星の概念が崩れたら

葉月煉瓦

第1話 学長と私


西暦2030年、ワープ装置の開発に成功した。

西暦2040年、ワープ装置を駆使した結果、宇宙の外側に巨人のような生命体がいる事が判明した。

そして、巨人族に対して人々の興味が薄れつつあった西暦3000年。

巨人族から声明があった。

「太陽系以外の固形の惑星をお金として貸してほしい。」


西暦3000年1月。私は、喫茶店でコーヒーを飲む手を休め、ニュースを見ていた。


『惑星金銭化法案 巨人族居住区アウトサイドより提案』


星をお金にする?

一体どういう意味だろう?


アナウンサーは次のように説明した。

『巨人族にとっておおよその惑星は手のひらサイズの大きさをしています。惑星を巨人族居住区にワープさせ、多少の加工を施し、お金として使用します。』


私は唖然とした。

呆然としてると、電話がかかってきた。

スマホを取り出し、通話開始ボタンを押した。


「もしもし。Y教授ですか?」

「はい、そうです。」

学長の声と立体映像が出てきた。

大抵いつも学長の電話はろくでもない。

「ニュースを見ましたか?」

「はい。惑星をお金にするとか・・」


「なら、話は早いですね。太陽系以外の惑星は巨人族のお金として使用するため、世界中の研究は中止してもらう事となるでしょう。」

私は、その言葉の意味を即座に理解した。

「とても信じられません。私達は、何百年と研究してきたんです。」

「いや、何百年もたったからです。研究材料なんてそんなに残ってないでしょう。」

実際、世界中の研究は停滞気味なのは事実だった。

「しかし、惑星を貸しだす事は危険です。かけがえのない財産をめぐって、戦争をしないと言えないではないですか。」

「安全第一ですか、工学科らしい考えですね。しかし、断っても戦争を回避できるとは限らないですよ。」

「何ですって!」

「あくまで、可能性の話です。」


「私はお役御免なのですか。」

「いいえ、惑星をお金にする労働が必要です。そこで、宇宙金融学科です。」

「宇宙金融学科?」

「そうです、現在の宇宙工学科を宇宙金融学科に変更します。」

私は、顔を真っ赤にして怒ってるのが分かった。

「惑星を加工しろと言うのですか。」

「その通りです。お金というマークがほしいのです。」

「それは、難しいでしょうね。基本の工作機械、3つご存知ですか?」

「いいえ。」

「旋盤、フライス盤、ボール盤。」

「それで?」


「旋盤は円柱の物体を回転しながら、刃をあてる事で加工します。」

学長は顎に手を置いた。


「フライス盤は刃を回転させ、角材を動かして加工します。」

学長は頷いた。


「ボール盤は穴を開ける機械です。刃を回転させ穴を開けます。」

「つまり…?」

「球面の加工は難しいと言うことです。第一、それほど大きい加工機は見たことないです。ブルドーザーを使ってもどれだけかかるか。寸法も測れるかも怪しい。」

「なるほど。」

学長は口元を上げて、笑っていた。

「参考になりました。ではまた、何かあればご連絡致します。」

「失礼します。」

私は、電話をきった。

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