第30話 もうやめちゃっていいですか?

 はぁ……


 はぁ……


 はぁ……


 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 もう! なんなの! もういや!


「お疲れさまでした。紫くん」


 え? だ、誰?


「本当にお疲れ様でした。疲れたでしょう。今はゆっくり休んでくださいね」


 え? だ、誰?


「わたくしはレミアラと申します。貯まった有給を使い、現在5連休中の女神エストリエに代わり、わたくしが参りました。ちなみにリリムもご一緒しております」


「もぉぉ! ユカリ~ン! なぁんでROSEはずしちゃうのかなぁ? ずぅっとつけとけって言ったじゃぁぁん!」


 あ、はい、すいません。


「今回は残念な形になりましたが、次はきっとうまくいくはずです。その為にわたくしたちが精いっぱいサポートさせていただきますので、どうかご安心くださいませ」


 つ、次か……


「紫くん? 大丈夫ですか? 今はおつらいですよね。えぇ、ゆっくり休んでください。なんならわたくしのことは“ママ”、と呼んでくださっても結構ですので」


 え? マ、マ、ですか?


「えぇ、きっとあなたは愛に飢えているのだと思います。ですのでここではわたくしがあなたのママになりましょう。さぁ、わたくしの胸の中へいらっしゃい」


 この女神様、すんごいんです。もんのすごいナイスバディで、しかもムチムチしてるんです。太ももまであるぴったりしたロングブーツ履いてるんですけど、ブーツに太もものお肉が乗ってるんです。


「ちょいちょいちょい、レミアラせんぱぁい! だぁめですって! おさわり禁止ですって! それにあの子ひいちゃってますよぉ」


 え? あの子? え? 僕のことじゃないよね。え、それじゃ、誰のこと?


「はわわわわわ…… あ、兄上…… は、破廉恥です……」


 はぁ!? え、なんで? なんでお前がここにいんの!?


「あはは、えっとねぇ、なんかねぇ、この子、ユカリンの机にあったROSE触っちゃったみたいでぇ、あたしユカリンだと思って指輪にしちゃったんだよねぇ。そしたらさぁ、この子どうやら素質があったみたいでぇ、なんかぁ、こーなっちゃったみたいな?」


 最期のほう何言ってんのかよくわかんねえよ! あぁぁ! なんかもうどうでもよくなってきたわ!


「兄上、いや、我が眷属よ!やはり其方は闇より出でて混沌を統べる漆黒の支配者だったのだな! はっはっはっはっ! やはり我が魔眼に狂いはなかった!共に歩もう! 世界全てを暗黒で覆いつくす覇道の道を!」


 とりあえずリーリエにはこめかみぐりぐりの刑に処しておいた。


「お前また人の引き出し勝手に開けやがったな! ま、まぁROSEの件は置いておいた僕が悪いんだけど! でもダメでしょ! 人のもの勝手に触っちゃ!」


「ひ、ひいぃぃぃぃぃ!!」


 頭を抱えてうずくまるリーリエは置いといて、今後のことを考えた。

 はぁ、これで僕は転生前も入れて5回死んだ。いい加減もううんざりだ。結局今回も12歳の壁を越えられなかったし、次もし転生しても、どうなるかわからない。なんとなくだが、次も12歳を目前に死ぬ気がする。


「ねぇ、もう僕疲れちゃったんだけど…… どうせ次も12歳を目前に死ぬんでしょ? もういいよ、転生終わりにするわ」


 僕がそういうと、レミアラとリリムは顔面に大量の汗を掻いて、両者顔を何度も見合わせている。なんだ? 僕が転生しないとよほど困ることでもあるのか?


「え、ええと、ゆ、紫くん? き、きっと次は12歳の壁も簡単に越えられます! それに次はきっと世界中を飛び回るような素晴らしい冒険が待っていますよ! えぇ! あなたが待ち望んだファンタジーの世界が!!」


「そ、そ、そだよぉ! 絶対逝っといたほうがいいって! 逝っとかないとユカリン、絶対後悔するってぇ! ね、ねぇ、リーリエちゃんも君の、け、眷属の活躍、み、見たいよねぇ!?」


「え、う、うむ! 我が眷属よ! 話はよく分からんがお主は我が忠実なる僕! 我の世界征服を途中で放棄するなぞ断じて許さんぞ!」


まぁ、リーリエは完全に乗せられてしゃべってるから置いとくとして、この二人は僕が転生をやめると本当に困るみたいだな…… うーん、どうするか……


「えっとさ、本当にこれ、この先がんばったらミッちゃんやミューミュー、エクソダスのみんなにも会えるの?」


「え、えぇ! も、もちろんです! 紫くんなら絶対お会いできます! し、しかも次の転生先は今までとは全く違いますので、12歳の壁もあっさり超えられちゃいますよ!」


「そうそう! うちらもユカリンのこと全力でサポートするしぃ! し、しかもぉ! 今回は可愛い妹ちゃんもいるじゃぁん! これは逝っとかないとぉ!」


 なにがなんでも次に逝かせたいわけね。うーん、逝くにしても少しでもいい条件を引き出さないとな。うーん…… あっ! そうだ!


「じゃあさ、次のガチャさ、確定でいいやつ出してよ。URより上のやつ。全部出せとは言わないからさ。5回ひけるなら3つ出してくれればいいからさ」


 二人の顔がパァッと明るくなった。


「も、も、もちろんです! えぇ! 女神の名において紫くんにお約束いたします。次のガチャはUR以上の高レアを3つは出すようにいたします」


「うんうん! もしかしたらぁ、引いたガチャ全部UR以上でちゃうかもよぉ!? 」


 はぁ、もういいや。ここでやめて、みんなにもう二度と会えないのはつらすぎるからな。絶対みんなに会って、死んじゃった事あやまらないと。


「わかった! 僕逝くよ。次も逝く! そのかわり頼むよ! 助けてよね」


「はい!もちろんです! この女神レミアラが責任を持ってお助けいたします。そして疲れた時にはわたくしの胸でよしよしして差し上げます!」


「ちょ、ちょい待ち! レミアラ先輩! だからぁ、そういうのは禁止だってぇ!」


 え~、この際だからお願いしようと思ったんだけどぉ…… でもリーリエが死んだ目で僕を見てるしなぁ。


「よっしゃ! いっちょやったるでぇ! 次こそは並み居る敵どもを全員ぶっ倒して魔王城に乗り込んで魔王もぶっ倒して、僕が第二の魔王になったるでぇ!」


 そんなこんなで第5回のガチャガチャタイムが始まった。

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