第4話 身の丈に合わないってこういうことか
宿に帰ってきて気づいたんだけど、俺の体はボロボロだった。主に筋肉痛で。
そもそも日本にいた時から運動してこなかったってのもあるんだけど、一番の原因は筋力値が低いことのようだ。
原因を探るべく色々試行錯誤していたら、ステータスオープン! の言葉で視界にステータスが表示された。
俺のステータスはこうだった。
体力: 2/21
魔力: 5/21
筋力: 15
知力: 10
技量: 12
敏捷: 10
運 : 10
低いのか高いのか基準がないからよく分からないが、一般的には低いと言える数値な気がする。なので、それが原因じゃないかと思って色々調べたら、スキル開発ツールで閃光斬に必要なステータスが見れた。
【 必要筋力:20 消費魔力:2 】
強化した閃光斬に必要な筋力値は20だった。全然足りてねぇ! よく技出せたな!
多分、元々の筋力値って他と同じように10だったんじゃないかな。それが、筋力値を超える技を繰り出しまくった結果、無理に鍛えられて15まで上がったんだと思う。技量を使う剣技もあったから、それも上がってるし。
その代償が今の筋肉痛だ。筋繊維という筋繊維がことごとく破壊されているに違いない。腕が痛みで全く上がらないのだ。
これじゃあプログラミングができないぞ……。
こうなったらあれだ。回復魔法だ。足の方も筋肉痛はあるが、幸いなんとか歩くことができる。回復魔法を覚えるためにスキル持ちを探そう。
回復魔法といえば教会だろうと、人に道を聞きながら教会まで来た。
おお、やってるやってる! 神官らしき人の前に、凄い数の人が列を作っている。神官が手をかざし何やら呟くと白い光が現れ、目の前の子供を包み込む。
「ふう。これで治ったでしょう。では次の方どうぞ」
ずいぶんと事務的な神官だ。だが、怪我が治った子供とその親はとても嬉しそうだ。
「本当に骨折が治るなんて!?」
「一ヶ月待った甲斐があったな、息子よ!」
「はい! ありがとうございます、お父様!」
微笑ましい光景。裕福な家族のようで、身なりが整っている。
よく考えたら、俺も治して貰えばいいのか。ついでに回復魔法を解析しちゃえば一石二鳥だ!
そう思って列に並ぼうとしたら、近くに看板があった。
【 本日は月に一度の大神官による治療デイ! たった金貨五枚のお布施で、あらゆる傷を癒します! 】
き、金貨五枚!? たかっ! そんなお金、持ってないぞ……。
列に並んでいる客層をよく見ると、明らかに裕福そうな人ばかりだ。治療するにも大金が必要なのか、世知辛いなぁ……。
俺は諦めて自分で治療することにした。神官から少し離れたところで解析眼を発動し、観察を始めた。次の客の治療が行われると、ピコンッ!という音と共に、視界に説明が表示された。
〔ノーマルスキル《聖魔法》の《ヒール》。小さな怪我なら瞬時に治癒する〕
これでよしと。近くで凝視していたからか、神官と客から訝しげな目で見られたのですぐに逃げる。
宿に戻り、腕の痛みを必死で我慢してパソコンを開き、今回は特にプログラムをいじることなくインストール。早速使ってみる。
「《ヒール》!」
俺の体が白い光に包まれる。すると、なんだか気持ちが爽やかになってきた。しばらくして光が消えたので、腕を動かしてみる。
……いてぇ!? 全然治ってない!?
いや、少しだけ痛みは引いてるけど、これじゃ全然ダメだ……。《ヒール》をプログラミングで強化するしかないか。
プログラムを確認するとこんな感じになっていた。
----------------------------------------
スキル :聖魔法
魔法 :ヒール
プログラム :
魔力を2ポイント分練り上げる
↓
その魔力を右手に集める
↓
右手の魔力を聖属性に変化させ、癒しの光を作る
↓
癒しの光を対象に放つ
----------------------------------------
なるほどね。「聖属性に変化させ、癒しの光を作る」の部分が具体的にどうやるのか全く分からないが、こういった部分をスキルが自動的に処理してくれるんだろう。
じゃあ「魔力を2ポイント」を「魔力を20ポイント」にしてっと。それ以外はいじるところがないかな。これで別のプログラムを作成して、《エクストラヒール》とでも名付けよう。
再びスキルをインストールして、魔法を使用する。
「《エクストラヒール》!」
右手から眩い光が放たれ、俺を包むだけでなく部屋全体にまでパアッと広がった。腕を動かしてみると……治っている! 全然痛くないぞ!
「……おえぇ」
なんか、すごく気持ちが悪い……。 ついでに頭もガンガンする。 回復したばっかりなのになぜだ……?
急いでステータスを確認する。
体力: 21/21
魔力: −15/22
筋力: 15
知力: 14
技量: 12
敏捷: 10
運 : 10
ま、魔力がマイナス!? 限界を超えて使ってしまったのか……? なんか知力がすごい上がってるし、こっちにもかなり負荷をかけてしまったらしい。
無理をしすぎた……。ヤバい、ダメだ、少し横になろう。俺はなんとかベッドに潜り込んだ。
目を覚ましたら、なんと2日経っていたらしい。宿の主人が死んでるんじゃないかと部屋に起こしに来た。
本当に死ぬかと思ったよ……。もうこんな危険な真似はしないようにしよう。
主人に食事を用意してもらい、食べてからまた少し休んだ。そして、《エクストラヒール》に必要なステータスを確認してみる。
【 必要知力:30 消費魔力:20 】
……げっ!? 必要な知力が高すぎる……! そりゃ頭も痛くなるわ……。いつかは使いこなせるようになるかもしれない。けど、まだ当分先になるだろう。
俺には手に余る魔法を作ってしまったので、もっと手頃なやつを作ることにした。《ミドルヒール》と《ハイヒール》という名前にして、必要なステータスはこんな感じに調整した。
ミドルヒール 【 必要知力:15 消費魔力:5 】
ハイヒール 【 必要知力:20 消費魔力:10 】
どっちも必要知力が今の俺の知力値を超えてるけど、《ミドルヒール》の方ならそこまで具合が悪くなることはないはずだ。
あとはテストだな。とはいっても、怪我人の知り合いなんていないしどうするか……。それに、テストするにもステータスが低いとスキルを使うのがしんどいから、今後はそれなりに上げていかないとな。
正直あまり気が進まないけど、ギルドで魔物討伐の依頼でも受けてみるか。この前ギルドに行った時、壁にそういった依頼の貼り紙がいくつかあった。
きっとこれまで覚えた剣技スキルを使えば、弱い魔物なら倒せるだろう。
そうして戦闘を繰り返すことで自分のステータス向上が期待できる。
討伐報酬を手に入れられれば生活の足しにもなるし、何かの拍子でガッポリ稼げれば、引きこもってプログラミング三昧の日々を送ることも夢ではないかも。
しかし、依頼を受ける一番の目的は怪我人探しだ。危険な魔物の討伐依頼を受ける冒険者も中にはいるだろう。そんな魔物との戦闘に怪我はつきものだ。こういった人を見つけて、こっそり回復魔法のテストをするのだ。堂々とやったら俺の存在がバレてしまうからな。
よし、作戦としては完璧。穴はない。いざ出陣だ!
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