バフ
その足音の主はシズクであった
休憩している澪に気づいて近付いてくる
昨日買った防具を身に付けている
「やっぱり来てましたか」
昨日シズクの前で明日向かうと言っていた
時間は昨日ダンジョンに潜った時間を考えて少し遅めに来たのだろう
「1人で来るなんて命知らずだな。ここの魔物結構強かったぞ」
澪が倒したから安全に来れたが澪が倒してなかったら1人で戦うことになっていた
「強かったってやっぱり倒したんですね。大丈夫です。ちゃんと魔物が居ない事を確認して来ました」
七彩の1つ、探索の能力で周囲の安全を確認出来る
「そう言えば男口調なのはなぜです? 出会った時から気になってたんですが」
「私男兄弟に挟まれてたんだよ。だからその口調が混じったんだと思う。ずっと男口調って訳じゃないけどさ」
「成程、なんというか見た目に寄らないと言うかギャップと言うか違和感と言うか」
1人の兄と1人の弟に挟まれて育った結果男口調が混じっている
戦闘時は特に口調が荒くなる
見た目と口調が合わないと言われる事が昔から良くある
口調のせいで不良と間違えられた事も
「それは良く言われる。それで何用? 1人で魔物倒しに来た訳じゃないでしょ?」
「交渉に来ました」
「断る」
「まだ内容言ってないですよ!?」
「配信の手伝いも配信自体もする気ない。そもそも私ダンジョン自体そんな頻繁に出入りしてないから」
「今日で3日連続ですけど」
「今日は槍買って金が無くなったから、昨日は課金用の金を集める為、一昨日は生活費の為以上」
金があればダンジョンに潜らない
時々鈍らないように入口付近で戦ったりはするが本格的に潜るのは金が減ってきたら
「金稼ぎを手伝います! 顔にモザイクかけて見えないようにします! 素材上げます! 収益一部上げます! 許可しないなら勝手に撮ります!」
「犯罪宣言すんな……手伝いも要らない。効率的とは言えないがここの魔物を取り敢えず倒せる」
「私の異能ならバフ掛けれます」
「知ってる。配信見た。七彩の魔術師シズクだったか」
「はい、そうです……名乗ってますが恥ずかしいですね。それはそうと配信を見たなら分かりますよね」
「お前の異能は強い、だから必要とする人は多いだろ。魔物が湧いたか」
魔物が湧いたのを確認して槍を構える
「人型!?」
「人型はいないのか?」
「は、はい、オークのようなタイプの魔物は居るんですが完全に人のような姿をした魔物は初めて見ました」
シズクは探索系配信者としてダンジョンに関する情報は多く持っている
そんなシズクが見た事がないとなれば新種の可能性は大いにあるだろう
「そうか」
魔物に突っ込む
シズクは空中に文字を書く
oruwok
「フスルロウフェカ」
発音する
シズクの異能はそれぞれの能力の名を書いて発音するという動作が必要とする
バフの効果で澪の動きが早くなる
(これがバフか。これなら)
異能を使わずに槍を突き出す
足が早くなるだけではなく澪の全ての行動が早くなる
突きを繰り出すまでの一連の体の動き全てが早くなり結果槍の一撃に人型は対応出来なかった
為す術なく魔物は頭を槍で貫かれる
魔石を残して消滅する
「流石強いですね」
「お前のバフのおかげだ。私1人だとこいつ1体にだいぶ手間取っていたからな」
魔石を投げて渡す
配信で見てはいたがいざ自分がバフをかけられるとバフの強さを実感する
恐らくは速度アップのバフだろう
澪は慣れないとスムーズには動けないと思っていたがそんな事はなく元からその速度で動けていたかのように体を動かせている
「バフの上昇率は掛けられた人の強さに依存します」
「成程」
(だから強い人か)
シズクのバフは掛ける対象の強さで変動する
地力のある人間と組むのが最も異能の力を発揮出来る
他人に強さを求めるのは他人の強さが影響される異能だから
澪のように他人関係無く使えるタイプの異能では無い、どこまで行ってもサポートの異能
「バフはどのくらいで解除される?」
「バフ1つなら12分は持ちますよ。2つだと8分、3つなら4分、一つだけ数秒間しか持たないバフもありますがそれは併用不可です」
「12分か。なら少し試してくる」
「試してくるって……ちょっ、早っ!?」
バフがかかった状態で奥に進む
バフが切れる前に倒せるだけ倒す
2体同時に魔物が出ても真正面から反応出来ない速度で首を掻っ切る
槍の長さを変えながら戦う
短剣のように短くして素早く刺し斬る
人型と蛇の攻撃を避けて噛み付いてきた蛇の首を切り落とした後素早く人型の腕や胴体、首を連続で刺す
「次」
長さを半分程度にして振り回しやすくして攻撃を捌きながら削る
伸び切った腕に石突を叩き込む、鈍い音がする
胴体にも打ち込み体勢を崩したところにトドメの一撃として刃を突き立てる
「次」
本来の長さでリーチを使い一方的に攻撃を加えて長さと重量を利用した振り下ろしによる打撃、横薙ぎなど多彩な攻撃で削る
バフがかかっている間に色々と試す
(バフある時は短くして戦った方がやりやすいかな)
振り回して石突の方を頭に叩きつける
頭に打撃を受けた人型は不安定に揺れる
「頭に衝撃受けるとグラつくのか」
頭をかち割る勢いで槍を叩き付ける
魔物でも頭となる部位に衝撃が入ると致命傷にならなくても人間や動物と同じような動きをするが魔物に脳のような器官があるのかは分かっていない
魔物に対する研究は全くと言っていいほど進んでいない
魔物を生け捕りで外に運ぼうにも余りにも凶暴過ぎて手が付けられない倒すと魔石を残して身体は消滅する為一向に進まない
次の階層へ行く階段の前で止まる
「バフが切れたか。途中から数えてなかったが結構居たな」
倒すので夢中で何体倒したか素材が落ちたかなど一切気にしていなかった
来た道を見ると魔石が転がっている
「素材落ちてたらいいなぁ」
回収もしていなかった、魔石を回収しながら素材を探す
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