外に出る方法
「……う~ん」
「どうしたんだ?」
「いや俺って……うん?」
アリアさんのこと、そして彼女との間に起きた謎の現象について色々と考えていた時だ。
背後から聞き覚えのある声が聞こえ、その声の主を思い浮かべてまさかそんなわけがと頭を振る。
「……………」
ゆっくりと背後を振り向くと、そこに居たのはライザ様だった。
やっぱりこの人だったかと即座に姿勢を正したが、更に後ろにフィリア様の姿もあって……あれ、俺って何か夢を見てたりする?
「そう畏まらなくて良い。全く、君を含め家族を除いた他の者はどうしてこうも畏まるんだろうな?」
そりゃあなたが王女様だからでしょうよ……とはいえ、他所の貴族というか王族に比べたら本当に民に寄り添うというか、優しい人たちだからこそこうして俺なんかにも声を掛けてくれるんだろう。
「フィリア、彼が少し話をしたローラン君……ブレス家の次男だ」
「存じておりますよ。というより、城に居る時点で全ての者を把握するのは当然では?」
「むっ? 私は把握していなかったが」
「大丈夫です。お姉さまが抜けているだけです」
フィリア様の物言いにライザ様の額に青筋が浮かんだ。
もしかして喧嘩勃発かと恐れたものの、フィリア様が早々に頭を下げて退散して行ったので、残されたのは怒りの行き場を失ったライザ様だけである。
「全くあの妹め……おっと、すまない見苦しい姿を見せたな」
「いえ、その点は……大丈夫です」
まあでも、こんな顔を見たことはなかったから新鮮だった。
離れていくフィリア様が一人で良いのかと不安にはなったが、すぐに護衛騎士が傍に付いたので安心だ。
「ブレス家の次男であり、あの二人の息子である君が何故……というのはどうでも良いことか。ならば私が伝える言葉は一つ――ありがとうローラン君、警備の仕事大変大義である」
「……はい!」
真面目のオンとオフが激しい人だな……。
しかし、やっぱり家の事情とかは気になるんだろうなぁ……本来なら兵士の仕事をやる貴族はそうそう居ない。
よっぽど資金繰りに悩んでる貴族ならばあるだろうが……少なくともうちのように栄華を極めているからこそ俺の生き方はおかしなことだらけだろうし。
「その……色々ありまして。俺は家だとその……」
「まあ、生き方は人それぞれだ。確かに能力も大事だろうが、それ以上にその人たらしめる気質の方が私は大事だと考えている。あのワイバーンの火球から子供を守ろうとした君は立派だった」
「……………」
「ははっ、照れているのか」
照れているというよりは驚いている方が正しいんですが……。
こうしてライザ様と会話が続くことも中々にあり得ない光景だが、ライザ様はすぐに仕事だと言って離れて行ったので、俺としても周りから異様なほど見つめられなくて済んでホッとする。
「……とはいえ」
しかしながら、こうして一人になると考えてしまうのはアリアさんのことばかりだ。
「お待たせローラン!」
「お、来たか」
その後、ルークと共に兵舎まで戻ろうとしたが……そこで俺はこんな話を聞いた。
「そういや今日も魔法の盾がおかしくなかったか?」
「お前も見たのか……あれ、本当に何だったんだろうな」
「どうした?」
「……いや」
一応聞いておこうと思い、話していた騎士様たちに近付いた。
初めて見た顔だったが温厚な騎士様たちだったので、特に濁したりすることなく教えてくれた。
俺が聞いたのは魔法の盾がおかしくなった時間帯……それはちょうどアリアさんが外に出た時間帯だったようだ。
「……………」
「なあ、お前最近何かと考え事多くないか?」
……色々考えちまうぜこいつは。
アリアさんはとにかく外に出られない……しかし俺と手を繋いでいれば何故か外に出ることが出来て、外で手を離したら彼女は元の部屋へと戻されてしまう。
(そして外に出てしまった場合、あの結界を維持出来なくなる……?)
この仮説が正しい場合……本当にアリアさんは外に出られない?
俺たちを守ってくれるこの結界はアリアさんにとって牢獄……いや、本人がそう思っていないのだから牢獄も何もないけれど……まあまだ判断するには早いよな。
「……………」
俺は何も言わず空を見上げる。
いつもと変わらない様子で王国全体を包み込むアリアさんの結界、もしもこれが壊れることがあったなら……アリアさんは外に出られるのかな?
そんな物騒なことを考え、俺はダメだダメだと頭を振る。
「でも……あの外を見たアリアさんの嬉しそうな顔、部屋に戻ろうと言った残念そうな顔……俺に怒られながらも心残りがあったような顔……こんなん忘れられねえよ」
どうにかアリアさんにもっと外の世界を見せてあげられる方法、それがないものかとしばらく考え……当然ながら、その答えはどれだけ考えても出てこなかった。
「外の世界……綺麗だったわね。もしもローラン君と一緒に外の世界を歩けたなら……きっと楽しそうね――そうすれば何があっても、どんなことがあっても彼の傍に居られるのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます