第3話 姉ちゃんはあったかくて、いい匂い
ずっと好きだった幼馴染が男だと思ったら、中学からの親友、友也が女だったと知った日。
俺はどうしたらいいかわからなくなってしまった。
友也に、胸があったんだ。
あの、大親友で下ネタとかも互いに言い合ったり、恋愛相談したりした友也が、女だった……
さらしでも巻いているのか、少し小ぶりだけど形が良くて柔らかい胸が、そこにあったんだ。
でも。大親友が女だと知ったからって何なんだ。それでハルカへの想いをまるっきりなかったことにして友也になびくほど、俺は軽い男じゃないと、思う。
でも……
見れば見るほど友也はイケメンで。
よく見るとまつ毛が長くて。色素が薄いベージュの髪が柔らかそうで、近づいてみると心なしかいい匂いがして……
ダメだ、ダメだ! 昨日の今日で友也に流されてどうする!!
俺は、俺は……!
「好きだよ。悠」
「!?」
「お前がもしハルカへの想いを断ち切ってくれるなら。俺が、お前を幸せにする。女として、悠の彼女になって、その……色々……がんばるから……」
頬を赤らめる友也は、よくよく見ると俺より背が低くて、骨格が華奢で。どうして気づかなかったんだろう……女の子だった。
いや。俺が気づかないように、今までは細心の注意をはらっていたのかもしれない。
だから、ハルカの件で、俺が性別を詐称されても変わらず接する人間だと知って、自分も打ち明けた――そういうことなんだろう。
「友也……?」
「悠にその気はある? 俺を、彼女にする気……」
「ごめん……ちょっと、考えさせてくれ……」
もう、色んなことがありすぎて正直キャパオーバーだった。
俺は一旦家に帰って、情報を整理――
いや、気持ちを整理することにする。
◇
ベッドにもふん! と埋もれると、そこにはなぜか、布団に隠れるようにして俺の枕の匂いを嗅いでいるミチル姉がいて。
「あはは、バレちゃったぁ? おかえり、ゆぅくん♡」
なんて。そのまま俺をベッドに引き摺り込んで、頬ずりをしてきて。
腕をむにゅんと挟んでくるおっぱいの感触に、さっき触った友也のおっぱいを思い出したりして……
「あああああ!」
友也も友也だよ! なんで「お母さんが男の子が欲しかったらしくて」なんて理由で友也なんつー名前なの!? んで、お母さんのために男の子っぽい恰好っつーか、制服で通ってるとか何事!? これリアルの話!? ありえない!!
でも、優しい友也に罪はないし……むしろ好きになっちゃった。
しかも告られた……
「うわあああ!
「とりあえず、お姉ちゃんにキスすれば? 昔みたいにしてよぉ。『お姉ちゃんだいしゅき』って、ほっぺにちゅ~♡」
「それ何歳の話!?」
「ん~? ゆぅくんが三歳くらいかな? あ、もう大人だもんね! ほっぺじゃなくて、口でもいいよ♡ とにかくキスして。お姉ちゃん、ゆぅくんが大好きだから」
「なんでそこまで!?」
「だって、ゆぅくんは世界で一番優しくて、素直で、いい子だから♡」
そうやって、太腿をいやらしく擦るのはやめて欲しいのだけれど。
姉ちゃんの言葉は胸に響いた。
(優しくて、素直ないい子か……)
そんな俺は、今、どんな選択をするべきなんだろうか。
(自分の気持ちに、正直に……)
「ハルカか、友也か……」
「そこはお姉ちゃんでしょう♡」
そう言って、ミチル姉は俺に覆いかぶさった。
「はいはい」
わかってるよ。そうやってじゃれて遊びたいんでしょう?
Fカップのおっぱいに埋もれながら、猫みたいに甘える姉の頭を撫でる。
栗色の髪はふわりと柔らかくて、女の人特有の良い匂いがして。
きっと友也を抱いてもこういう匂いがするんだろうな、なんて少し思ったりして。
俺は、想いを伝えようとスマホを手に取った。
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