第4話 失意のニ回目ガチャガチャタイム
途方もなく長くて深い眠りから目が覚める。瞼が引っ付いているのか、なかなか開かない。だけど光をかすかに感じる。
ゆっくり時間を掛けて、なんとかして瞼をこじ開ける、ま、眩しい。
「おッ疲れ様でした~!」
「おぉい! なんなんじゃあれは!!」
僕は普段あんまり怒りとか苛立ちとかの負の感情を外に出さないように心掛けてるんだが、さすがに今回はカチンときてしまった。
「なんなんじゃ! あのクソスキルは!」
「いや、だってノーマルランクだったじゃないですか」
「いや、ノーマルでもスキルレベルとかあがったりするんだろっ!」
「いや、ノーマルだからスキルレベルはあがりませんよ」
ガーン
(うそん。僕の数年間の努力はなんだったの……)
「さぁ、次逝ってみましょう!」
「展開はやっ! あのさ、なんか余韻とかないわけ? パパンとママンとの悲しいお別れをしてきたわけよ、僕ちゃん。なんかないの? 慰めの言葉とか。次は確定でランク10のスキルでますから期待しててくださいね、チュッ、とか」
「さぁ、次逝ってみましょう!」
マジか~。
くそっ、これ次にいいやつ引かないと、また何年も無駄な時間過ごさないといけない感じなんじゃないの? いや、パパンとママンと過ごした11年は無駄だとは思わないけどさぁ。
「あ、あのさ、ひとつ聞いてもよろしい?」
「はい~!」
「えっとさ、これってさ、スキルってさ、例えば今まで使ってた打突とかってさ、次に持ってけるの?(まぁ打突はあんまりいらんが……)」
「持って――――――」
ごくり…………
「行け――――」
引っ張るね。
「行け――――」
もういいから!
「――――ませ~ん!」
やっぱそうか~! そんな気してた~!!
「そんなの持っていけるわけないじゃないですか~。そんなのチートですよ、チ・イ・ト」
「えぇ~、でも他にもチートレベルのスキルとかあるんでしょ~。いいじゃ~ん、次に持ち越したって」
「さぁ、次逝ってみよう!」
えらいガチャ引かせたがるね。
「あのさ――――」
「なに? 早く引いてくんない?」
(こわっ! なにそれ! さっきと態度全然違うじゃん! おじさんそういう若くて怖い女の子苦手なんだけどなぁ……)
「あの、えっと、ですねぇ、これって僕がガチャ引くと女神の皆さんにぃ、なんかボーナスとかあったりするんですかねぇ、?」
僕は見逃さなかった! この質問をし終わった時、女神様の目が泳いでいたことに!
かなりの距離を泳いでいた。東京湾から伊豆大島まで遠泳するくらいの距離、目が泳いでた。
紫「ねぇ、どうなの? 答えがね、聞きたいんだけれど?」
女神「え、も、もらって、ないっすよ……」
紫「ほんとに?」
女神「ほ、ほんと、っすよ」
紫「へ~ぇ、そうなんだ。じゃあさ、もし嘘ついてたら……」
女神「ご、ごくり……」
紫「ぐ、ぐ、ぐへへへへへ」
女神「 (き、きもっ!!) 」
紫「女神様を~、一緒に~、次の転生先に~、連れてっちゃう~みたいな~、こ〇すばみたいなことはしないけど~」
女神「き、きもっっ!!!」
紫「声に出てる! 声に出てる!」
紫「じゃあさ~、ガチャ2回ひかせてよ~」
女神「あ~、そんなことでしたら…… いいでしょう!」
やっぱりボーナスもらってたんだ……
でもよしっ! これでスキルが2個になるってことだよな。結果オーライ!
「では時間も押し迫ってきたことですし、早速ガチャっていきましょう! さぁ、なんと今回からは2連ガチャです! 大チャンスですねぇ、ランク10引いちゃうんじゃないですか!?」
どうしても早くガチャ引かせたいみたいね…… よっしゃ! その挑戦受けてたってやらぁ!
「おらっ! 来い! 最高ランク!!」
がちゃん、がちゃん――
ごろごろごろごろごろ~
ぽろん、ぽろん――――
頼む! 頼む! ランク10なんて贅沢はこの際言いません! せめて! せめてランク8、いや7でいいんで! お願いします、神様、仏様、女神様~!!
――ノーマル
「マジ? おかしくない? このガチャ。高ランクのガチャ入ってないんじゃない?」
「お~っと!ノーマルきたー!! スキル名は~」
何が来る? とりあえず炎系魔法とか、そういうかっこいいやつでいい。ちょっとは異世界転生らしいマジカルチックなやつちょうだい!
「打突です!」
!?
「おい! ちょっと待て!! 一回目といっしょじゃねーか! おかしいだろこれ!」
「え、そんなこと言われましても…… 私が決めてるわけではないですし、確率ですので」
はぁ~、これは予想外だよ。僕スマホとか持ってなかったからこういうガチャって引いたことなかったんだけど、こんなもんなのか?
「まだあとひとつ残ってるじゃないですか。諦めたらそこで試合終了、ですよ!」
「女神先生…… 高ランクが引きたいです」
「おっと! 今度はなんと! ノーマルではありません!」
マジ? とうとう来ちゃった? 打突は役に立たねぇけど、もう一個のスキルで無双、しちゃいますか。
「レアです!」
レア? レアっていいやつ? レアなんだからいいやつなんだよな。よしっ! これで勝つる!
「打突です!」
――――えっ?
「え? ちょっと待って。ストップストップ。一旦集まろうか」
「? どうしました?」
「どーしたもこーしたもねーよ! おんなじじゃねーかよ! 最初のやつ、打突! 二回目のやつ、打突!! おんなじ! お・ん・な・じ!!」
「あ~。あはは! なるほど。なるほど」
なんなの、この女神。ほんとに女神なの? 悪魔かなんかなんじゃねぇの?
「紫様が勘違いされるのも無理はありませんね。ご説明いたします。最初に引かれたスキルはノーマルスキルの“打突”です。二回目に引かれたスキルは“レア”の打突でございます」
「どゆこと?」
「え~、おバカさんの紫様には少し難しかったかもしれませんね。要約いたしますと、同じ名前のスキルでもレア度が高ければ違うスキル効果が得られるのです。どーです? お分かりいただけましたか? おバカさん」
え、めっちゃ僕ディスられてない? おバカさんって二回も言ったよ。まぁ美人に罵られるのはまぁご褒美といっちゃあご褒美なんですが。
「きもっ」
お顔にでてましたかね? でもほんとこの女神当たりがきついね、だがそれがいい!
「では異世界転生第二回目張り切って逝っちゃいましょ~!
え、スキル説明終わり? 違うってことしか教えてもらってないんだけど……
ほら、二回目なんだしさ、もうちょっと詳細なスキルの説明とかしてくれてもバチ当たんないんじゃないかな~。ってうお~!!!!
そんなこんなで有無を言わさず二回目の異世界転生がスタートしたのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
※当拙作をご覧いただき誠にありがとうございます。
もし当作品を面白い!続きはよっと思っていただけましたら♡で応援、レビュー、ブクマ、ひとつでも構いませんので、★をぽちっと、などなどしていただけますと作者の今後の執筆意欲につながります。
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