第3話 巨人族と私達
巨人族居住区にある大学の研究者にコンタクトを取る日がやってきた。
私は巨人族と話したことがない。
未だかつてない緊張に襲われていた。
X准教授は目を背けながら、言った。
「言語翻訳機があるから、緊張してても伝わりませんよ。良かったですね。」
言語翻訳機は、キーボードから文字を入力して翻訳する機械だ。
「翻訳機ですから、大体の事は翻訳してくれます。しかし、翻訳しきれない部分や、相手が悪意を持っていた場合読み取れません。そこだけは、注意が必要ですね。」
X准教授は、さらりと恐ろしい事を言った。
私はさっそく文字を打ち始めた。
『はじめまして。太陽系第三惑星地球のYです。』
しばらくすると、返事を受信した。
『こちらこそ、はじめまして。巨人族居住区のKです。』
『本日は、お忙しい中ありがとうございます。さっそくなのですが、何故巨人族は星をお金にしたいと思った経緯をお聞きしたいです。』
Y教授は、手に汗を握った。
『私達巨人族のお金は、現在約3割近くが偽物です。技術的に手を尽くしても、お金を作るコストが上がっていき、社会問題となっています。偽物の通貨をはじくのはとても時間がかかります。そこで新しい通貨を作りたいと立ち上がったのが、このプロジェクトです。』
『なるほど、偽札を作る機械さえなければ解決するのではないですか?』
『機械の蓋をいちいち開けたり、プログラムの中身をチェックするのは難しいです。』
『では、犯罪組織を捕まえればいいのではないですか?』
『とかげのしっぽきり状態です。なかなかうまくいかないと聞きました。』
私は、別の方向から質問をしてみる事にした。
『お金を星に加工する技術については、算段があるのですか?』
『はい、星をワープさせ加工工場へ持っていき、星のデータをとっておき、返却時になるべく復元してお返しする予定です。』
『相手は球体です。どのように加工するのですか?』
『簡単な事です。削りたいところだけワープ加工すれば、いいのです。』
『ワープ加工?つまり、部分的にワープさせて加工するという事ですか?』
『そうです。巨人族の技術では可能です。』
私は、驚いて少し手が止まった。
『私達地球側にメリットはあるのですか?』
『手数料を渡すのは、当然だと思っております。』
引っかかる言い方だと、私は思った。
しかし、手を止めるわけにはいかなかった。
『お金以外にメリットはないという事ですか?』
「Y教授、ちょっと言い方がまずいかもしれません。」
X准教授は、キーボードからY教授を離した。
結局、ここで交信をやめる事になってしまった。
X准教授が、この後のテキストを打ってなんとかしてくれた。
X准教授は、後日私の研究室に会いに来た。
「これ以上の情報収集は難しいかもしれません。」
私は、決断を迫られていた。
結局決め手になる情報はなかった。
結局私は、宇宙金融学科に居座る事にした。
法案を通さないために、内部から活動をしようと思ったのだ。
案外、同じ考えの持ち主はいた。
しかし、手も足も出ず、政治家が法案を推し進めてしまった。
政治家は、貰った手数料でベーシックインカムをやると言った。
そして、それは実行された。
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