第11話 こっちのおばあちゃん

 ――お手伝い2日目


 洗濯ものがあまりにも多すぎて一日では終わらなかった。この前も川で大量に洗っていたと思うんだが、この人はおんなじような布を一体何枚持ってるんだ。ちなみに全部おんなじだ。

 昨日だけで10枚洗って干した。一枚がデカいから洗うのも大変だし、全然乾かない。そして大量にある下着。昔だったらお、おぱんつ、ぐへへへ、とやっていたところだが、こんな見た目をしてなんせ102歳だ。人生の大先輩だ。ぐへへする気にもならない。下着は多分20枚くらいはあった。なんなんだ、この人。きれい好きなのに不精って、おかしくねぇか?

 そして薪拾い、これは家でもやってるから慣れたものだ。拾っている途中でミッちゃんが来て、一緒に手伝ってくれた。ついでに木の実とキノコ、あとは野草なんかも採って、ミューミューに持って行った。


 そしてなにより楽しいのが、魔獣(犬)のお世話だ! これはどうみてもタダの犬だ! ポメラニアンだ! あぁ! 可愛い。ベロを出して、はぁはぁしている。鳴き声はなんか変だが、それ以外は完全に愛玩犬。あぁ、たまらねぇぜ。君たちうちの子になんない?

 そうこうしているうちにお手伝い2日目を過ぎ、3日目、もうほとんどお手伝いはやることがなくなり、最後にミューミューの肩もみでもするか、とミューミューの待つ部屋へ。するとまだ名前のない魔獣(犬)が僕の頭の上に飛び乗ってきた! きゃ、きゃわわっ! で、でも重っ!! く、首が折れる!! だがあまりにも愛らしいのでそのままミューミューの部屋へ行く。


「ミューミュー、全部終わったよー。肩揉むよー」


「おぉ、すまんの。そんじゃ頼む。お前バカのくせに肩もみだけは上手いのう。マッサージ師にでもなりゃええのに。魔法なんてやめとけよ、このバカ坊主!」


 ミューミューとはかなり仲良くなったが、相変わらず口が悪い。ていうかミッちゃんにはすごい優しい口調なんだけど僕にだけ口が悪い。まぁドMなんで無問題なんだが。


 頭の上で魔獣(犬)が俺のおでこをペロペロ舐めてくる。あぁ、くせえ。でもかわええ。それを見てミューミューが僕に言った。


「えらいそいつに懐かれとるのお。お前そいつを家に連れてっていいぞ。そいつペロとペロロの子どもじゃからな。大事に飼えよ。あ、名前もお前がつけてやっていいぞ。わしが付けたみたいなかっちょいい名前をつけてやるんじゃぞ! お前はバカだから名づけのセンスもなさそうじゃがな、わっはっは!」


 酷い言われようです…… でも! マジで!? いいの? やった、実は僕、犬とか飼ったことなかったから一度飼ってみたかったんだよね! いや、でもこの子正確には魔獣(犬)だけど、まぁいいや、だってこんなに可愛いんだもの!


 僕は上機嫌になってミューミューの肩を2時間くらい揉み続けた。ミューミューは肩を揉まれながら寝てしまった。壁で頭を支えながら、肩を揉まれ続けながら器用に寝ている。なんか途中でやめるのも可哀そうなので、僕はもう1時間揉み続けたが、さすがに手が死んだので、なんとか横にして寝かせてあげた。

 

 なんか本当におばあちゃんみたいだ。ミューミューはこっちのおばあちゃんだ。


 はぁ、本当のばあちゃんにもこうやって肩もみとかしてあげればよかった。

少ししてミッちゃんが来たので、そろそろ家に帰ることに決めた。可哀そうだがミューミューを起こし、帰ることを伝える。寝起きは機嫌が悪いので、めちゃくちゃ怒られたが、僕が帰る間際にミューミューが……


「バカ坊主! いつでも来いよ!」


 あれ?…… なぜだか涙が溢れてきた。なんぞこれ。意味わかんねえや。僕はミューミューのほうを振り向かずに『わかった! 毎日来るよ!』と答えた。

ミューミューは毎日は来るな! バカ坊主! と笑いながら言っていた。






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