最終話 ルート・ハルカ
「で~? ハルカとのデートはどうだったわけ?」
によによとスマホを眺める俺の膝に転がって、妹のナナがアイスを舐めている。
「見てわからないか? 楽しかったに決まってんだろ」
スマホに映っているのは、ハルカとのデートの感想のやり取りだ。
結局、何もかもが今まで通りで。そんな簡単に気持ちに変化なんて起きなくて。
俺は、ハルカとお付き合いすることにした。
ハルカは、徐々にだけれど自分が男として暮らせるように学校での生活を変化させると言っていた。制服を男物にしたり、まだ始まって二か月しか経っていない今だからこそ、やり直しがきくのではないか。「その勇気を悠くんがくれた」と言ってくれて。
俺達は、公には親友として振る舞うようにして、学校の皆には隠れて交際をすることにしたんだ。
そうして、もう少し大人になって色々と環境や気持ちに折り合いがついたら、性転換手術を受けようかなとも言っていた。
ハルカの性自認は、女なのだそうだ。
だから、最終的には女として俺に愛されたいと言ってくれて。
デート後の俺の告白に、
「下が付いたままのお付き合いになるから、色々と悠くんを困らせることになっちゃうかもしれないけれど……僕でよければ、こちらこそよろしくお願いします」
だなんてことになって。
俺は、美少女――だと思っていた美少年幼馴染とお付き合いをすることになった。
ハルカは、自身が男だと告げたあとも健気で可愛くて。俺が告白したあとは、うっすらと涙を浮かべて、「悠くんに嫌われちゃったらどうしようかと思っていたから、私……今すっごく幸せだよ……!」なんて言ってくれて。
俺が望むなら、これからも女の恰好でデートしたりしたい、とも言っていた。
それから数日後。
美少女生徒会メンバーが実は美少年だったというニュースが学校を駆け巡って。
でも、入学して二か月しか経っていなかったせいか、それはとある生徒のサプライズでした、くらいの噂に昇華されていって。
そうやってハルカが男として学校の生活に馴染めるように、俺は傍で見守っていた。まかり間違っても誰かがハルカをイジメたりからかったりすることのないように、心の支えになれていたと思う。
その様子を、男の姿のまま、大親友として、変わらず友也は見守ってくれた。
俺は、告白してくれた友也にだけは、ハルカと付き合うことになったと真実を告げたんだ。
俺の決意に、友也は変わらず笑って背を叩いてくれて。
「じゃあ。俺は俺のままでいる」と言って、「親友ポジは譲らねーからな!」だなんてはにかんでみせて。
友也は、「悠が望むなら女になろうと思ったけれど、隠しきれるなら高校は男のままで過ごしたい。悠の隣で」と言ってくれたんだ。
その気持ちが、嬉しい。
けど最後に、友也は笑った。
「万が一、NTR……ハルカと喧嘩でもしてみろよ。俺が横から掻っ攫うからな!」って。
俺も笑顔で「おう!」と拳を突き合わせて。
NTRなんてないさ……絶対。
だって今、俺はこんなに幸せなんだから。
毎週末。俺とハルカは少し遠くの町でデートをする。
傍から見れば男女にしか見えないカップルだ。
ハルカは、俺の隣ではハルカはハルカのままでいられる、と嬉しそうに笑ってくれて。
「悠くん……ありがとう。こんな私を愛してくれて」
十六年分の想いを込めて。
夕暮れの丘でキスをしてくれた。
FIN
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※こんばんわ。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
これにてこのお話は一旦終了です。
(反響次第でルート友也や姉など制作するかも?)
只今コンテストに参加中のため、もしよろしければ、レビューや☆評価、感想をいただけるととても励みになります! 皆さまからの感想や評価からは多大なモチベーションをいただけるので、何卒お願いいたします!
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①『中二病を拗らせていたら、メンヘラと天使と甘ロリに捕まって青春ラブコメが始まっていた件』(ラブコメ)
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「はがない」好きな方に刺さればいいなぁと思っていたりいなかったり……
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③『ヤンデレ侍、好きにて候』(異世界ファンタジー)
既存作を改稿して完結させる予定です!
https://kakuyomu.jp/works/16817139557458791437
私事にはなりますが、コンテストに参加中の為、少しでも多くの方に期間中に読んでいただけたらなと思い宣伝させていただきました。
星やレビューはもちろん嬉しいですが、どの作品もかなり毛色の異なる作品のため、率直にどうだったか、という感想が気になって……
もしご興味ある方は、是非ともよろしくお願いいたします!
長くなりましたが、ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました!
今後とも是非、よろしくお願いします!
【短編】基本どこを向いてもアウトなラブコメディ 南川 佐久 @saku-higashinimori
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