第57話 魂が混じってる
次の日僕は急いで反転の森へ向かった。一刻も早くルーナ達が来たことの詳細が知りたい。でもよく考えたら僕がルーナ達のことを根掘り葉掘り聞くのはおかしいよな? どうしよう、ああでもないこうでもないと、ひとり悩んでいると、いつぞやの時みたく、頭に電撃が走った。
「おはよう。レット君。どうした? 考え事をしているようだが」
あ、ホウライだ。そうだ! ホウライに聞いてみるか!
「ねぇ、ホウライ、2年くらい前にこの森に誰か尋ねてこなかった? 女性ふたりと長身のエルフなんだけど」
「あぁ、来たね。アトロポスの弟とラキヤから来たという女性ふたりだね。それがどうかしたのかい?」
やっぱりルーナ達はこの森に来て、すでにどこかへ去ったあとなんだな。でもここへなにしにきたんだ?
「あ、あのさ、その人たちってここに何しに来たの?」
「あぁ、なにやら復讐の魔人と因縁があるらしくてね、アトロポスに知恵を貸してもらえないかとここへ訪ねてきたらしい」
「復讐の魔人? なにそれ? 初めて聞いたんだけど」
「君が昏睡状態の時に出現した魔人だから君が知らなくて当然だね。その魔人はラキヤ剣術学院の教員とラキヤ治安維持部の兵士の計2名を殺害して魔人認定されたらしい。魔人名アコナイト。元の名はバーナード・クロムウェルという上流貴族だったらしいよ」
はぁ!? バーナード!? で、でもあいつが魔人化したのは僕が前回転生していた時、ROSEの呪いを受けたのが原因だったんじゃないのか? 今回あいつはROSEの呪いを受けていないはずなのにどうして……
「ねぇ、ホウライ、そいつがなんで魔人化したかはわからないの?」
「ええとね、この森にきたルーナという少女が言うには、彼女が学院の剣術模擬戦でそいつの目を木剣でつぶしたらしいんだよ。そのあとそいつは走って逃げて行ったみたいなんだが、まぁその後はさっき言ったとおりだね」
え、ちょっと待って。僕がバーナードにやるはずだったことをルーナがやってヤツは魔人化したってこと? 過程は変わってるけど結果は同じになってるのか? どういう理屈なんだよ! 全くわかんねえ!
「そうそう、ルーナ君だったかな、彼女はとても興味深いことも言っていた。なんでも彼女には実在しないのに、とても大事な友人がいたそうなんだよ。それと彼女と一緒にきたトーカという女性も同じようなことを言っていたんだ。彼女に弟はいないはずなのに、とても大事な弟がいたはずなんだってさ。変な話だよね」
え、それってどう考えても確実に僕のことだろ。どういうことだ? なんでなかったことになってるはずの前回の転生が彼女たちの記憶に残ってるんだ?
あ、でもリーリエは僕のことを覚えていた。リーリエはROSEのせいでなにかしらのイレギュラーが起きたのだとばかり思っていたけど、もしかしたら今まで出会った皆ともなにかつながりができているのか?
だとしたら……
今までは皆にもう一度会って、死んじゃった事をただただ謝りたいと一人よがりに思っていたけど、もしかしたら前回までの転生での皆との思い出をもう一度共有できるのか!? こ、これは! なにがなんでももう一度皆に会わなくては!
そんなことを考えていると、ホウライから思いもよらない言葉を投げかけられた。
「ねぇ、君ってさ、転生してきたのって、今回が初めてじゃないんじゃない?」
え、え、なんで……
「え、ど、ど、どゆこと…… かな」
「あは! 図星かな? 君、前の転生ではユーカって名前だったんじゃない?」
あぁ、ホウライには完全にバレてるっぽい? でもなでわかったんだ? い、いやそんなこと考えてる場合じゃねえ。
「え、え、だ、だとしたら…… ど、どうするのさ?」
「んん? 別にどうもしないさ。ただそうじゃないかなって思ってね。あぁ、私が前に君に言った言葉を覚えているかな? 昏睡前だったから忘れているかもしれないけどね」
――魂が混じってるって。
あ、そういえばなんか言われたような気がする。僕の首すじに抱き着いてベロベロ舐めてきた時だ。あの時は言葉の意味を深く考えなかったけど……
混じってるって、要は何回も転生してきてたのを魂の形で見られたってことか!? この人すごいな…… さすが元女神だ。
「う、うん、覚えてる」
僕がそう言うと彼女はうふふっ、と笑ってたタバコに火をつけた。
「このことは秘密にしておこう。私も誰かに言ったりしない。だから君も誰にも言わないように気を付け給え。ふふっ、おもしろい、おもしろいね、君は」
――本当に、本当に面白いよ。
「あぁ、そうだ、ひとつ言うのを忘れていたことが有る。ペルルだけどルーナ君たちに同行していったからね。アトロポスがついていくようにと指示したみたいだ。ちなみに17ガーベラも1名つけてある。だから彼らのことをそこまで心配する必要はない。今君に必要なのは、まず体力をつけることだ。そして魔力もだ。しばらくは私が君に稽古をつけてあげよう。楽しみにしてるといい」
え! マジか! ホウライが稽古つけてくれるのか! これはうれしいぞ!
「ホウライ、本当に色々ありがと! 僕頑張るからよろしくお願いします!」
「ふふふっ、楽しみだ。人に物事を教えるなんてアトロポス以来だから腕が鳴るよ」
そういうホウライの顔は笑っていた。でも言いようのない怖さを含んだ笑みだった。あ、もしかしたら僕ヤバい人に稽古つけてもらっちゃうことになったのかも……
稽古中に死んじゃったらどうしよう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます