第2話 X准教授と私

学長の電話から次の日。

私は、内容を整理し、戦う準備をしていた。

太陽系以外の固形の惑星をワープさせ、巨人族居住地アウトサイドに移動し、加工させ、お金として使用する案が浮上している。

それが今まで得た情報だった。


そして、それに反対するためには仲間が必要と考えた。

私は、X准教授を研究室に呼び出した。

X准教授は、同じ宇宙工学科の先生だった。

「どうぞ座ってください。」

「どうも。」

X准教授は、研究室の椅子に腰を掛けた。


「今度から宇宙金融学科になるらしいんです。」

「ニュースは拝見しました。」

X准教授は、頷いた。

「私は、宇宙をお金にするのに反対です。」

「では、失業か、宇宙金融学科かのどちらかというわけですね。」

私は一瞬フリーズした。

「・・現在私は、43歳です。まさか失業になるかもしれないなんて・・」

私は、息を吐いた。

「しかし、大学生を就職させてた立場です。企業や研究所の繋がりがないわけではないでしょう。大変なのはお察ししますがね。」

「あなたは、宇宙金融学科に在籍するつもりなのですか?」

「ええ。」

即答だった。

「宇宙が侵略よりひどい事になりそうなんです。協力してくれるという気持ちはないですか?」

「僕は、戦争を回避したい。」

「戦争を回避するためなら、惑星を捨ててもいいと?」

「その通りです。」

「今回の目的が地球の侵略だった場合、何の抵抗もなく侵略を受け入れることになりますよ。」

X准教授は、黙った。

私は、何とも言えないこの気持ちをうまく絞り出そうとした。

「それに宇宙の魅力は、とても語りつくせません。星の研究ができなくなるのは、考えられません。」


「僕の意見を言わせてください。Y教授の気持ちはお察ししますが、宇宙の美しさとは何かという哲学をする気はありません。ヴィトゲンシュタインの言うように、『語りえぬものは、沈黙しなければならない。』でなければ、僕から協力する気はないです。」

X准教授は私よりも冷静に事を見ていた。

「分かりました。とりあえず、就職については置いておきましょう。正直今の情報では判断できないと思います。」

「同感です。」

「情報収集のために協力しあうのはいかがですか?」

「・・いいでしょう。」

「そもそも、何故巨人族は惑星を貸してほしがってるか、聞く必要があります。」

X准教授は、立ち上がった。

「発案者の巨人族にコンタクトを取る必要がありますね。僕は巨人族と研究を行ってたので、任せてください。」

そう言うと、X准教授は席をはずした。

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