この世で最も強い力 愛
仲仁へび(旧:離久)
第1話
小さな村。
何の変哲もない村に。
とある一人の少女がいた。
少女は人から愛される者だった。
なぜそんな力を秘めているのかは分からない。
神に愛された加護なのか、もしくは誰かの呪いなのか。
どちらにせよ、その少女にとっては関係ない事だっただろう。
せっかくこんな便利な力があるんだから、とことん利用しましょう。
そう思った少女は、力を使って、次々と男を篭絡していった。
男達は腑抜けになり、仕事ともせず、愛ばかりをささやくようになった。
パートナーのいた男もいたが、みな愛の力に目がくらんで離婚してしまった。
当然、女たちは怒り狂う。
自らの男達を惑わし、篭絡した女を、魔女、悪魔とののしり。自分達が住んでいる地域から追い出そうとした。
しかし、そんな行動に出た女たちを男達が排除した。
その中には長年つれそった夫婦もいたが、男達は容赦しなかった。
武器を手にした男達の目には、狂気が宿っていた。
と、生き延びた女は後に語っている。
血だまりのなか、倒れ伏した女たちを見つめて。
男に囲まれた少女は、嘲り笑う。
何度も何度も、血だまりを作り上げては、愚かだと嘲笑する。
愛こそがすべて。
この世で、愛が一番強い力。
そんな愛を味方につけた私に、思い通りにならないものはない。
と。
「歯向かうだけ無駄なのに。新しい愛を探せば、自分の愛が通じる相応の相手を探せば、死ぬ事もなかったでしょうに」
やがて少女は、様々な地方の貴族や領主を篭絡して言って、国の王ですら愛の力でひれ伏させた。
愛に夢中になった王は、国の事を一切考えなくなったので、民達の生活は荒れていった。
暴動がおこり、王や少女に剣を向ける者達もいたが。
愛に狂った男達の手によって、それは鎮められた。
しかし、それらは長くは続かない。
狂った愛の楽園は、壊される。
少女の凶行はやがて、愛を知らない勇者に討伐されて終わりを告げた。
何千・何万もの屍の上で少女は、愛が通じない相手によって倒れたのだった。
この世で最も強い力 愛 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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