42 姉にお仕置きされるキャサリンー2

 風が急に荒れ、小さな竜巻がキャサリンの周りに渦巻いた。セシルは風魔法の力を使い、その竜巻を操りながら厳しい表情でキャサリンを見つめた。


「なぜ私の忠告を無視したのかしら? デリア様は私たちを救ってくださろうとしていたのに、その方に向かって悪魔だなどと言うなんて、命知らずな子ね!」


 セシルは声を荒げながら言った。彼女の目には怒りと共に、キャサリンへの深い憂慮が宿っていた。竜巻はキャサリンを囲み、踊るように舞いあがった。風の力に逆らいながらも、大広間の宙に浮かんだキャサリンは、青ざめた顔で謝る。


「お姉さま、ごめんなさい、ごめんなさい。お願い、怒らないで。私が悪かったわ。だって、デリア様が羨ましかったのよ。あんなに素敵な男性に大事にされて、こんなに立派な屋敷に住んで、将来はグラフトン侯爵になるなんて」


「バカな子ね! 今回は許すわけにはいかないわ。私が許したら、あなたはきっと不敬罪で、もっと酷い罰をうけるわ」


 セシルは決意の表情を浮かべながら両手首をまわす。竜巻はキャサリンの髪を乱し、徐々に力を増していく。キャサリンの髪は踊るように風に舞いながら次第に短くなり……ツンツンに髪が立つほどに切られていた。


「だめよ、セシル! あんなに綺麗だった金髪が・・・・・・あの髪では外出もままならないわ 」


「デリア様。このようなことで許してほしいなどと図々しいかもしれませんが、妹の暴言を許してくださいませんか。お願いします」


 必死でキャサリンのために床に跪いて謝る様子に心を打たれた。私もこのような姉が欲しかった。一人っ子だったから、姉妹愛には憧れる。


 イシャーウッド王国でもペトルーシュキン王国でも、女性の髪は美しさの象徴で長ければ長いほど尊ばれた。ちなみに私の髪は腰のあたりまである。

 

「さっ、さきほどのお話はなかったことにしましょう!」


 そう言ってきたのは……

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