第13話 こんなのお土産じゃねえんだよ!

「はい~!お疲れ様でした~! いやぁ、大変でしたねぇ、紫様!」


 はぁ、また戻ってきてしまった。あぁ、今回はちょっと立ち直れそうにないぞ。

 あそこで一生過ごしたかったのに。ミッちゃん、ミューミュー、ペロン……


「あれれ~? どうしたんですか? えらくテンションが低いようですが? テンションあげていきましょ~!!」


 はぁ、このアホ女神は…… こいつ本当に悪魔なんじゃねえか?


「もう…… お願い、ちょっとそっとしといて。今本当にライフゼロなの……」


「あらあら、可哀そうな紫様、せっかくこの美の女神が、膝枕でよしよししてあげようと思っていたのに…… 残念です」


 え、マジ? い、いや、そんなんじゃ僕の心は動かないぞ。うん。今の僕はハートブレイクなの。で、でもどうしてもやってあげたいっていうのならやぶさかでもないけど。


「いいんですか? 膝枕しなくても」


 くそっ! この悪魔め! 無駄にいい匂いを漂わせやがって! 僕は悪魔の誘惑なんかに負けねえんだから! あ~、でも、くそっ!


「あ、じゃ、じゃあちょっとだけお、お願いしちゃおうかな」


「冗談ですよ、バーカ」


 あぁぁぁぁ!!!! こ んの、クソ悪魔! おめえには人の心ってもんがねえのかよ! おめえの血は何色だっ!!!


「はーい、では次逝ってみよう!」


「マジか、あんた…… マジか……」


「あ! そうでした! 忘れてました! 紫様には、ゲロのお土産を買ってきたんでした! 少々お待ちくださいね!」


 あぁ、そういやゲロに温泉旅行逝ってたんだっけ。いいね、僕が大変な目に遭ってる時にゆっくり温泉旅行なんて。本当うらやましい限りですよ。


「はい! どうぞ! ゲロ温泉でお土産人気ナンバーワンの! クロサギラブストーリーです! どうぞ、お召し上がりください」


 あ、これはこれはご丁寧に、どうも。では遠慮なく、いただきます。


 ――!?


「ゲロ銘菓クロサギラブストーリー24個入り」の箱を開けるとなんと! クロサギラブストーリー2個と柿ピー、時化ったポテチ、さきイカが入っていた!!


「なぁ、なぁ、なぁ! なんだよ、これ。どう見ても食べ残しじゃねぇかよ! 女子会かなんか開いて、みんなで摘まんだやつの残骸じゃねぇかよ!!」


「えぇ、出すとこに出せば、それはそれは価値のある代物です。味わってご賞味くださいませ。こんなお土産中々もらえませんよ、よかったですね、紫様」


 あぁ、こんな仕打ちって! お願い! 代わりの人、戻ってきて! もういや! この悪魔女神、もういやなの!


「あっ! そうだ、もうひとつスペシャルなお土産が! 今回の旅行は、女神~ズの3人で逝ったんですが、ホテルのカラオケルームで私達が歌ってるところを動画で撮影したんです! 今から紫様の傷ついた心を癒していただくべく、上映会を執り行わせていただきますので、しばしお待ちください!」


 そういうと、女神は部屋を出ていき、プロジェクターと音響装置を部屋に運び込んだ。


「さぁ、紫様! 時間はたっぷり2時間55分御座います。美女3人の心揺さぶる歌唱をどうぞごゆるりとご堪能くださいませ!」


 僕はもう、どうリアクションしたらいいのか分からなくなり、口を開け、涎を垂らしながら2時間55分の拷問に耐えたのだった。



    ◇



「ご視聴有難うございました! それでは、引き続きガチャガチャタイムと参りましょう!」


「はぁ、もういいよ、もうなんかどうでもよくなってきたよ。次逝くわ、僕」


「さっすが紫様! 素晴らしい順応力です! え~、今回のガチャですが、前回、代わりのおっさんが好き勝手に搾取君(仮)を改修してくれたので、全てを元に戻すのに、約2億かかりました。先にご了承いただきたく、ご報告いたします」


 はぁぁぁぁ!? だからよぉ! そんな金あるんならその金僕に寄越して現世に戻せっつーの!!


「ただ各方面からシックなブラックのボディはいいが、多少凝ったデザインでもいいのでは? というお声をいただいたので、ボディはブラックを基調としていますが、シャドーストライプのデザインに変更いたしました。どうでしょう? お気に召していただけましたか?」


「今回はガチャ何回引かせてくれんの? 前よりたくさん引かせてよね」


「あらあら、つれない紫様、そんな態度だと今回からガチャ1回にしますよ」


「ごめん! ごめんて! 謝るから!! あぁ! 美しい! 美の女神よ!」


「分かりゃあいいんですよ。あ、紫様、次の転生でなんかやってみたいこととかないんですか? 一応聞いときたいんですけど」


「え~、いきなりそんなん言われてもなぁ。うーん、やっぱ弱いのは嫌だよね。うん、強くてニューゲームしたいよね、あと魔族と戦う! とかもいいよね! あと何と言っても異世界といえば、エルフ! エルフとキャッキャウフフは一度はしてみたいよね」


「はぁ、欲張りクソ紫様。畏まりました。まぁ聞いただけで、私がどうこうできるわけではないんですけど。では今回はガチャ4回! 4回も!! 引かせてあげちゃいます!」


 さらっとひでぇこと言ってんな、この悪魔女神は。まぁ前回の3回ガチャから1回増えてるしな。まぁいいや、我慢しとくか。


「オケ。もういいや、さっさとやっちゃおう」


「畏まりました! それでは再改修を施された“搾取君本店の味(仮)”の、登場です!」


 スモークが炊かれ、華々しく登場する搾取君本店の味(仮)。

 悪魔女神が立っている箇所の真横に設置された仕掛けパネルがせり上がり、登場する仕組みになっている。一体この改修をするのにいくら使ったんだろう。――そのうち紫は考えるのを止めた。


「さぁ、早速ガチャガチャタイム突入です! 4回一気に逝っちゃいます! それっ!!」


 がちゃん、がちゃん、がちゃん、がちゃん――

 ごろごろごろごろ~

 ぽろん、ぽろん、ぽろん、ぽろん――


 頼む! 前回みたいにせっかくみんなを守ったのに、自分だけ死ぬのはもういやなんじゃ! せっかく皆を守り切っても自分が死んだら意味がないんじゃ! 自分も守れる強さが僕はほしいんじゃあ!!


「さぁ、今回も先に全部のスキルランクを見てから、あとで一斉にスキル名を発表していくスタイルで参りたいと思います! なおウルトラレア以上のスキルは、スキルランクとスキル名を同時に発表いたします! 紫様! お覚悟はよろしいでしょうか!」


 よっしゃ! こいや! ここまできたらなるようにしかなんねぇんじゃ!


 ――レア


 うん、まぁいい! ノーマルじゃなきゃいいんじゃ、僕は!


 ――スーパースペシャルレア


 な、なに? これなに? 初めてでたんですけど! いいやつなの、いいやつなのこれ!?


 ――――ピロリロリーン!!!


「おっ! これいいやつだ! 前回もたしか聞いた! でも前回、代わりのお兄さん、季節に合ったBGMに変えるって言ってたけど、前と一緒だな」


「え~、その件ですが、楽曲のレコーディングまで済んでいたんですが、予算の都合上、却下されました。紫様、楽しみにされていたみたいですが、申し訳ございません」


「いや、別に全然楽しみにはしてないけど! てか予算の配分おかしくない!?」


 ――――――ワーニング! ワーニング!


「な、な、なに? 今の? なんかしゃべってたけど!? 他にもBGMあんじゃんかよ!」


「ゆ、ゆ、ゆ、紫様! おめでとうございます! 今のはウルトラレアよりもレアなランクのスキルが出た時にしかならないアラームですよ、ちなみに元から設定されていた音源なので、悪しからず」


「へ、へぇ、そうなんだ……」


 い、いや、でもよっしゃ! これで! これで今回こそ勝つる!


「さぁ、それでは続けてスキル名の発表と参りましょう! まず最初に引いたガチャ、え~、レアランクのスキルですね、スキル名は~!!!」


 ――打突


 マ、マジか、一回休んどいて、またお前かーい!! くっそ! 油断してた! もう来ないと油断してた!! なんつー高等テクを駆使してくるんだよ、このガチャは。こりゃ一本取られた!


「続きまして、スーパースペシャルレアのスキル名の、発表です!!」


 ――エルフレーダー


 は? なにこれ? え、え、これってなに? もしかしてエルフの居場所が分かるってこと? おいおい、運営さん散々僕のお願いは聞けれませんが~、みたいなこと言っといて、やっぱ分かってんじゃん! やるぅ!


「よかったですね、アホ紫様! では続きまして~! さぁ、一体どんな高ランクのスキルだったんでしょう!? まずスキルランクから!」


 なになに!? 頼む! ウルトラレア以上来い!


「ウルトラレアです!」


 あ~、やっぱあのBGMはウルトラレア専用楽曲なのか~。まぁいい! 全然いいです!


「そしてスキル名は~! 剣の極意レベル1です! や、やりましたね、紫様! これはすごくいいスキルですよ!」


 よ、よ、よ、よっしゃあ! 勝った! これ絶対チートレベルの奴じゃん! とうとう僕無双しちゃうんだ! あ~、長かったなぁ、本当に……


「そして最後に~! ワーニングアラームがなった最後のガチャ! まずスキルランクは~! ハイパーウルトラレア!!! 来たっ! 来ました!! これはすごいです! 上から3番目にすごいやつ!」


 あ~、なんか時代が僕に追いついてきた…… もう転生したらすぐにでも魔王城行って、魔王ボコって、魔王城奪って、第2の魔王にでもなっちゃおうかな。


 そして大注目のスキル名は~――――


 ――――悪魔の指輪、です!!


「え、あ、悪魔の? え、なんか名前が物騒じゃないですか? え、なんか呪いのアイテムっぽい気がするんですけど……」


「おっめでとうございますっ!! めちゃくちゃいいやつ来ちゃいましたね! もう完全に紫様に追い風が吹いております! これで次回の転生は無双間違いなし!」


 マジでか! よしっ! まぁ名前がちょっとアレなだけで、すんげーアイテムなんだよ、きっと!


「ではさっさと逝っちゃってほしいんですけど、4回目なんで、特別になにか質問にひとつだけお答えしますけど、なにかあります?」


 なんか普通にひでえ言われようなんだけど、そうだなあ……

 ひとつだけ聞きたいこと……

 うーん、やっぱこれしかないな。よし!


「僕が転生してる世界っておんなじ異世界なの? ミッちゃんとミューミューとペロンにまた会うことってできるの? あとさ、この転生ってもしかしてだけど、時間が遡ってない? 次の転生も前回転生開始した時点からのスタートってことでいいの?」


 質問はやっぱこれしかない。みんなと過ごした時間がないことになってたとしても、みんなともう一度会って、死んじゃったことを謝りたい!!


「お~、アホな紫様にしては、いい質問です。というか、あなたふたつ質問してますよね? さすがアホな紫様、まぁよろしい、この優しくて素敵な女神様が特別にお答えしましょう。紫様が転生している世界は……」


 ――同じ世界です。あなたのご友人方に会える可能性はゼロではありません


 ――紫様のおっしゃる通り転生開始時点は毎回巻き戻っております。紫様がいらした世界の言葉で言うところの、タイムリープだと思っていただいて構いません。



 よっし! あー!! めっちゃやる気がでてきた!! もうこれで勝つる!!!

 しかもやっぱり時間は巻き戻ってたのか。ということはミッちゃんともまた同い年ってことか。よしっ!


「わかった。ありがと、もうその言葉で救われた。僕次でもきっと頑張れるわ」


「それはそれはよかったです~。では早速第4回目の異世界転生、逝っちゃいましょう!」


 よっしゃ! 悪魔だとか言ってすんませんでした! 女神様! では逝って参ります!!



    ◇



「会える可能性はありますけど、会ってどうなるかまでは、わからないですけどね」







※2月25日加筆修正しました




     ◇ ◇ ◇ ◇


 ※当作品を見つけていただき誠にありがとうございます。

 もし当作品を面白っ! 続きはよっ! と思っていただけましたら♡で応援、レビュー、ブクマ、ひとつでも構いませんので、★をぽちっと、などなどしていただけますと作者の今後の執筆意欲につながります。

 →https://kakuyomu.jp/works/16817330668100636316#reviews

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る