中ボス戦配信開始!

魔石を回収していると魔石を律儀に回収して進んでいたシズクと会う


「大量に倒しましたね」

「素材落ちてた?」

「いえ、素材っぽい物は特に見かけませんでした」

「落ちなかったかぁ」

「まぁ素材はそう簡単には落ちませんから」

「魔石だけだとあんまり稼げないんだよね」


数としては15体、普段のドロップからすれば1個くらい落ちても良いくらいの数

本来なら30体で1個とかそんなペース


「まだ戦います?」

「この階層の魔物倒したし次の階層に行く予定」

「手伝います!」

「配信はしないって」

「いえ、魔石の一部と新種の魔物の写真を撮らせてもらえれば」


新種の魔物の姿を収めた写真はかなり注目を集める

配信の方が良いが澪が徹底して配信の協力はしないと言っている為戦っている姿など配信出来ないが配信にこだわって写真を撮るチャンスを逃すのはシズクとしては避けたい

今はまだ魔物の情報が少ないだけで気づいた探索者がすぐにこのダンジョンを見つける

そうなれば情報としての価値が薄くなり新種と言う肩書きを失う


「あぁ成程、それなら分かった。バフ頼んだよ」

「はい! えぇっと……名前なんでしたっけ?」

「名前? そういえば名乗ってないな。井坂澪だ」

「澪さんですね……私はシズクです。あっ、本名も雫です」

「雫は本名なのか。いい名前だな、まぁよろしく」


握手をする

次の階層に向かう、次の階層は階段を降りた先が大きな空間になっていた


「これって」

「何か知ってるのか?」

「こう言った洞窟系のダンジョンに偶にある魔物の溜まり場です。少なくても5,6体、もしくはそのダンジョンの中でも強い魔物がいます。中ボスとか呼ばれてます」

「今回は……中ボスだな」

「はい、間違いなく中ボスの方ですね」


巨大な魔物、高さ4mくらいある巨体で手は前足のように地面に付けていて蜘蛛のような体勢で四足のように動いている

体勢や動きはともかく見た目は人に近いように見える不気味さがある

顔は人のようにも見えるが4つの目を持ち不気味な顔立ちをしている

シズクは写真を撮る


「この魔物ってリポップするのか?」

「します。ただ一度も倒されていない中ボスは特殊で必ず素材を落とします。そしてその素材はリポップした中ボスが落とす素材とは全く異なります」

「必ず素材を落とすか」

「その代わりに強いです」

「強い? そりゃ中ボスなんて言われてるくらいだし」

「そうではなくリポップした中ボスは弱体化します。最初限定の魔物と言った感じです」

「限定か。こいつは新種だよな?」

「恐らく新種です」


(……こんなチャンス逃したくないよな……)

配信のような物は苦手としている

写真に写るのすら抵抗を感じるような人間

だけどもしここでシズクの協力を得て中ボスを倒したとして得をするのは素材を得られる私

シズク側が出した提示した条件ではあるがそれはあくまで先程まで戦っていた魔物との戦闘での話

このチャンスを逃すのは配信者として辛いだろう

一方私はそう言う訳じゃない、ただ写るのが嫌だからと言う理由で拒んでいる

それは少し我儘が過ぎないか?


「姿を偽ったりする魔導具は無いよな?」

「そんな魔導具は聞いた事ないですね。私が使っている顔を隠せる仮面ならありますけど」


バックから仮面を取り出す


「仮面なんて使ってるのか?」


何個かの配信を見た感じ仮面なんて使っていなかった


「偶に気分転換で」


(気分転換で仮面って付けるものなのか? それは良い……仮面が有るなら良いか)

深呼吸をして覚悟を決める


「それ貸して」

「良いですけど」


仮面を受け取って付ける

視界を遮らないようにしてある

(視界は良好、これなら戦える)


「配信道具はあるか?」

「あ、あります!」

「配信中は零と呼んで、このチャンス逃したくないでしょ」

「わかりました零さん!」


配信用の小型ドローンを複数飛ばす

周りの景色に溶け込んで静かに様々な位置に移動して撮影を始める


「少し待っててくださいねぇ」


配信画面を写す機械を取り出して配信を始める

タイトル

『3級相当のダンジョンにて新種の魔物それも中ボスを討伐するチャンス到来! 2人でチャレンジ! メンバーは七彩の魔術師シズクと謎の仮面の槍使いレイ』

SNSで配信開始した旨を投稿する

平日の昼頃なのに配信に人が集まってくる


『シズクちゃんの配信だー』

『休止じゃないの!?』

『緊急配信!?』

『いつも予告してるシズクちゃんのゲリラ配信!』

『新種の中ボス戦だって!』

『3級相当の中ボスなんて2人で討伐なんて出来るの?』

『シズクちゃんは戦闘は出来ない、この仮面の槍使いが1人で戦う事になる』

『それって無理でしょ! 死ぬよ!』

『そもそも新種なのか? 3級って言っても本当か分からないし』


コメントが止まることなく流れる

どんどん視聴者が増えていく


「どうも皆さん七彩の魔術師シズクです! 今回はタイトル通り3級相当のダンジョンの中ボス戦です。標的はあちらです」


配信画面の視点が変わり魔物を映す

先程飛ばしたドローンの画面は全て共有されている


『何あれ怖っ』

『うわっ不気味……デカっ!?』

『ホラーじゃん』

『なんか妖怪図鑑で似たようなの見た気がする』

『他の探索者の配信でも見た事ない魔物、マジで新種じゃね?』

『なんか強そう』

『本当に2人で勝てるの?』

『仮面の槍使いは何処ー』

『仮面の槍使いイケメン?』


「今回はあくまでチャレンジです! そしてこちらが今回の協力者の零さんです」


仮面を付けた澪の姿を写す


「カメラに向かって手を振ってくださーい」


仮面越しに近くのカメラを一瞥して手を雑に振る


『女性探索者だ。胸デケェ』

『あっ、あの槍知ってる。前に別の配信者が外れって言って売ってた武器』

『マジで1人じゃん』


コメントなので澪には見えていない


『俺探索系配信者よく見るけど見覚えないな』

『レイさんの仲間は居ないの?』

『なんで仮面つけてるの?』

『てかこの人防具付けてないじゃん!』

『舐めプしてんのか?』


「零さんは顔出しNGという事なので仮面を付けてます。この人強いですよ〜」


『本当に3級なら1人じゃ死ぬでしょ、シズクちゃんのバフあっても』

『配信者じゃなさそうだしソロの探索者の可能性はある』

『ソロとか命知らずだな』


配信しているシズクを他所に澪は再び深呼吸をする


配信しているだからと言って魅せる戦いをする訳じゃない

気にしなくていい目の前の敵を倒す事に集中すればいい

ただ自分らしく戦おう

中ボスと呼ばれる魔物、今まで戦った中で一番強い魔物

なら思う存分楽しまなければ損だ


澪は仮面に隠れて笑う


「シズク配信の準備はまだ終わらないのか?」


シズクに近付いて話しかける


「出来てます。もう戦いますか?」

「あぁバフをくれ」


『綺麗な声』

『淡々としてるな』

『かっこいい』

『シズクちゃんを呼び捨て!?』


「なんだこれ」


流れているコメントを指差す

凄い勢いで文字が流れているのが気になっている


「コメントですよー、簡単に言えば見てる人達の声です」


『こんにちは〜』

『こんにちはお姉さん胸デカイですね』

『セクハラコメントはBANされるぞ』

『初めましてー』


「あぁ成程、リアルタイムで流れてるのか」


澪は余り生放送などを見ない


「それではバフを張ります。3つとも張ります」

「確か4分だったか」

「バフの時間に関してはこちらで管理しますので零さんは気にしなくても大丈夫です」


空中に文字を書く

itawaf oruwok atiqiweguq

そして発音する


「ダロィスィ、フスルロウフェカ、ルィナアレォレイ」


3つのバフが澪に付与される


『頑張れ!』

『シズクちゃん! レイさん! 頑張れー』

『これ勝ったら大ニュースだぞ!』


澪は魔物の前に立つ

最強タッグ最初の戦闘が始まる

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