第42話 もう一人の転生者
――大旦那様がご到着なさいました!
執事のカルラさんがキサラギ財閥会長イゾウ・キサラギの到着を告げる。
アナスタシアを先頭に、この別荘にいる全員で出迎えることになった。
そこには何故かリリムさんとリーリエの姿があった。
何故だ? 何故おまえらがここにいる? 帰れよ! さっさと帰れ! まあ指輪を取ればこいつらは消えるんだろうけど、なんかリーリエがもっとここにいる! と言って聞かないのでこうなってしまったのだが。
でもそれでオッケーするアナスタシアもアナスタシアだ。肝が据わってるというか、こいつらがもしかしたら悪の手先かなにかだったらどうすんだ! まぁ違うんですけどお。
「御爺様、ご無沙汰しております。ご機嫌麗しゅう存じます」
「おぉ、ナーシャも元気そうでなによりだ。ほお! ご学友も一緒かね? ほおほお! 是非我が別荘で青春を謳歌していき給え」
まるで御年90歳とは思えない肌艶、背筋もピンと伸びていて、精気に満ち溢れている。さすがキサラギ財閥を一代でスーパースペシャル大企業に発展させた男だ。
ちなみにナーシャっていうのはアナスタシアの愛称らしい。
「御爺様、今日はどのような御用でこちらへ?」
「ん? あぁ、鉄道延伸の件でな。こちらの地場の企業と打ち合わせに来たのだ。聞けばちょうどナーシャたちがここに来ているというではないか。なら久々に顔でも見ておくかなと思ってな」
「まぁ! 光栄ですわ! 御爺様も一緒に夕べの食事をしていきましょうよ!」
「そうだな。では若者に交じってワシも食事させてもらうとするか! じじいは若者から活力をもらわんとな! がっはっは!」
中々豪気なお爺さんだな。結構とっつき易そうな人っぽいし。よかった、物凄い偏屈じじいを想像してたからめっちゃくちゃ身構えてたよ。
そんな感じで勝手に偏見で想像して、勝手に胸を撫でおろしていたら、イゾウさんが僕のことをジッと見つめてきた。え、なに? 美少女すぎて見とれちゃった感じ?なんつて。
「その紫色の瞳…… もしかしてアトロポスのとこの娘さんか!? あ奴は元気にしとるか?」
えっ!? あぁ、この人うちの父ちゃんと知り合いなんだっけ。
「あ、はい、父ちゃんは相変わらず元気にケツ掻いてますよ」
あ、しまった…… みんなの中の父ちゃんのイメージが! みんなポカーンとした顔で僕を見てるし!
「そうか! そうか! 相変わらずか! あ奴とも久しく会っとらんからな。イゾウが今度酒でも飲もうと言っとったと伝えてくれ!」
あ、はい、わかりました。と答える。意外にも共通の知り合い? がいた。そうだ! もしイゾウ氏と二人きりになれたら気になってるあのことについて聞いてみよう。
「おぉ! ロベリア嬢もおるのか! 久しぶりじゃな。息災か?」
「えぇ、イゾウ様もお元気そうで……」
そうか、ロベリアとイゾウさんは知り合いなのね。まぁ上級貴族のご令嬢と財閥の会長だし全然不思議でもなんでもないね。
でもロベリア作り笑顔がバレバレでなんか怖いっす。
彼女の一挙手一投足が気になって仕方のないレットさんなのだった。
◇
さぁさぁ、夕食の時間となりました。当初の予定では夕食も外でバーベキューをするはずだったのだが、キサラギ財閥会長イゾウ・キサラギ氏の急な来訪により、室内での食事に変更されることになったのだ。さぁ! スーパーお金持ちの夕食! なっにがでっるのっかな~!めっちゃ楽しみだぁ!
「皆様、大変お待たせいたしました。食材の仕込みに時間がかかってしまい、大変申し訳ございませんでした。直ぐに配膳させていただきますので、もう少々お待ちくださいませ」
ペトラさんとカマラさんがそう言いながら皆の前に配膳している料理達。
えっ、マジ? これって……
――どうぞ、ごはんとお味噌汁、アジの干物にお漬物で御座います。
アナスタシア以外は「えっ? これなに?」みたいな表情をしている。そりゃそうだ。こっちにこんな食べ物ないもんな。
やっぱこのおじいさん、絶対に僕とおんなじやんけ! 僕が思ってたことはやっぱり間違いなかった。
――イゾウ・キサラギは日本からの転生者だ。
女神エストリエが僕のことを1000人目の異世界転生者だって言ってたからもしかしたら僕と同じような転生者がこの世界にいるかもとは思っていたけど、まさか本当に転生者に会えるなんて! うぅ! どんな風に転生してきたか、とか色々と聞きたい。まさか僕みたいに何度も転生を繰り返してるとかはないよな?
まぁ、そんなことはとりあえず置いといて、久々に味わう日本の食事を堪能する。
あぁ! やっぱ日本人には米と味噌汁だよなぁ。味噌汁は赤だしやんけ! あぁ! 最高! 和食最高! でも味噌とかって一体どうしてるんだ? まぁ、キサラギ財閥の力があれば味噌くらいはどうにかなるんかな。
僕は超満足してご飯も味噌汁も3杯おかわりしてしまった。さすがにアナスタシア以外のみんなは初めて食う和食に戸惑ってるみたいだな。おっ!? ロベリアだけはモリモリ食べてるぞ。うんうん、お口に合ったようでなによりだぜ!
はぁ、腹いっぱいだあ。できることなら毎日食べたいな、これ。
うーん、でもイゾウ氏と二人きりで話すいい口実…… なんかないかなぁ。
あっ! そうだ! ロベリアのことで相談したいことがあるから二人きりで話したいって言うか。う~ん、ロベリアを出しに使うのは気が引けるけどぉ、これくらいしか思いつかないや。
そういうわけで僕はイゾウさんに二人きりで話したいことがあるとお願いしたのであった。
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