〜第六話〜「岩を裂く狼」
亥水と戦闘する湊人。
亥水の力では不可能だと思っていた「回避」を使われ、苦戦している。
「回避か……厄介だな、本当に。」
「びっくりしたかな?十二支隊のメンバー参加に応募しに来たやつも同じこと言ってたよ。」
「フレイか……。」
「どうしたの?来ないの?」
湊人は亥水に煽られ、少しイラッとした。
そのまま怒りに身を任せ、突っ込んでしまう。
「来てやるよ!」
「バカね、
湊人の足元が爆発する。
「っだぁぁっ!」
後ろに少し戻されながら倒れる。
「そうだった……、忘れてた……。」
「さっきより弱くなったんじゃない?」
「うるせぇな。」
今度はしっかりと意識しながら亥水に近づく。
「同じことよ、
「今だ!」
湊人は力を使われる前にジャンプする。
「やるね、ちょっとした弱点を見つけたか。」
「このまま!」
刀を背中にしまい、右腕を後ろに持っていき、力をためる。
「
湊人はフレイに放ったあの攻撃をした。
「同じ様にするだけよ。
亥水は攻撃を軽々と避けた。
はずだったが…。
ブシャッ
「は?」
亥水が痛みを感じるのには時間がかかった。
何故なら攻撃をかすったなど、思ってもいなかったからだ。
しかも、かすっただけならこんな音はしない。
音のする方に目を動かす。 亥水は目を見開き、膝を付いた。
「っ!あ゙っ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!」
突然襲ってくる痛みに悶絶する。
「湊人……お前は今……何をしたんだ?」
ゆっくりと湊人の方を向き、
「何って、力をためてパンチを放った。たったのそれだけだ。」
「だとしても!少しかすった程度で!私の……私の左腕が跡形も無く吹き飛ぶのかよ!」
音の正体は出血。
だが、その出血は左腕を無くした事による肩辺りからの出血。
亥水が力を使用するための腕を半分消されてしまったのだ。
「後一本……、俺にも勝機があるみたいだな。」
「発動条件が腕を使用する事を見抜かれてたか…。」
「最初は疑ったよ、こんな簡単でいいのかなってな。」
湊人は亥水にゆっくり近づく。
「終わりだ、名前は……。」
「亥水、
亥水は負けを認める。
「このまま生かしてるとまた何をやるかわからねぇ。すまねぇが、死んでもらう。」
「私はここまでなのね。」
「ああ、十二支隊に入っちまった事を悔やむんだな。」
「そうするよ。」
湊人は亥水の心臓を目掛け刀を刺す。
亥水は死んだ。
亥水の死と同時にポケットから宝石の様な物が落ちる。
「エンブレムか……、確か言語だっけな。」
湊人はエンブレムを拾い、ポケットにしまう。
すると、四角い端末の様な物が反対側のポケットで動く。
「なんだこれ。」
湊人はその端末を持つ。
[やっほ~。亥水ちゃんを倒せたみたいだね。]
「あんたは、
[その話は置いといて、彼女のエンブレムは『言語のエンブレム』、今の世界にない言語を解放するエンブレムね。]
「今の言語と英語以外に何があるんだ?」
[あとで教えてあげる。いったんお迎えに行くから目を瞑ってて。]
「わかった。」
卯との通信が切れる。
湊人は言われた通り目を瞑って待っていた。
「いいよ。」
卯の声と共に目を開けた。
そこは卯の隠れ家だった。
「いつの間に……、いったいどうやって。」
「秘密だよ。」
卯はニコッと笑いながら本棚の方へ向かう。
「秘密って、あんたが一番怖ぇよ。」
湊人はボソッと呟いた。
「はい、これ読んで。」
湊人はある本を手渡された。
「そこの椅子に座って読んで。」
ふかふかの椅子に座る。
「なんだこれ、『言語BOOK』?」
「さっき言ってたでしょ?今の所その本には今使ってる言葉と英語しかないけど、湊人君が回収したエンブレムを解放すれば、たくさんの言語が戻ってくるはずだ。」
「今回のは解放しても大丈夫なんだな?」
「うん。」
湊人は再びエンブレムを持ち、
「解放」
その言葉と共に、エンブレムが光りだした。
〈久しぶりだね、エンブレムの解放者よ。〉
「やあ、次は言語だ。」
〈亥水は大変だっただろ?〉
「ああ、この先もあんな奴らが11人もいるってのか?」
〈まあ、十二支隊は後11人だね。〉
「なんだよ、その言い方だと、十二支隊以外に別の敵がいるみてぇな言い方だな。」
〈当然いるさ。〉
「マジかよ……。」
〈そのことに関しては半分以上エンブレムを解放したら言ってやるよ。〉
「了解。」
〈それじゃね、言語を解放する。〉
「よろしくな。」
湊人の意識が戻る。
「お~い、湊人くん~?」
「なんだよ。」
「おお、よかった。死んだのかと。」
「勝手に殺すな、エンブレムの中にいる奴と会話してただけだ。」
「誰それ。」
「知らね。」
「ふ~ん。」
卯はつまらなそうな顔をし、本を開く。
「見て、湊人君。」
「これが、さっきまでなかった言語か……。」
「すごいでしょ?」
「知識として新たに加えられたけど、改めてみるとよくこんな言葉読めるよな。」
湊人は感心しながら本を読んでいた。
「ロシア語、中国語、韓国語、てか、それぞれの国の名前が言語の名と同じってなってるが、俺たちの世界にロシアとか中国とか韓国なんてねぇぞ?」
「それは私もわからない。」
この世界は現実の世界をベースに作られており、誰が作ったかなどは一切わからない。
だが、既存の国や既存の物の名前などがそのままや材料の名前のままになってしまっている。
「よかったね、亥水ちゃんが言語のエンブレム持ってて、私たち十二支隊はいろんな言語を使ってるから。」
「それは助かった。」
「次は誰が来るのかな?」
「誰でもいい、この世界の理不尽を止められるなら。」
湊人は拳を握りしめる。
「次の作戦はいつだ?」
「さあ、まだ会議が始まってないからわからない。」
「そうか、じゃあ俺は一旦帰らせてもらうよ。明日も学校があるからね。」
「じゃあ目を閉じてればお家だよ。」
「なんで?怖い……。」
湊人はゆっくり目を閉じる。
数秒後、しっかりと家、自分の部屋のベットに座っていた。
「あいつマジでナニモンなんだ?」
湊人は結局そのまま眠ってしまった。
翌日の朝
ピーンポーン ピーンポーン
家の呼び出し鈴が鳴る。
「ふぁい?」
[おはよー湊人!]
「未月か、今行くよ。」
湊人は未月と共に学場へ向かった。
「おはよう。湊人と未月。」
先生が入り口に立っていた。
「先生、今日の授業ってなんですか?」
「昨日教えただろ?忘れるなよ~。」
「で、なんですか?」
「前回は東に進軍しただろ?」
「はい。」
「次は西だ。」
「西の国はなんていうんですか?」
「わからない。」
「わからないって、どうしてですか?」
「事前に調査を行ったんだが、奴らは帰ってこなかった。」
「だからわからないのか。」
「で、一人は連絡付かないがもう一人は連絡が付いた。そこで救出作戦を行う。」
湊人は驚く。
「作戦に授業の一環として生徒を使うのですか。」
「死者は出さない。俺も行く。」
「先生って強いんですが?」
「当たり前だ、舐めるなよ?」
教室に入り、席に着く。
そして、大きな紙を緑板に貼った。
それはこの世界の地図。
六つの国が描かれていた。
「前回戦争した国は東と少し南の位置にあるアンデラス国。」
「次は西側ですか?」
ある生徒が聞く。
「惜しいな、今回は調査隊の救出に加えてカルアス国を攻め落とす。調査隊で唯一連絡の取れた奴からもらった情報によると、カルアス国でもゾンビの研究をしている施設を見つけたらしい。そして調査隊の一人はその施設に捕まっているらしい。」
「それだけですか?」
「ああ、連絡中に監視役が来たみたいでな、連絡はそれ以上できていない。」
「そんな……。」
「だが、心肺伝達は正常に動いている。だからまだ生きてる。」
「じゃあ、早く行きましょう。」
「全員、ジャージ体育着に着替えて集合だ。防護服と防弾ジョッキも忘れるなよ。」
「はい!」
生徒たちは自身のロッカーから装備と武器を取り出した。
湊人と未月も後から先生と共に集合する。
「西側というか、北西側にある巨大な国を目指す。」
「水上機の準備できました。」
海岸で水上機の準備を終えた生徒たち。
「前から順に進め。」
生徒たちは水上機で進み始めた。
「湊人、それと未月。」
「はい?」
「俺が強いかどうか、しっかり見てろよ。」
「はい、しっかり見ますよ。」
「ついでだ、俺の名前教えてやる。」
「今いります?」
「一応な、自己紹介の時、お前いなかったし。」
「それは失礼でしたね。」
「何してたかは学場長からきてる。」
「よかったです。」
「俺は、
「岩でも操れるんですか?」
「それは……。」
説明を始めようとしたが、湊人の乗る水上機の準備ができてしまった。
「おっと、先に行け、ついた時にまた教えてやる。」
「では、お先に。」
湊人と未月は水上機に乗り、先に行く。
水上機は北西の方向にまっすぐ進む。
少し時間がたち、遠くから陸地の様な物が見えてきた。
「あれじゃねぇか?」
先頭に乗っていた生徒が言う。
「あれだ。他の奴らもいる。」
「よし、上陸するぞ。」
湊人達は陸に上がる。
「何て名前なんだ?この国は。」
「進んでみよう。他国の人間だとバレない様に。」
水上機に乗る前に支給されたこの国の人間が着ていた普段着を上から着る。
情報伝達の時に聞いていたことを元に制作した。
素材は全国で手に入るものが使われているため、制作しやすかった。
少し歩くと、そこは一軒家の住宅だらけだっ
た。
中央の方には見える限りで10個ほど縦長の建物がある。
「おい、看板があるぞ。」
生徒が看板を見つける。
そこには、『カルアス国 南東側 海岸』と、書かれていた。
「カルアス、これがこの国の名前か。」
「そんなことより、分かれて調査隊を探さねぇと。」
「そうだな、とりあえず4つぐらいに絞ろう。」
湊人率いるメンバー、未月率いるメンバー、ある生徒率いるメンバー2つで、
調査隊探索が始まった。
湊人率いるメンバーは、中央の縦長の建物を探索し始めた。
「湊人、なんかすげぇ不気味な感じがする。」
「そうだな、俺も少し感じるよ。この建物、強者がいる。」
「どんぐらいだ?」
「結構強いかもな。」
住宅街を抜け、建物の入り口につく。
見たところ100階はあるだろう建物。
入り口は透明な両開きの横スライド型扉。
壁には大量の窓が付いており、明らかに普通じゃない。
「行くぞ、俺の前に出るなよ。」
恐る恐る入る湊人達、電気がついており、人の気配は感じない。
壁にエントランスと書かれており、真ん中には横長のカウンターが設置してある。
「会社みたいだな。」
「湊人あれ。」
生徒が部屋の右側に階段があることに気づく。
「下向き、地下室か?」
「こんな縦長の建物に地下って、怪しいよな。」
「降りてみよう、しっかりついて来いよ。」
「「ああ。」」
湊人達は階段をゆっくりと降りる。
しばらくすると、赤い光が漏れている部屋を見つける。
扉が開いており、そっとその中に入る。
そこには、折に閉じ込められた人間を見つけ
た。
「おい、大丈夫か?」
よく見ると、
「おいこれって、俺たちの国の調査隊の服だ。」
「じゃあ、こいつが生き残りか。」
折の中にいたのは調査隊の生き残り。
バイタルの以上はないため生きている。
今は眠っているだけだ。
「防護マスクを外してやろう。」
「そうだな、安全確認だ。」
そう言いながら調査隊のマスクを外す。
なんと、まさかの人物だった。
「な、え、炎花さん!?」
「あれ?湊人くん?久しぶりだね。どうしてここに?」
眠りから覚めたような声で話す炎花。
カルアス国の調査に行ったのは、炎花の率いる調査隊であり、炎花以外は戦闘により死んでしまったのだ。
「なんか、『十二支隊だ』と名乗ってる奴に、急に攻撃を仕掛けられて、調査隊のほとんどが死んだ。私と残りの1人は一緒に捕まってたんだけど、十二支隊の奴の隙を見て、牢屋から脱獄したけど見つかって殺された。」
「炎花さんは今までずっとここに捕まってたってことですか?」
「うん。速く出よう、奴が戻ってくる前に……。」
カツンッ、カツンッ、
地面に敷かれた格子状の金属の上を歩く音が聞こえる。
その音は、近づくに連れて大きくなる。
「誰が、戻って来るって?炎花ちゃん。」
「ちゃん付けしないで、あいつだよ、十二支隊って言ってた奴。」
「あいつが、十二支隊……。」
奥から現れたのは、黒いスーツと黒いスカート
を履いている、桃髪の女だった。
黒いハットは右手の人差し指で、クルクルと回している。
「全く、勝手に出ちゃだめでしょ。それと、勝手に友達を呼ぶのもだめでしょっ!」
同時に、女は湊人に向かって物凄い速さで近づく。
「っ!速っ!」
湊人は反応に遅れた。
そして、女は腕の一部を狼のような腕に変え、鋭い爪で攻撃しようとしてきた。
しかし、
「
湊人の目の前に黒い石、黒曜石が現れ、女の攻撃を受け止める。
「間に合った、ありがとうな湊人。後の事は、先生に任せろ!」
湊人は事前に先生へヘルプ音を送っていた。
それを聞き、先生は走ってここまで来た。
ギリギリ間に合い、先生と女の戦いが始まろうとしていた。
「誰よ、あんた。」
「こいつらの先生だ。」
「侵入者のクセして偉そうに……。」
「すまないね、俺が強いこと、しっかりと生徒に見せないといけないもんでな。」
湊人のクラスの担任、
颯樺は両腕をゆっくりと上にあげる。
すると、颯樺の後ろからたくさんの岩が現れる。
「
たくさんの石をつなげ、金づちのような形を作る。
「くらえっ!」
振り下ろすような動きをすると同時に、その石づちも振り下ろされる。
「こんな攻撃、なにが強い……。」
女は軽々と避けた。
しかし、
ガンッ
「っだ。」
女の頭に岩が当たる。
「避けることは想定していた。そこで、岩を操り、貴様の避ける方向に新たに岩を持って行った。」
女の頭から血が流れる。
ポタポタと垂れ落ちる。
「弱くない?」
「これは序の口だ、これから本気を…………。」
その瞬間、颯樺の体から血が流れ落ちる。
「はっ?」
「石崎先生っ!」
颯樺は女の素早い攻撃を食らってしまった。
「どうしたの?死んじゃう?」
「うるせぇな、たかが素早いだけじゃねか。」
颯樺は右腕を伸ばし、
「
颯樺の後ろから大量の石が女に向かって飛んでいく。
「こんなの、今更通用しないわよ!」
女は颯樺に近づき、鋭い爪を出し、切りかかる。
「防壁:黒曜壁…………。」
バキンッ
「っ!」
颯樺の防御技、黒曜壁が壊されてしまった。
「先生ぇ!」
さすがの湊人も先生の元へ駆け出した。
だが……。
「心配ないさ。」
颯樺の体がある岩で覆われている。
「岩盤装備!俺は今から無敵だ!」
「面倒なことしてくれたね。」
「こっからは俺の番だ!」
颯樺は女に向かって走り出す。
「
颯樺は女を攻撃する。
「こんなの、私の爪で砕いてやる!」
女は爪で岩盤拳を攻撃するが、
パキッ
「なっ!」
壊れたのは爪の方だった。
「知らないのか?岩盤を。」
「しってるわよ。確か、壊れないんだっけ?」
「ああ、だからいくら俺に攻撃したって無駄だ!もう俺の勝ちは確定している!」
颯樺は勝ちを確信しながらもう一度女に攻撃する。
「おりゃっ!」
ドゴンッ
「っ!」
腕をクロスし、ギリギリ攻撃を防ぐ女。
しかし、今の一撃で相当なダメージは腕に入っている。
「これで終わりだ!」
颯樺は腕を後ろに引き、
「
「やばいね、これは。」
額に汗を流す女。
「くらえ!」
颯樺は女に攻撃。
「くそっ!」
女はさっきと同様に腕をクロスし、攻撃を防いだ。
だが、女は吹き飛ばされ、実験器具や資料の置かれた机に突っ込む。
中に舞った紙とホコリのような土煙で女の姿は見えない。
「どうだ?見たか湊人。これが俺、颯樺先生の強さだ。」
「本当に強かったんですね、先生。」
「全く、証明出来てよかったぜ。」
生徒たちは勝利を喜ぶ。
湊人も颯樺と喜びを交わす。
しかし、土煙の中……。
「危なかった……、後、1秒でも遅れてれば、死んでたよ。」
1人煙の中で喋りだす女。
「まさか、ここで奇跡が起きるなんて。」
女は煙から歩き出てくる。
それに気づく颯樺。
「おっと、喜ぶのは早すぎたようだ。」
「浮かれすぎって良くないよね。」
女の雰囲気が違う事に気づく。
生徒たちはそれに気づいていない。
だが、湊人と颯樺、炎花がそれに気づいている。
「先生……。」
「わかってる。違うな、さっきと。」
女は歩くと同時に、物凄い覇気を放つ。
「炎花、生徒たちを連れて国に帰れ。」
「私も戦う。」
「相手を見ろ、状況を考えろ。ここは、先生と湊人で対応する。」
「はい…………。絶対に、死なないでください。」
「死なねぇさ。」
炎花は生徒たちを誘導し、外へ出る。
覇気を放つ女の姿は、獣の用な牙と爪が生えており、体格がニ回り程大きくなっている。
黒いスーツと黒いスカートは、体格に合わせ大きくなっている。
薄い綺麗な桃色をしていた髪は、光沢が消え、黒掛かった桃色に変化している。
「許可でてないけど、いいよね、殺しても。」
「好きにしろよ、誰の許可待ってっか知らねぇが。」
颯樺は拳を冓える。
湊人も刀を構え、戦闘態勢に入る。
「じゃあ、死ね。」
女は物凄い速さで颯樺に近づき、
「っ!岩盤の盾!」
颯樺の眼の前に岩盤で出来た盾が作られる。
それに目掛けて女は爪を使い、攻撃する。
「学習能力のない奴だ、岩盤に攻撃なんて、傷一つ付きやし…………。」
その瞬間、颯樺の眼の前の岩盤の盾は、爪によって、4等分に切られてしまった。
「嘘だろ……、岩盤だぞ!?」
その言葉のすぐ後、女に蹴り飛ばされる。
「だぁっ!」
颯樺は壁にめり込む。
「先生っ!」
湊人は颯樺の前に立ち、女と戦闘を開始する。
「お前、十二支隊って名乗ったらしいな、外見からして、犬って所か?」
「見ればわかるでしょ、戌よ。それがわかったところで何になるの?今の私は十二支隊の中で最も強くなった。」
「道理で、覇気が大きい訳だ。危険信号がビンビンしてるからさ。」
「雑魚に用はないの、どいてくれる?」
「舐められたもんだぜ、亥水ってやつを倒したってのによ。」
「亥水はこいつに殺られたのか。全く覇気のねぇこいつに……。」
女が考え事をしていると、
「戦闘中に考え事はよくねぇぜ!」
湊人は刀を女に振りかざし、
「属性付与:炎と雷
刀に炎と雷を付与し、女を攻撃する。
ザシュッ
女に一撃を与え、一本後ろに下がらせるが、
そこまでダメージが無さそうだ。
「これが君の攻撃?こんなんで殺られちゃったの?亥水ちゃん。」
「まだまだこれからだぜ!」
湊人は女に向かって走り出す。
「属性付与:氷
氷を付与した刀で斬撃を繰り返し攻撃する。
後ろに下がりながら避ける女。
「雑魚攻撃……。消し炭にしてやる。」
女も動きを止め、攻撃の構えを取る。
「野生解放
女が湊人に攻撃する。
「速っ!」
湊人は反応に遅れ、体に3本の爪痕が付く。
それと同時に出血する。
「っ、ぐっ、ガハッ……。」
血を吐き出す湊人。
湊人はこのたった一撃だけで、行動不可能に近い程ダメージを受けた。
「大丈夫か、湊人。」
颯樺も目を覚まし、湊人に近づく。
「お前は止血を優先しろ。」
「はい。」
「その間、俺があの女の相手をする。」
「先生、約束、忘れてないですよね。」
「ああ、心配はいらねぇ。俺は強ぇから大丈夫だ。」
「お願いしますよ。」
刀に炎を少し纏い、刀を熱し止血をする湊人。
それを確認に、女にゆっくりと近づく颯樺。
「なに?死にに来たの?」
「んなわけねぇだろ、約束があるからな。絶対に死ぬなってな。」
颯樺は腕を前に伸ばし、手を広げる。
「まさか、こんな所で最終手段を使うとはな。」
颯樺の手に大量の石が集まり、
「岩石集結 攻撃モード
颯樺の最終手段、岩盤刀
一見強くはなさそうだが、今までの岩盤装備や岩盤の盾よりも遥かに強度があり、
触れた瞬間にその部分が一瞬にして切れる。
颯樺の渡り合ってきた敵(訓練で対立した力を持つ生徒)の中で、力を無効化する生徒以外には負けたことがなかった。
「さあ、行くぞ。」
颯樺は女に近づき、岩盤刀を構える。
「
女は腕と足を繋がれる。
「お前に勝って、湊人を連れ帰る!」
「無駄だろうに……。」
颯樺は岩盤刀を振り下ろす。
「
女を切った。
止血しながら見ていた湊人も確実に勝利を確信した。
颯樺も勝ちを確信した。
だが、その喜びは、一瞬にして悲しみに変わった。
「湊人、終わっ…………。」
颯樺が後ろを向き、湊人に話しかけた瞬間だった。
颯樺の体に、女の爪と腕が貫通していた。
その爪の先には、数秒に一回脈を打つ心臓があった。
「ゴホッ…………。」
颯樺は血を吐く。
「せ…先生ぇぇぇぇぇっ!」
湊人は叫んだ。
颯樺が膝を付き、倒れるその前に。
颯樺の体を受け止め、話しかける。
「先生、先生!」
「湊人……、約束、守れそうに、ねぇな……。」
「まだ、まだ、いけます、いけます、止血、止血を……。」
「やめろ、わかってるんだろ?俺の、心臓が、奴に取られた、ことに……。」
止血しようとする手が止まる。
「逃げろ、こいつは勝てない、仇を、取ろうなんて、考えるな、やめろ、その、怒りに満ちた顔は……。」
湊人は女を睨みながら、歯を食いしばり、怒りを向ける。
「先生、あなたの体は、必ず持ち帰ります。」
「やめろ、戦うな……。」
「俺がこいつを倒して、先生の手柄にする。」
「ただでは、死なせねぇって、ことかよ……。」
湊人は女の前に立つ。
「殺してやるよ、クソ女が。」
「やれるもんならね。」
「湊人、だったら、約束だ、死ぬな。」
「ええ、そのつもりです。」
颯樺は最後の言葉を交わし、死亡。
「ここじゃあ暑苦しいわね。」
「外にでも出るのか?」
女は天井目掛け爪を振るう。
すると、大きな破壊音と共に天井が崩れ、満月が照らす夜空が広がる。
湊人は崩れてきた天井の破片を避ける。
「さあ、殺し合いの始まりだ。」
「ああ。お前を殺して先生の仇とエンブレムを取る。」
「来いよ、英雄気取りの弱者が。」
「そっちこそ、怯えてんのか?クソ女。」
湊人と女の殺し合いが始まる。
~第六話~「岩を裂く狼」 終
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