第102話 嘘だと言ってよ〇ーニー

 ――あぁ、眩しい……


 ここは、どこだ……

目が見えない、でも光は感じる。生まれたばかりで目が開かないのか?


 ――ぉぉっ、っ、っぃに……


 ん? かすかに声が聞こえる。男性の声?

 よく聞くと回りから歓声の声が聞こえてきた。なんだ? もしかして僕の誕生を祝福してくれているのか?


「ついに生まれた! 紫色の毛色を持つ、我らの救世主! 勇者は誕生した! 皆で祝おう! 今日は宴だ!」


 やはり。どうやら僕の誕生を皆祝福してくれているみたいだ。

 どうやら僕は勇者に転生したらしい。

 始まる。とうとう始まる。僕の勇者としての物語が。

 僕は勇者として魔王城へ乗り込み、魔王を倒す。そして魔王城に住んで全世界を支配する。そんな英雄譚が、今、始まる!



    ◇



「ほらっ! ラインハルト! ごはんよ!」

「あ、はい、ありがと、お母さん」


 現在午前5時、何時もの如く朝食の時間。

 僕の目の前に出された食事。

 食器はない。今日の朝食は地べたに無造作に置かれたミミズ……


「さぁ、我らが唯一神ユピテル様へ祈りを捧げて美味しい食事をいただきましょう」


 食事前恒例の祈りを終え、朝食のミミズを口に運ぶ、というか口を運ぶ。

 うーん、何時まで経ってもこの味には慣れない。虫とかだったらいいんだけど、なかなか虫が捕獲できず、朝食はだいたいミミズがでてくる。

 朝食を終え朝の訓練が始まる。


 戦士には戦う為、常日頃から鍛錬が必要だ、というのがお父さんの口癖だ。

 僕は今日もお父さんと一緒に鍛錬に励む。


 ――ハッ! ハッ!


 僕とお父さんは草原で互いに研鑽を積む。


 はぁ、疲れた。気づけば時刻は午前6時。

 疲れた時は寝るに限る。ここから午前10時まで朝寝タイムだ。

 疲れた体を睡眠で労わる。

 午前10時に起きて、今度はおやつタイムだ。

 規則正しい生活が強い体を作る。これもお父さんの口癖だ。

 目の前に用意されたミミズを頬張る。うん、まずい。だが出されたもんは食べる。 これが我が家のモットーだ。


 そしてゴロゴロしながら時間は過ぎ、時刻は午後0時。


 昼食の時間だ。昼食は待ちに待った虫だ。

 うまい! やっぱりミミズとは一味違う。あっという間に食べ終えて、お母さんの虫まで食べてしまった。

 昼食を終えると午後16時まで昼寝だ。

 寝ることによって強い体が作られる。これも僕に必要な鍛錬のひとつだ。


 午後16時に目が覚め、草原で一頻り走ると、当然疲れる。

 今日も頑張った……

 午後17時、今日一番のお楽しみ、夕食の時間がやってきた。

 今日のメニューはトカゲ!

 お父さんが狩りを頑張ってくれたみたいだ。久々のご馳走に思わず涎が零れる。僕はお父さんの分のトカゲまで食べてしまい、さすがにお父さんに怒られた。でもお父さんはその後、笑顔で『お父さんのトカゲ美味しかったか?』 と聞いてきた。

 僕はめちゃくちゃ美味しかったよ! と答えた。

 そしてすぐに眠りにつく。僕の一日はこうして終わる。

 この日々を繰り返す。


 ――僕は今……


 ――メラニアです。

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