〜第五話〜「理不尽と強さ」

「どこなんだよここは。」


湊人は謎の人物に声を掛けられ、協力を持ちかけられた。


【すまない、今電気をつける。】


湊人はその人物に連れられ、ある部屋に入る。

薄暗く、一見すると極普通の一般家庭と同じ間取りの部屋だ。


パチンッ

電気がつけられた。

しかし、その通りの部屋だった。


「あ?ただの部屋じゃねぇか。」

【今はね。】


その部屋は右側に棚、奥にキッチン、その手前は大きめのリビングといった本当に一般家庭と変わらない部屋だ。


「今はってなんだよ。」

【見てな。】


謎の人物は棚に近づき、


【連れてきました。扉を開けて下さい。】


その発言の後に、少し部屋が揺れる。


「なんだなんだ…?」


棚が半分に割れ、扉の様に開く。

その奥は、地下への階段が続いていた。


【では、ここを降りるのでついてきて下さい。】

「わ、わかった。」


湊人は階段を降りた。

そこには…。


「やあ、君が湊人くんだね。ようこそ!我が隠れ家へ!」


そこにいたのはパソコンに囲まれながら椅子に座る女。

黒いスーツと黒いスカートを身に着けているが、スーツを着崩しており、青い髪をツインテールにしている。


「誰だ?あんたは…。」

「自己紹介が遅れたね。申し訳ない。

私は十二支隊の4席、六東むとううさぎ

「十二支隊!お前まさか、敵なのか?」


湊人は刀を構える。


「待って待って待って!私は敵じゃない。落ち着いて、一回話を聞いてよ。」

「こちとら話してる場合じゃねぇんでね。

十二支隊は全員俺が倒す。」


湊人は構えるのをやめない。


「少しだけ!」

「…………。わかった、少しだけ聞く。ただ、すぐにでも敵だと判断した瞬間にお前を倒す。」

「良かった。ありがとう。じゃあ、本題に入ろう。」


卯はパソコンに向き直り、


「意識分割解除」


その言葉と共に、謎の人物は煙を出しながら

しゃがみ込み、動かなくなる。


「今のは私の分身みたいな物だよ。で、話ってのは…。」


湊人の方に向き、ある物を見せてくる。


「この宝石、エンブレムかな?湊人くんはこれが必要なんだよね。」

「ああ。」

「そこで、私は君に協力したい。このエンブレムも君に渡す。だからその代わりに私を仲間にしてくれ。」

「しっかりメリット付きか。」


湊人は考える。


「じゃあ、エンブレムを解放する。お前を仲間に歓迎する。」

「ありがとう、でも、すぐには解放しないでね。」

「なんで?」

「私のエンブレムは『夏のエンブレム』だから。今夏を出すとこの世界が大変なことになる。」


「なんだ?その夏ってのは。」

「夏って言うのは、四季の中の一つで凄い暑い季節の事を言うの。」

「だから今すぐ解放すると、全世界が凄い暑い季節になっちまうのか。」

「うん。だから四季を全部集めてから解放したほうがいいの。」


その後、湊人は立ち上がると、


「話はこれだけか?エンブレムは解放せずに預かっておく。連絡はこの小型無線機で頼む。」

「ええ。これだけよ。十二支隊にはうんざりでね。この世界の理不尽を止めてくれる人を探してたのよ。良かったわ、真面目そうな人が世界の理不尽を止めようとしてくれて。」


「褒められるのはあまり好きじゃねぇよ。」

「そう、ごめんなさいね。」

「じゃあ………あ、そうだ。次に十二支隊が来るのはいつだ?」

「作戦開始が今日から後2日。」


「2日?まあ、もうすぐってことだな。」

「うん、次は誰が向かうかわからない。いつもAIが決めてるから、覚悟してね。一番強いのが行くかもしれないから。」

「了解、そんじゃあ。」


湊人は階段を上がり、部屋を出た。


一方その頃、

卯はパソコンに向き直り、ある写真が保存されているフォルダを開く。

そこには湊人の写真が入っていた。


「全く、やっぱり覚えてないみたいだね。君は過去に、私をゾンビから救ってる。エンブレムの回収で私達十二支隊の記憶以外消えてるのよね、悲しいな。」


卯は数年前、湊人に助けられている。

それも、この世界の理不尽が始まる前の話。

湊人は記憶を無くす前、この世界ではゾンビを討伐する、学場のゾンビ討伐クラスに所属していた。


世界の理不尽が始まる前は、沢山のクラスが存在していた。

だが、理不尽のせいでクラスは変わった。

記憶が無くなり、ゾンビという知識が消えてしまった可能性があったのだ。


世界の理不尽が始まる前の世界を、卯の記憶を辿りながら見てみよう。



22XX年、4月24日 午前9時30分

円中公園

この公園には遊具の様な物は無く、ただただ大きな敷地が広がっているだけである。


その中心にしゃがみ込み、地面の虫を観察している1人の少女がいる。

それが、六東卯であり、この頃は12歳ぐらいである。


「今日も働いてるな〜。」


毎日休みの日は、この時間に虫を見にこの公園に来ている。

だが、この日は最悪な日になってしまった。


卯は家に帰る途中、液晶画面表示機器の販売店を通り過ぎる。

その時にあるニュースが流れていた。


[番組の途中ですが、速報が入りました。]


全ての画面がアナウンサーの写った画面になる。


[上空飛行隊からの情報によりますと、東側からゾンビが近づいているとの報告がありました。至急、一般人は建物に避難してください。繰り返し……。]


この時に始まっていた。

世界の理不尽は…。

アンデラスに違う世界の未来の湊人が転送されてしまい、そこでゾンビの数を大量に増やし、この国に送り込んだのだ。


それを知らない卯はゾンビが向かって来ている方向と自身の家の方向へ歩いていってしまった。


その頃、学場のゾンビ討伐クラスでは、緊急出動命令が掛かり、力を持つ者は一番に出ていく。その中の1人が湊人である。


そして、家まで後少しの所で卯はゾンビに遭遇してしまう。


「な、なに?あれ?もしかして、お母さんが言ってた……ゾンビ?」


卯は恐怖で足が動かなかった。


「ガッ…ガ…がァァァァァァッ!」


ゾンビは卯に襲いかかってきた。


「っ!」


卯は腕を顔の方に持っていき、クロスする。


「っと、危ねぇ危ねぇ。大丈夫か?」

「あ、あなたは………?」


卯の前に現れた1人の男。

14歳ぐらいの男であり、上下白いスーツに、

赤いマントを羽織っていて、金色の王冠を被っている。


「もしかして、王様?」

「やっぱそう見えるよな、違くないけど、違う。これはふざけてる様な物だよ。」


その男はゾンビに触れずともゾンビの襲いを止めている。


「全く、ゾンビが沢山いる中外に出歩いちゃだめだよ。」

「ごめんなさい。」

「ま、俺が助けられたんだ、生きてて良かったな。俺は神岡湊人、あのデケェ学場の生徒だよ。」

「助けてくれてありがとうございます。」


「ああ、じゃあ、早く家に帰りな。」

「はい。」


卯は家に帰った。

本当に後少しの所だったため、窓から湊人が見える。


「そんじゃあ、守るもん守ったし、駆逐しねぇといけねぇもんを駆逐しますか。」


湊人はそう言いながら右手を上に向ける。

それと同時に、


「ピストル」


そう発言する。

すると、湊人の右手にピストルが現れる。


「ピストル、浮遊、倍増、位置設定」


今度はピストルが湊人の周りに現れ、湊人を円で囲う様に何本も浮遊している。


「ガァァァァッ!」


次は複数のゾンビが湊人に襲ってきた。


「俺が来たからには、誰も殺させねぇ。」

「発射!」


ババババババババババ

ピストルを乱射する。

大量のゾンビは急所の首あたりを撃たれ、消滅した。


「ふぅ、東側のゾンビ討伐完了。」


湊人は東側のゾンビを全て討伐した。


「カッコイイ〜。」


卯は目を輝かせて湊人を見る。

この時に、卯は湊人を……。


「あの時、私は好きになったんだよ。君を…。」


パソコンの画面に映る湊人を見る卯。


「さあ!」


椅子から勢い良く立ち上がり、


「十二支隊の能力名だけでもまとめて、湊人に報告しよう。」


卯はスーツをしっかりと着直し、

黒いハットを被って外へ出た。



その頃、湊人はある人物と出会っていた。

その人物は、黒いマントを全身が隠れる様に着ており、紫色の短い髪、片目に眼帯を付けている。


「お前は誰だ?何しに来た。」

「おいおい忘れたのか?あの時少し戦っただろ?」


湊人は少し考え、


「そうか、あの時俺の刀を破壊しようとして失敗した奴か。」

「黙れ、俺を舐めるなよ。」

「何がしたくて来たか知らねぇが、来るなら来い。」


「上等だ、俺はフレイ、元湊人さんの部下だ。」

「あいつの連れかよ。」


湊人とフレイは戦闘体制に入る。

湊人は刀を抜き、フレイは何も持っていない。


「何も無いのか、なら一瞬だ。」

「やってみろよ。」


湊人は物凄い速さでフレイに近づき、


「属性付与:雷 雷電閃光らいでんせんこう


刀に雷を纏い、フレイを攻撃しようとした。

しかし、フレイは避けようとせず、むしろその刀に手を出してきた。


「無駄だ!この刀はどんな事でも壊れない!」


フレイの手に刀が届くその瞬間。


空壊くうかい


フレイはある言葉を放った。

刹那、湊人の刀とフレイの手の間の空間に、ヒビが入り、爆発した。


「だぁぁぁぁっ!」


湊人はそのまま後ろに吹き飛ばされ、倒れる。


「行ってなかったな、俺の『破壊の力』は触れた物を破壊する力。そして、空気に触れ、空気が壊れると同時に爆発を起こす。」

「なるほどな、ただの破壊じゃなかったって事か…。」

「当然だ!」


フレイも湊人に近づき、落ちている石を拾う。

その石を破壊し、


壊石かいせき 粉砕投石ふんさいとうせき


細かくなった沢山の石を湊人に投げる。


「っ!地味に痛ぇし、目が開けられねぇな、こんな石投げられると…。」


湊人は目を開けられず、フレイにどんどんと近づかれ、


「おいおい、戦闘中に目ぇ閉じてんじゃねぇよ!」


ドゴッ

湊人は頭を蹴られる。


「がはっ!」


横に少し飛ばされ、倒れる。


「一瞬じゃなかったのか?」

「ハァ、ハァ、っ…。」


湊人はゆっくりと立ち上がる。


「教えてやるよ。」


フレイは地面に触れ、地面にヒビが入る。

そのヒビは湊人の方に入っていき、

湊人の真下で爆発するように地面が壊れる。


「だぁぁっ!」


湊人は、もう一度吹き飛ばされる。


「俺とお前じゃあ、格が違う。俺に負けてるようじゃ、十二支隊になんて勝てねぇぞ。」

「知ってるのか……、十二支隊……。」


「知ってるも何も、俺もエントリーして落ちたからな。」

「落ちる……?エントリー制……なのか…?」


「ああ、丁度さっきだな。十二支隊を12席の奴から1人づつ倒して、途中でやられたら最後に倒した奴の席に座れる。」

「まさか、落ちたってことは…。」


「あの12席の奴にやられた。お前との戦いで腕を上げてやがる。だから、俺に勝てなきゃ尚更勝機はねぇ。」

「クソッ!俺の、力不足か…。」


「俺がお前だったらこの時点で泣けるぜ。」

「なあ、戦いは好きか?」

「勿論。」


湊人はフレイに近づき、


「いつでも相手してやる。その代わり、俺を強くしてくれ。」

「何いってんだよ、馬鹿か?お前は。」

「そっちのボスを倒したのは俺だ。」

「……。そうかよ、勝手にしろ。ただな、俺のトレーニングは鬼畜だぞ。」


「望む所だ。」

「いいね、湊人。お前最高だよ。」

「強くなってやる。」

「まあ、俺もやること無くて暇だったから、最初からOKしてやるつもりだったけどな。」


湊人はフレイと共に、円中公園へと向かった。


「なんだここ。公園か?」

「ああ、この国では有名な円中公園だ。訓練には持って来いの広さだろ?」

「かもな。」


そんな話をした後、2人は少し距離を取る。


「じゃあ、始めるぞ。」

「何をするんだ?」

「俺が力を使い続ける。俺は疲労も破壊できるからな、最初っからNO LIMITだ。」


フレイは地面に手を当てる。

その瞬間、同じ様に湊人に向かって地面にヒビが入っていく。


「っ!確か、地面が爆発する…。避けるっ!」


湊人は爆発地点を予想し、横にズレる。

読み通り爆発は避けられた。


「よし、避けた。」


だが、


「隙だらけだ!」


ドゴッ

湊人はフレイに腹を殴られる。


「がぁっ…!」


湊人は腹を抑える。

歯を食いしばり、痛みを耐える。


「相手は線の上にさえ乗ってれば何でもしてくる。そんなんじゃあ、やられる一方だ。」

「わかってる…けどな…先読みが難しいんだよ…。」

「その難しい物を簡単にしてやろうとしてんだよ。限界を超えて動き続けろ。いつか相手の行動パターンが読めてくる。」


湊人は刀を構える。


「おいおい、そんなんでやったら俺死んじまう。」

「ああ、そうだな。すまねぇ。」


湊人は刀を背中にしまい、


「こっちにしよう。」


湊人は物語の英雄へ姿を変える。

だが、右手は巨大な爪が無く、普通の腕だ。


「いいね、その姿ならいい戦いができそうだな。」

「だからこれでいく。」

「よし、先読みできる俺に一撃でも与えられたら訓練終了だ。今日の期限は日が落ちるまで。」


湊人は物語の英雄に姿を変え、フレイと訓練を再開した。


「まず、フレイの後ろを取る。」


湊人は上がった身体能力を駆使し、動き回る。


「撹乱か?通用しねぇぞ!」


フレイは右手を地面、左手を空気に触れ、破壊する。

地面にヒビが入り、空気は爆発する。


「まず一つ!」


湊人は地面の爆発は飛んで避け、空気の爆発は腕を前でクロスし、腕に傷を負う。


「少しの傷は物語の英雄で回復する。後は近づく!」

「力を利用して近づくか…。」


湊人は大きく動き、フレイの後ろから近づく。


「奴は遠距離の攻撃を多用しやすい…。近距離なら刀で破壊を無効化する。」


湊人は右腕を後ろに引き、構える。


「今までよりも全力で!」


右腕に力をためながら、念の為の刀には左手を添える。


「強行突破か、俺の破壊を喰らえ!」


近づいて来た湊人に手を伸ばすフレイ。

しかし、その手には刀がある。


「これは…刀だと?破壊できないことをいいことに、これを防御に使うか…。やるな。」


湊人はフレイの真上にいる。


「取った!」

降落全拳こうらくぜんけん!」


湊人はフレイを攻撃する。

しかし、


「遅い!」


フレイは避ける。

湊人の拳は地面を破壊した。

だが、それだけでは無かった。


「はぁ?!んだよこれ。」

「驚いた、こんな力を隠してたのか?」

「いいや、俺も初めて知った。」


湊人の拳は円中公園の6割の地面を破壊した。

原因はすぐにわかった。


「さっき、今までよりも全力で拳を構えた。」

「力をためたんだろ?」

「ああ。それと同時に、血流が速くなった。」

「何かしらの力を使ったとしか言いようのない事だ。」


「でも、俺は生まれたて無力の人間だ。この二つの力だって継承した奴だ。」

「じゃあ何故だ。物語の英雄だけの身体能力とは思えない力を発揮したんだぞ。」


湊人は右腕を見つめる。


「もう一度やる。こんだけの威力があるなら、風を起こせるかもしれない。」

「かもな…。」


湊人は後ろを向き、右腕に力をためる。


「っ!来たっ!血流が速くなった。」

「なら力を使ってる。何を使ってるんだ!」

「知らねぇ、でもお前なら俺の動きでわかるはずだ!」

「無茶を言いやがって、なんとなくはわかってる。後はお前が風を起こせば100%正解する。」


「じゃあ、やるぞ。」

「ああ。」


湊人は空気を攻撃する。

予想通り、攻撃した方向に向かって強風を起こせた。


「正解だ。」

「なんの力なんだ?」

「名前は俺の偏見だが、力はそのままの名前が多い、ならお前のその力ら『ためる力』だ。」

「力をためるって事か。」


「まあ、文字通りの力だ。だからお前は今まで以上の力を発揮し、地面を広範囲に破壊した。」

「でも一体これは何だ?」

「さあな。だが、俺の憶測として、その継承した力にはそれ以外にも、別の力が眠っているかもしれない。」

「そんな事があるのか?」


「ああ、俺の部屋の書物庫に何故か置いてあった本に書いてあった。」

「なんて?」

「『力は条件を達成しないと使えない。』」

「だから俺は力を『ためる』という行為、いわるゆ条件で発動しちまったってことか。」


「でも、どのタイミングでこの力を手にしたんだ…。」

「さあな、もしかしたら物語の英雄か、伝説の刀を持って奴のどっちかが持ってて、それが目覚めただけかもな。」

「そういうことにしとくか。」

「まあいい、続きをやるぞ。」


フレイは湊人に触れようとする。


「っ!」


湊人はギリギリ反応するが、左腕を触られてしまう。

湊人の左腕は破壊された。


「まじか…。」


左腕はゆっくりと治っていく。

その間にも、フレイは攻撃を繰り返す。


「空壊、空壊、空壊!」


ボン、ボン、 ボン、と連続で爆発し、湊人は右腕で攻撃を受けながらも、少し受け流す。


「片腕がねぇと不便だな。」

「どうした?動きが遅いぞ。」


フレイはまた近づく、湊人は右腕で刀を構える。


「さっきの力を利用してやる。」


湊人は刀に力をためる。


「このぐらいで…。」


湊人は近づくフレイを見ながら、タイミングを測る。


「刀を振り上げて、攻撃でもするつもりか?そんなの簡単に避けられる!」


フレイは真正面に突っ込んできた。


「来たっ!予想通り突っ込んできた!」


湊人はこれを期待していた。

フレイの性質上、隙を見せた相手には必ず突っ込んでくる。

それを利用した。


「っ!いない!何処だ!」


フレイが瞬きする間に湊人は消えてしまった。

そして、刀にため込んだ力を空から全力で振り下ろす。


「ここだっ!フレイ!」

「っ!やられた。避けられるが、左腕は持ってかれるか…。」


フレイは湊人の攻撃を避けたが、予想通り左腕は持っていかれた。


「ぐっ!」

「よしっ!少し当て……。」


湊人は攻撃が当たった事に喜ぼうとしたが、

フレイの左腕を奪ってしまった事が、先に脳に入ってきた。


「フレイ!まじか、あんたなら避けられると思ったのに…。」

「流石にため過ぎだ…。避け切れねぇよ。」

「くそっ!どうすれば…。」

「大丈夫だ、俺はこう言うことも出来る。」


フレイは傷口に右手を当て、


「負傷破壊」


すると、飛び出していた血が止まり、左腕が構成されていく。


「破壊って、壊すだけじゃねぇのか?」

「壊すだけだ。ただ、物理的のみとは行ってないだろ。」

「解釈の違いでここまでなるか普通、破壊の力が…。」

「結果的になった、それで十分だ。」


フレイは立ち上がり、


「俺に一撃を与えた、行って来い。」

「ああ、勝って戻って来る。」

「勝ってくれねぇと約束もありゃしねぇだろ。」

「確かにな。」


湊人は歩き出す。


「だが、奴らの居場所はわからねぇ。あいつ等が都合良くこっちに来てくれれば、いいんだけどな。」


と、そんな事を言っていると、



「やあ、湊人。」

「ご都合展開だな、やっぱりそっちから来るか…。」

「今回は私一人だ、よろしくね。」


黒いスーツと黒いスカート、

黒いハットを被った亥水が現れた。


「あん時は仕留めきれなかったが、次は容赦しねぇ。」

「私だってあんたを確実に殺してやる。まあ、殺しちゃ行けないから正確には捕まえるだね。」


亥水は右腕を伸ばし、


直線ライン 蜘蛛の巣」


湊人には見えない線が蜘蛛の巣状に引かれる。


「蜘蛛の巣……て事は、足場には注意しないとな。」


湊人は蜘蛛の巣を想像し、回避のイメージをつける。


「君は、蜘蛛の巣が一つだと思っているかい?」

「あ?」

「私は心配症でね、沢山作るんだよ。」


湊人の足元は、見えない蜘蛛の巣の線で張り巡らされていた。


「くそっ!先手を取られたか……。」

「一発で終わらせてやる。」


亥水は両手を伸ばし、


爆発エクスプロージョンα


その発言と共に、地面が爆発する。


「何だ、前と変わらねじゃね……。」

「バカね、同じな理由ないでしょ。」


湊人は飛び上がり、地面の爆発を避けていたが、亥水の作戦の内だった。


「『爆発エクスプロージョンα』はね、ただ爆発するだけじゃないの。」

「なんだって?」


爆発の方を見る湊人。

そして、その爆発は変化する。


「その爆発は、敵を追尾する!」


湊人の動いた道筋を追うように、爆発が湊人を追いかける。

数秒で、爆発は湊人に直撃する。


「っだぁぁっ!」


湊人は地面に倒れる。


「くそ……、こっちも反撃だっ!」


湊人は刀を構え、亥水に近づく。


「近距離は嫌いっ!」


近づく湊人に右腕を伸ばし、


「重力2.5倍」


湊人に重力がかかる。


「重……てぇ……。」


しかし湊人は、関係なく走る。


「やっぱり、こんなもんじゃ湊人には効かないか……。」

「属性付与・炎 炎炎斬閃えんえんざんせん!」


湊人は刀を左から右へ動かし攻撃する。

だが……。


ニヤッ「緊急回避エマージェンシーアボイダンス


亥水は後ろにヒョイッと避けた。


「回避だってできるんだよ。」

「めんどくせぇな……。」


湊人と亥水の戦いはまだ終わらない。


〜第五話〜「理不尽と強さ」 終

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物語の英雄 カイン @KIN0002

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