの時だ」
魔物はかなりダメージを負っている
このままでは押し切られる
バルフェリアにかかっている重力を数十倍に引き上げる
流石のバルフェリアもその重力には動けなくなる
「これは厄介だが……くかか、相手が悪かったようだな」
刀を地面に刺す
澪の戦いを見て理解していたこの刀の本来の使い方が違うという事に
「凍てつかせろ」
周囲が凍りついていく
この刀の能力は物体を凍り付かせる物では無くあくまで凍り付かせる能力
バルフェリアは立ち上がる
魔物は驚いている
「この刀は我のダンジョンにあった武器だ。我が本来の使い方ができても不思議ではあるまい」
自らに付与された重力を凍りつかせ砕いた
この刀は物体ではなく概念に干渉する武器、その真髄を異能の真髄に触れたバルフェリアは引き出したのだ
異能を凍らせ空気を凍らせ時も空間も凍り付かせる
魔物の動きが止まる、凍りついたのだ
魔物が万全の状態であれば効いていなかっただろう
ここまで追い詰めたからこそ出来た一手
「我の勝ちだ。楽しかったぞ」
終わりはたった一振り
その一振りでこの戦いは終わった
魔物は崩れ消滅する
凍りつきながらもその目は満足気であった
「貴様の意思を継がせてもらおう」
魔物は完全に消滅する
そして魔物の居たところには一本の剣が刺さっていた
あの魔物を彷彿とさせる紫色の剣
剣を拾いドローンを回収する
あの激闘の中でも壊れていない
「声は届くのか? シズクとやら貴様は治癒を使えるであろう。すぐにダンジョンの前へ来い」
それだけ言い残してドローンの映像を切る
瞬間移動で階段に移動する
入口まで歩いていく
「ふむ」
澪との戦いで満足したつもりだった
間違いなく満足して死んだ
だがどういう訳か澪の元で目が覚めた
そして澪の戦いを見た
戦いたいという欲が生まれた、そして直ぐに千載一遇のチャンスが訪れた
「戦いとは我らの存在証明、覇王とは戦い続ける者」
魔物は戦う本能がある
戦わなかったアルセスにもその本能はある
むしろ強者と戦いたいという欲を優先したのだろう
「まだ貴様には覇王の座はくれてやれぬ。精々精進してみせよ」
ダンジョンの外へ出るとドローンの位置情報を頼りに急いで来たシズクと遭遇する
シズクの家から近かった為すぐに来れた
「貴方は一体」
「貴様に名乗る気は無い」
「……澪さんは無事なんですか?」
「無事では無い。見ていたのだろう?」
「はい」
澪が死んでいる可能性を考えている
今話している者が死体に憑依するタイプの異能者の可能性は捨て切れない
「そう案ずるなまだ死んではいない。最もこの後の生死は貴様の力量によるがな」
「フォヌォロィナ」
シズクは異能を発動させる
結界を張る
結界内に居る澪の身体の傷が癒えていく
「七彩の異能、やはり真髄には至っていないか。いや真髄に至っている人間は現状居ないと考えるべきか」
「真髄……それは澪さんの異能を貴方が自在に使えていたことと関係しているんですか?」
「澪の? くかか、正確には違うあれは我と彼奴の異能だ。確かに我は真髄に至っている」
「同じ異能?」
シズクは1つ思い出す
恋歌と初めて会った時にしていた会話、同じ空間移動系の異能を持つ魔物と戦ったという話
そしてその魔物はダンジョンの床を切り裂く程の攻撃を使える
先程の戦いでも澪が苦戦していた鱗を一撃で切り砕いていた
「もしかして貴方は魔物ですか?」
「ほう、鋭いな。その通り、どういう訳か子奴の体に宿ったのだ」
「ダンジョンはまだ謎が多いですが……」
「信じる信じないなぞどうでもいい。もう良いな。戻る」
そう言い残してバルフェリアは澪に主導権を戻す
髪の色や服が元に戻りボロボロの澪がその場に倒れ伏す
「澪さん!」
シズクは駆け寄る
息はある
結界の効力で傷は少しずつ治っていくが時間がかかる
結界は動かせない、解除すれば死にかねない
その場で傷が癒え切るまでシズクは出来る範囲の事をして待機する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます