新たな仲間、涼深恋歌

受付の人はかなり驚いている

初めてボロボロになった澪を見たからである


「大丈夫ですか!?」

「丁度居合わせた治癒の異能者に治療して貰ったので大丈夫です」

「そ、そうですか。貴方がそんなボロボロでダンジョンから戻ってきたのは初めて見たので」

「ダンジョンの主が強かったので……空間移動系の異能を使って来ました」

「異能を使うダンジョンの主が居るとは聞いてましたがまさか空間移動系とは、よく勝てましたね」

「私も空間移動系の異能者だったってのが勝てた理由でしょう」

「なるほど、空間移動同士ですか。これが合計金額です」


中ボスも含めるので合計額はかなりの金額となった

これで暫くは金に困らない、魔導具や装備を買っても余裕がある

ボロボロになった防具を買い換える為に装備屋に行く

防具を見るがやはり動きやすそうな防具は見つからない

(仕方ない一時的にでも使える防具選ぶか)

並んでいる中でも動きを制限しなそうな防具を選んで購入して試着室で着替える


「仮面型の魔導具あったりしないかな。少し破損した」


戦いの余波で軽くヒビが入っている

魔導具の所を見るが見つからない

店員に聞いてもそう言った物は見覚えがないと言われる

仮面を諦めたところに連絡が来る

シズクからだった

どうやら募集に1人来てくれたらしい

そしてその力を見せたいと言う本人の希望があるとの事で明日いつものダンジョンで合流となった


「もう1人見つかったのか。どんな奴だろうか」


期待を胸に翌日指定された時間に向かう

するとシズクがダンジョンの前に立っていた


「あれ? まだ来てないのか?」


シズク以外に人が居ない


「少し遅れるそうです」

「そうか、それでどんな奴なんだ?」

「話によると3級ダンジョンを狩場にしているとか」

「1人でか?」

「はい」


澪と同じタイプの変人

それはつまり強いという事でもある

雑談を交わしながら待っていると足音が近づいてくる


「4級ダンジョンの主と戦ったんですか!? それも同じ空間移動系の異能使い!? なんとも配信したかった内容で……」

「たぶんシズク居たら死んでたぞ」

「あ、あの……」

「マジですか……まぁ確かに空間移動に対応してシールド張れるかどうか」

「いや、シールド貫通すると思うぞ。頑丈なダンジョンの床が切られた」

「あぁそれは確かに無理ですね。洞窟型では無いですよね?」

「あ、あのそこの……」

「あぁ違う」

「それは死にますね……むしろなんで勝てるんですか?」

「レイさん……シズクさん……話を……」

「……強いて言うなら魔物にプライドがあったからだな」

「魔物にプライド? 何を言ってるんですか?」

「無視しないで……」

「私にもよく分からん……あぁ来てたのか。悪い気付かなかった」


少女の声は小声で会話に掻き消されていた

澪が視線を動かしようやく気づいた

小柄な少女、150あるかないかくらいの大きさ

シズクは165cm、澪は173cm

2人を見上げている


「ええっと貴女があのサイトで募集に応じた人ですか?」

「は、はい! は、初めまして! 涼深恋歌すすみれんかと言います。わ、私なら力になれると思い応じまひた」


恋歌は重要なところで噛んだ

噛んだ事に気づいて恥ずかしがっている


「大丈夫なのか?」


澪は心配になる

強さを怪しんでいる訳ではなく2人を前に凄く緊張して体や声が震えている

強くてもこれでは戦えないだろう


「こんな子だったとは……まぁいいです。力を示して欲しいんです。このダンジョンは3級です」

「まず私が力を示そう。偉そうにしてるだけじゃお前も不満だろ。力がある事を証明する」

「い、いえ、それは大丈夫です! は、配信は見ていましたので!」

「そうか」

「一階層のオーク、三階層キングウルフ、六階層のミノタウロス、それぞれを単騎で倒してもらいます。バフはかけます」

「バフも大丈夫でふ、いひゃい……」


舌を噛んだ、盛大に

(痛そう)


「本当に大丈夫ですか?」


シズクも不安が募る、あのサイトを利用していてルールを知らない訳が無い

必死に頭を縦に振って頷いている


「シズク……治癒してあげた方がいいと思う」

「そうですね、かなり痛そうですし」


結界を張って恋歌の舌を癒す

噛んだ痛みが治った後力を測る為にダンジョンに潜る

2人は後ろを歩く


「そう言えば異能者なのか?」

「はい、異能者らしいです。どうやらその異能が強いとの事です」

「強い異能か」

「……1つ気になる点があります」

「気になる点?」

「はい、名前を聞いたので調べてみたんですが探索者に涼深恋歌という人物は居ません。何処の取引所でも取引をした形跡もありません。別の名前を使ってる可能性はありますが」

「そうなのか」

「今分かるのはただ1つ、レイさんのファンと言う事です」

「そうなのか?」

「はい」


配信画面を澪に見せる

餓者髑髏戦のファンになりましたというコメントを指差す

恋歌と言う名前のユーザーが書き込んでいた


「これがあの子?」

「恐らく、配信を見ましたって言ってましたしもしゴーレム戦の配信を遅れて見てるなら募集に食いつくのが遅かったと言う事も分かります」

「そうか」


オークと接敵する


「始まったか」


恋歌は深呼吸をする

そして異能を発動させる

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