第4話 デートをしよう

 藤原悠、一世一代の告白。


 翌日。俺は、駅前広場にハルカを呼びだした。


 いつも通り、「一緒に映画でも見ないか?」なんて誘って、それには秒で既読がついて。ハルカが俺のことを好きでいてくれるんだなというのがよくわかった。

 その『好き』が、友達としてなのか異性としてなのかはわからないけれど。

 今日のデートで、俺はそれをはっきりさせたいと思っている。


 正直、友也に告白されたことは驚いたけどすごく嬉しかった。

 だって、心を許しきった大親友が、異性としてだけど俺のことを好きだと言ってくれて、これまでの信頼関係よりも一歩進んだ関係になりたいと望んでくれて、これで嬉しくないわけがない。


 だから、思ったんだ。


 もしかするとハルカも、俺に対してそう感じているのではないかと。


 先日、温泉旅行にてハルカは、高校に入学して、声変わりも本格的になってきて、もう隠しきれない……潮時だろうと思っていたと白状した。


 でも、ここまで隠し続けていたのは、大好きで仲良しな幼馴染という俺との関係が変化してしまうのが怖かったのだとも言っていたのだ。


 あの時はハルカが男だったというショックで頭が真っ白になって、深く考えることができなかったが。よくよく考えればあれは、ハルカ的には告白にも近いものだったのではないだろうか。


 だから、今日のデートで、俺もハルカへの好意をはっきりさせたいと思っていた。


 待ち合わせの場所に、ハルカは、いつものブラウスにスカートのような清楚可憐なスタイルではなく、ダボっとしたシルエットのジャケットにショートパンツ、キャップというボーイッシュな恰好で来た。

 髪は未だに長いから、ぱっと見は女の子にしか見えないけれど。その変化は、俺たちにとって大きな意味を持つもので。


「えへへ。……待った?」


 その、キャップから覗く上目遣いが、無言で問いかける。

 『ズボンで来たけど、どうかなぁ?』って。


 そういう無言の意思疎通ができる程度には、俺たちは仲のいい幼馴染。


 だからこそ。俺はその華奢な手を……握った。

 まるで、男女がデートするのと同じように、指先を恋人繋ぎに絡めて。


「……似合ってるよ。ハルカ」


 その返答に、にぱぁ! と見慣れた笑みが咲いて。


(ああ……やっぱり俺は、ハルカが『好き』だ……)


 ずっと追い続けていた想いを、簡単に消すことはできない。

 俺は今でも、ハルカが好きだ。

 ハルカがそれを望んでいるかいないかはわからないが、俺は未だに、異性としてハルカのことが好きだ。


 だから、告げた。


「ハルカ。デートをしよう。それで今日一日楽しかったら……俺と、付き合ってくれ」


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