心をえぐる言葉。親父さんはやっぱりすごかった

春川晴人

私がぐれなかった理由

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 愛犬を愛でて、暇な時は断捨離に明け暮れる私ではありますが、こんな私にも一応反抗期がありました。


 本人は案外、それが反抗期なんだよ、ということに気づかないものです。気づけよ、って思いますが。


 なにしろ反抗期は二十五歳くらいのおっそい反抗期ですよ。他の人達はとっくに終わっていたでしょうね。


 けど、私には学生時代から鬱屈した悩みを抱えていました。


 隣人です。トラブル、まではいかなくとも、私にはとてもとても大きなストレスでした。


 だって、隣の家のお兄さん、私よりうんと年上なのに働きもせず、朝から晩まで古めかしい車を改造し、よりよきぶぉんぶぉんに命をかけていた? かまではわかりませんが、そんな感じでした。ずーっとぶぉんぶぉんですよ。


 しかも、自分で宅配を頼んでおきながら、玄関を開けることもせずの居留守。結局商品はうちが預かることになったりもしました。


 そんなぶぉんぶぉんが、小学生高学年から二十五歳くらいまでつづき、さらにもっとつづいていたのです。


 夏休みは熱くてもエアコンのない時代。しかも、朝から晩まで重低音でぶぉんぶぉんと響かせる。リズム感微妙に悪いし。


 こんなんじゃ夏休みの宿題はおろか、受験勉強も身に入らないほど苦痛を感じていました。


 そして、ついに私は爆発します。


「あの車、ぶん殴ってやる!!」


 こう見えて口は悪くても暴力はふるった経験がありません。親父さんが謎に持っていた金属バットをひきづりながら(金属バットを持ち上げるほどの力もない癖にですよ)、こうなったらもう、車を壊してやろう、それしかない、とまで追い詰められていたのです。


 そして当然のことながら、私をとめようとする親父さんに対して、私はとてもひどい言葉をはきだしてしまったのです。


「うるせぇ、このハゲ!!」


 最悪です。今の自分が飛んでいって、逆に自分をぶん殴ってやりたい。


 ですが、困惑しながらも親父さんは目をかっぴらき、こう答えました。


 もし、家を出ていけ、と言われたらそれでもいいし。野宿でもいいんだ、くらいに構えていたら、こうですよ。


「うるさいって言うな。まだ全部ハゲてねぇよっ!!」


 すごいパワーワードです。こうして私はぐれる隙もなく、言葉とは、誰かの気持ちを解きほぐすためのものなのだということにきづくことができたのです。


 そして反抗期はあっけなく一日で終わり、それを機に親父さんとは毎日笑って暮らせるようになりました。


 ちなみに、親父さんの髪はいまだに健在でず!!


 めでたしめでたし。


 ☆ちゃんと実話です。

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