恋歌の異能
異能の発動条件を満たす行動を取る
両手をそれぞれ強く握って拳を合わせる
「異能力」
そして構える
「武器を使わないのか?」
「えっ? あっ、確かに武器を持ってませんね」
「まさか拳?」
ダンジョン内では外の武器は使えない、ならどうやって最初の探索者はダンジョンを制覇したのか
6級のダンジョンは弱い、そう平均的な成人男性ならば武器を持たなくても勝てる程度には
恋歌が振るうのは人類が持つ原初にして最大の武器
「拳でダメージ入るのか?」
「正直入らないと思います。異能が身体強化でもそこまでの倍率は聞いた事ないです。まぁ条件次第では有り得ない話でも無いですが」
鍛えれば拳は強いが恋歌は探索者以前は鍛えていないような人物
身体強化の異能だとしても武器なしで戦うのは至難の業だろう
条件が厳しければ厳しいほど強い事が多い
ただ例外も幾つかある、そのうちの1つがシズクの七彩、条件の割にはかなり強い異能
本来なら3級の魔物にダメージすら与えられない
異能が無ければ
地を蹴りオークに接近する
その速度は澪を超えている
拳を振るう
拳がオークの胴体を貫き腕が貫通する
オークは倒れ消滅する
一撃で仕留めた
「凄いな……これは流石に身体強化じゃないか?」
「高倍率の身体強化ですかね?」
「い、一応私の異能は身体強化の部類に入ります。条件の1つが武器と防具を持たない事です」
戦いを終えた恋歌が説明する
武器や防具を持たないというかなり致命的な条件で高倍率の身体強化を得ている
「次はキングウルフだな。正直もう良いとは思うが」
あの戦いだけでもわかる、この少女は強いと
間違いなく即戦力の逸材
単独で高い戦闘能力を持つアタッカー2人に支援型のシズク、3級ダンジョンの中ボスであれば余裕で攻略出来るメンバーだろう
ただ今回の相手はダンジョンの主、ゴーレムの強さを考えるとかなり強いだろう
(正直身体強化なら高い攻撃力を持つ、この刀も含めれば十分通じるんじゃないか?)
「ダンジョンの主は勝てそうか?」
「確かに彼女を含めれば火力は足りると思いますが私も3級のダンジョンの主は初めてなので」
「そうなのか?」
「3級のダンジョン自体攻略されているのは分かっている限りでも世界で10箇所、それも実力者がレイド10〜20人集まって損害を出しつつ討伐してます。1番少なくて10人討伐時間は9日」
「……全然足らなくね?」
世界中の実力者が集まってそれだ、3人ではいくらなんでも足りないだろう
「普通なら、私のバフもありますし2人は化け物なので。ただ後アタッカー1人と支援系の異能者1人くらい欲しいです」
(化け物……)
「見つかるのか?」
「正直海外を含めて募集しても応じる人が居るかどうか……10人での戦闘ならまだしも予定の戦力はその半分程度……特に高難易度に行ける治癒や支援系の異能者は本当に少ないですからね」
中ボスが復活する1ヶ月以内に見つからなくても仕方がない
1ヶ月以内での戦闘は出来たらやりたいと言う感じで正直な所、時間は山ほどある
連携を試す為に弱体化した餓者髑髏やゴーレムと戦うのもありだろう
会話をしている間にも恋歌が魔物を薙ぎ払っていた
拳を振るえば胴体を貫き手刀を振るえば真っ二つにし攻撃を受けても無傷
身体能力の底上げ、大抵は力や速度が上がるだけで肉体強度は上がらないが一部の身体強化は肉体強度も上がる
恋歌の異能はそのタイプ、それも高倍率の為、異能発動時は並外れた鋼の肉体となっている
攻撃を避ける必要も防御する必要も無い
攻撃を受ける前に仕留める、攻撃を受けても構わず攻撃して仕留める
超脳筋型の戦い方
先程まで緊張してガチガチだった人物と同一人物とは思えない程の戦いっぷり
二階層の1番奥まで魔物を殴り倒し切る
「あの子強過ぎでは?」
「まぁ普通に私より強いな」
「マジですか!?」
「あくまで単純な戦闘能力がって話だがな」
「まぁ確かに異能の系統が違いますからね。もし二人が戦ったら?」
「こちらにあの防御を突破出来る攻撃手段があれば勝算はあるが無ければ押されて負けるな」
もし2人が戦うとしても異能を使って攻撃を避ける事はできるだろうが澪には決定打になり得る攻撃手段が無い、刀が通じるかによる
そうなればジリ貧で異能を使えなくなる状態まで追い込まれて負ける
「成程です」
純粋な戦闘力は恋歌が上だが異能による奇襲性を持ち複数の武器で多彩な攻撃が出来る澪は状況に応じた戦いが出来る
得意な分野が違う二種のアタッカー、連携が出来ればかなり相性がいいだろう
三階層キングウルフ、オークと変わらず攻撃を避ける事もなく攻撃を受け切り一撃で仕留める
そのまま問題なくミノタウロスも倒し終える
「ご、合否はどうですか?」
先程の戦いっぷりとは一転してガチガチに緊張している
「合格です、と言うか貴女が不合格だとしたらもはや誰なら良いのか分からなくなりますし」
「まぁ間違いなくその審査は私も不合格になるな。そういや知り合いに強い奴が居たりはしないのか?」
「そんな強いなら強い探索者と友達だったりしませんか?」
「い、居ません……友達が」
小声で言っていて何を言っているのか澪は聞き取れなかった
シズクは聞き逃さなかった、その為2人の間に何とも言えない空気が流れる
(なんだ?)
事情を知らない澪は首を傾げる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます