第9話

僕はすでに名前で呼ばれずにナンバーで呼ばれていた。

共に入っている仲間は中々話が合わず、ひっそりとした生活は続く。

君の退院日はいつになるんだろう、本当にまた会えるんだろうか。

ぐるぐると考えるのは全部君のことで、自嘲してしまう。

サイバー犯罪は大罪だ。中には警察に腕を買われて専属になるやつもいるらしい。

そうすれば、僕は外に出れる。

だが、自分の犯罪テクニックは貴重なサンプルになり得るのだろうか。

僕レベルはごろごろ居るんじゃないか。

ああ、でももしお抱え犯罪者になったら、そうしたら今度は良きことの為にこの腕を使えるかもしれない。

ニートにさせた企業に報復という手段でなはなく、似たようなことをしたい相手の出鼻を挫いてやるのはとても楽しそうだ。

僕のパソテクニックは我流だから、珍しいのかも知れない。

外に出れたら、また君に会いたい。

いつも毎日何をしているだろうかと、元気にしてるだろうか、君の世界は汚されてないだろうかと心配になる。



季節は巡り、ここに来てから二回目の季節が訪れる時。

ある日、久しぶりに名前で呼ばれた。

陸圸俊雄りくやまただお、面会だ。こっちにこい」

ああ、君が来たんだと理解した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る