第4話 とある昔話

 昔々、この地で疫病が流行り、多くの人が亡くなった。

 多くの村々が廃村となり、余所へと移る人も多かった。

 この現状をどうにかしようと一部の村人が集まり話し合った。

 話し合いの中で、一人の村人がこう言った。

「この地で一番高い山の上に薬師如来様を祀り、我々を守っていただこう」と。

 他の村人達はそれに賛成し、後日、京の法師に頼んで薬師如来像を作ってもらった。

 京の法師により作られた如来像は真白な姿をしており、顔には柔らかな微笑みをたたえていた。全体の大きさは七尺ほどあった。

 村人達は早速、如来像を一番高い山の山頂に祀り、敬った。

 すると、今まで猛威を振るっていた疫病は静まり、その後一切病で死ぬ者は出なかった。また、山の麓にはあらゆる傷を癒やすとされる薬の湯が湧き出てきて、村人のみならず多くの人々を癒やしたという。

 これ以来、村人達は薬師如来様への参拝を欠かさず行うようになり、薬師如来像が祀られている山を『薬師山』と呼ぶようになったとされている。                

                

                1979年発刊『東北伝承見聞録』より、一部抜粋

 

 

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