第3話 両片想い見守り隊は結成する


 次の日の放課後。俺が帰ろうと席を立つと、俺の方にトンっと肩に手が触れた。

 なんだろうと思い振り返ると、そこには夏樹の姿があった。表情を見る限り、何か言いたそうにしてるけど。


「夏樹、何か用?」


「うん……。ちょっとね」


 チラッと見た視線の先には二人仲良く話している佐原さんと透の姿があった。どうやら二人は俺たちに気付いていないみたいだ。


「一緒に帰るか?」


「!」


 ちょっと驚いたような顔を夏樹はする。


 なんとなくだけど、俺にあの二人のことについて何か話があるのだと、見ていてすぐにわかった。


「うん、ありがとう」


 どうやら予想は当たっていたらしく、夏樹は笑顔で答える。


 まぁ、元々帰宅部同士たまにこうして帰ることはあるからな。別に周りからも目立った視線も感じないし良いだろう。


「そうだ! 駅前に新しいカフェができたみたいなんだけど春一は知ってる?」


「あー、あそこか。うん、まだ行った事はないけど」


「じゃあ、そこに行こうよ!」


 楽しげに話す夏樹を見るとなんだか俺も嬉しくなるな。かという夏樹も同じように見える。


「ははっ」


「春一? どうかしたの?」


「いや、なんだか夏樹が嬉しそうだなって」


「べっ、別にそんな事ないし!」


 すると、プイッと俺から顔を背けた。

 ちょっと自分に良い方に考えすぎてしまっただろうか。


「わかったよ。とりあえず行こうか」


「う、うん」


 そして、俺たちは場所を移して駅前のカフェへと向かった。



◇◇◇◇



「え、じゃあ何? あの二人、同じ相談を私たちに持ちかけてきたってわけ?」


「しかも見事に同じ日にな」


 夏樹と一緒に頼んだカフェラテを飲みながら、俺たちはお互いに話したかった話題を交錯させる。


 夏樹から話を聞く限り、昨日俺が透から相談されたのと同じように、夏樹も夏樹で佐原さんから好意を寄せている相手に好きな人がいないかを俺に探りを入れて欲しいと頼まれたのだそうだ。


「もうあの二人早く付き合っちゃえば良いのにね」


「お互い恋愛初心者だから奥手なんじゃないのか?」


 正直更に慎重に事を進めているようにも思えるけどな。


「えっ、春一って彼女とか居たことあるの?」


「……ないけど」


「あははっ、だよねー。まぁ、私もないけど」


 そんな話をしながら、二人をどうするかという話になり、出た結論が。


「とりあえず、私らが恋のキューピットになるしかないね」


「まずは二人きりにする必要があるよな」


「じゃあさ、私たちが相談されたみたいに二人をある場所に呼び出させようよ」


「良い考えだけど、そんな場所あるのか?」


「ベタだけど、……体育館裏とか」


「あぁ、確かに。あそこの木陰って体育館から見ても死角だから良いかもしれないな」


「ほんと!」


「うん、それでいこう。これ以上変に長引かせるよりは良いと思う」


「じゃあ、決まりだね!」


 そうして、明日は二人の恋路を見届けようと言う事で落ち着く。


「それじゃあ、明日は両片想い見守り隊のミッションという事でがんばるぞ! おーっ!」


「見守り隊って、いつの間にそんなの結成してたんだ?」


 しかも二人しかいないし。


「いいじゃん! こういうのはノリだって誰かが言ってた」


「相変わらず影響されやすいのな」


 ま、別に見守る事については付き合ってやらんこともないけど。


「だって、親友の恋が叶うなんて素敵じゃない?」


「だな。そう思える夏樹もかなり素敵だと思うけど」


「ふぇっ!?」



 俺たちも体育館裏に放課後集合する約束をしてカフェから出て行くことに。


 流石にあの場所で二人きりにもなれば、どちらかが告白してもおかしくない状況だろうと親友同士の恋バナに花を咲かせ、俺は夏樹を家の近くまで送ってから家へと帰ることにした。

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