〜第一話〜「地下」

地下に溜まったゾンビを一掃するため、

学場長に仕事を渡された湊人。


「昨日あんな事言ったけど、こんなことだけじゃあ『英雄』なんてなれんくね?」


一人集合場所の門で昨日放った自身の言葉を思い返していた。

湊人が集合場所に来てから約1分後……。


「おーい、君が湊人くん?」


学場の制服を着た女が湊人のいる方へ来る。


「はい、湊人です。」

「よかった〜。多分聞いてると思うんだけど、今回の助っ人の生徒会長よ。」

「あ、助っ人……。」


学場長にゾンビ一掃の願いを受けた後、

追加であることを聞いていた。


「そうだ、湊人くん。」

「はい?」

「明日、君だけだと場所がわからないだろうから、助っ人を送っていくよ。」

「わかりました。」


学場長が言っていた助っ人。

それは、学場の女生徒会長。

名は「爆川ばくがわ炎花えんか


この学場最強の生徒であり、生徒会特別室という場所で訓練している。

生徒会に入ると、普通の訓練場所とは違い、特別な生徒会専用の訓練場で訓練出来る。


「よろしく。私は爆川炎花、炎花でいいよ。」

「よろしくお願いします。」


挨拶を交わし、湊人は動き出す。


「ねぇ、湊人くん?」

「は、はい?」


湊人は足を止める。


「なんで掘りの方に向かうの?」

「え?だってゾンビの溜まっている地下に……。」


「ハァ〜。」と炎花は呆れた様な表情をする。


「掘りに一直線で行ったら死にに行くような物よ。」

「じゃあ、どうやって?」


湊人が考えていると、炎花が湊人に近づき、


「そのために私が来たのよ。」

「なるほど。」


湊人はやっと納得した。

その後、湊人は炎花と共にある方向へ向かって歩く。


「ここよ。」


着いたのはこの国の中心町。


「ただの町ですよ?」

「さっきも言ったけど、地下に行くんだよ。」

「あ、この地下に溜まっているということですね。」

「そういう事。さあ、行くよ。」


炎花は湊人を引っ張り、町の真ん中の建物に行く。

扉を開けると、そこには地下への階段だけが作られていた。


その階段を降りながら、


「本当は立入禁止の場所だけど、今回だけ立ち入りを許可されてるから入れるのよ。」

「いずれは入ることになっていますよね。」

「そうね、この段階でゾンビの一掃をするのなら、近い内にやることになるわね。」


そんな話をしながら、長い地下階段を降りていく。

途中、折り返し地点があり、物凄く下に下がっていく。


「あの、後どのくらいですか?」

「ん〜、大きめの地下だから、まあ、ざっと5分ぐらいで着くよ。」

「わかりました。」


カンカンカン

静かな空間に階段の音が響き渡る。

そして、ついに階段が終わる。


「んだよ、ここは。」


そこは、全面ガラス張りの部屋であった。

地面もガラスになっており、ゾンビの状況を見ることが出来る。

そして、大量のゾンビが気持ち悪いほどいる。


「でも、こっからどうやってゾンビを倒すんですか?」

「ここから入って。」


炎花がガラスの一部を押すと、扉の様にガラスの扉が押し開かれる。


「行ける?」

「行くしかないと思いますけどね。仕事なんですから。」

「じゃあ、頑張ってね。」

「はい。」


湊人は扉から飛び出る。


「まずは、着地点の確保だ。」


背中に刀が現れる。

そこから刀を抜き、


抜刀旋回ばっとうせんかい


回転しながらゾンビを切り、着地。


「さあ、残りのゾンビ達もやっちゃいますか。」


湊人は刀を振り回し、ゾンビを一掃する。

途中、刀を振り回すのが疲れたため、右腕を巨大なゾンビの爪に変えながら戦っていた。

そして、


「よし、片付け終わった。おーい、紐を下ろしてください。」

「わかった〜、今やるよ。」


部屋に残っていた炎花が紐の準備をする。


「ん?」


その間、周りを見ていた湊人はある物を発見する。

だが、それは物ではなかった。

座り込むゴツゴツとした体のゾンビ。


「新種か?一応倒すか。」


湊人はゆっくりと近づき、刀を構えた。

そして、その刀を振り下ろす瞬間。

油断していた湊人は反応に遅れた。


そのゾンビは椅子からいなくなっていた。

そして、椅子を切ってから気づいた。


「あれ?ゾンビがいねぇ。」

「ここだ、ゾンビ狩り。」


奴は喋りだした。

湊人が振り向くと同時に奴は動き出し、拳を湊人に放つ。

ドゴッ


「っはっ!」


全く防御しなかった湊人は、壁まで吹き飛ばされ、その壁に激突する。

ズリズリと壁を伝って地面に落ちる。

かろうじて立っているも、今の一撃で体が

硬直している。


「何だ、何をされた?攻撃だよな?拳?その割には強すぎる。今の一撃でここまで吹き飛ぶのか?」


硬直しながら今の攻撃に混乱する。

しかし、そんな混乱状態の湊人にゆっくりと近づくゾンビ。


「もう終いか?」

「い…いや……、まだだ。」


体制を立て直し、もう一度刀を構え直す。


「行くぞ。」


ダッ

ゾンビに向かって走り出し、渾身の一撃を放とうとする。


「属性付与:炎 炎炎転斬えんえんてんざん


切りながら一回転する。


「あ゙あ゙っ!アチィ…。俺達の弱点を付きやがって。」

「よし、このままやってやる。」


湊人は炎を纏った刀のまま、ゾンビを切り続ける。


「フッ!ハッ!ハァァァ!」

「っ!だっ!くっ!」


形勢逆転、湊人は先程の一撃に注意しながらゾンビを圧倒。

そのまま反対側の壁側にゾンビを追い込む。


「やるな、名前は何て言うんだ?」


両腕を切られ、切断面が燃え続けるゾンビは湊人に聞く。


「俺は湊人、この世界の『英雄』を目指してる。まあ、お前に言った所で何にもならんと思うが。」

「フッ、未来の英雄に殺されるなら、本望だ。」


ザンッ

湊人はゾンビの頭を切り落とす。

切り落とされた頭が湊人の方へ近づき、


「あ…後……。」

「ん?」

「俺は……誤物ごぶつだ……。」


誤物ごぶつ

そう名乗り、ゾンビは燃えカスになって消えていった。

地下のゾンビは全ていなくなった。


「湊人くん!」


炎花が紐を下ろす。

それを登る湊人。


「大丈夫だった?新種みたいなのが現れたみたいだけど。」

「はい。大丈夫でしたよ。何なんでしょうね。喋っていましたし、誤物って名乗ってました。」


それを聞きながら帰ろうとする炎花に、


「あの、もしかしたら奴に関する物が地下にあるかもしれません。」

「そうかもね、探すの?」

「許可をいただければ。もしそれがあれば、似たような奴が現れた時に役立つと思うので。」


炎花は首を傾けながら考える。

コクッ

と頷き、


「わかった、いいよ。私はここで遊戯機でもやって待ってるよ。」


炎花はポケットから遊戯機を出し、見せる。


「ありがとうございます。てか、毎回持ってるんですか?」

「いや、今日はたまたま。昨日友達の家に行った時に取り出すの忘れてたみたいで。」

「そうなんですね。」

「じゃあ、いってら。」


湊人は紐を使ってもう一度降りる。

誤物の座っていた椅子の近くを漁り、探していると…。


「これは?」


ある資料の様な紙を見つける。

そこには手書きで文字が書かれている。

その紙の近くには、インクの無くなったペンが落ちている。


「なっ!これって……。」


そこに書かれていた内容。

それは、まさかの内容だった。


任務資料

名前:■■■■

コードネーム:誤物

任務内容:ゾンビを送った国の偵察

訓練生達を抹殺すること

くれぐれも正体がバレてはいけない

任務終了後、抹殺写真と共に国へ戻ること


彼は国外の人間だった。


「まじかよ………。ん?」


裏面にも文字が書かれている。

その文字は筆圧が文字ごとに異なっている。

彼自身がここで書いたもののようだ。


俺は誤物、最悪だ。

この国に偵察しに来たのに堀にハマっちゃった。

そんで地下に落とされる何め思わなかった。

これ  を書いてる途中ゾンビに攻撃され、

感染?しちまった。

今体の三分の二がゾンビになった。

こんな事しても意味ないかもしれないが。

もし俺の仲間がこれを見ているのなら。

俺の代わりに頼む。

そして


ここで内容は終わっていた。

奴がゾンビとなる前の手記だろう。

だが、ゾンビになったことでこの記憶を忘れ、性格が変わってしまったということだ。


誤物に関する重要な資料を手に入れた。

湊人は大仕事を成し遂げた。

紐を登り、炎花に報告をした。


「え?国外の人間?まさかこの国の外にも、生きてる人間がいたなんて。てっきり、ゾンビに支配されてるもんだと思ってたよ。」

「俺も驚きです。授業では『ゾンビによって支配された。』と、習いましたからね。」

「とりあえず、早く戻って報告よ。」


2人は急いで学場へ戻る。


コンコンコン

湊人は学場長の部屋にノックする。


「入れ。」


その言葉と共に部屋に入る湊人。


「学場長、これを見てください。」


湊人は地下で見つけた資料を学場長に見せる。


「これは?」

「これは、ある国外から来た人間の手記です。」

「手記……?ただのゾンビ以外に、何者かがゾンビと共に地下に落ちていたということか?」

「ええ。」


学場長は驚き、ファイルを引き出しから取り出す。

資料をファイルにしまった。


「そうだ、約束の報酬だ。」

「本当にこんなに貰っていいんですか?」

「当たり前じゃよ、受け取りな。」

「ありがとうございます。」


湊人は報酬を受け取り、


「あの、これからどうすれば?」

「家に帰ってそれを置いて、学場の授業に戻りたまえ。これからは普通の生活だよ。」

「わかりました…。」


湊人は仕事を終え、普通の生活へと戻った。

やはり湊人の言う通り、こんな事で『英雄』に何てなれるわけがない。

湊人は頭を下げ、少し悔しがりながら帰った。


「もっと、『英雄』らしい事したかったな。」


そんな事を言いながら、家までの道を歩く。

だが、悲劇は唐突の起こった。


「帰ってお風呂入………。」


曲がった瞬間。

そこには最悪な物があった。

それは、首が食いちぎられた男と女の死体。

見た感じで、10人程度の死体がある。


「なん…だ……これ。」


湊人は死体に驚き、ゆっくりと後ろに下がる。

だが、その後ろから、声が聞こえる。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙。」

「なっ!」


振り向くと、大量のゾンビ。

まさか、地下に貯まるはずのゾンビが町に入り込んでいた。

ここで、湊人はあの時を思い出した。


同じ道で、力を継承する時。

その時もゾンビが町に入り込んでいた。

まさか、奴らは外から入ってきているわけではないのかもしれない。


この国の中に、ゾンビを作り出す何者かがいるということだ。

湊人はそのゾンビの集団を蹴散らし、急いで学場へ戻った。


「学場長!」


湊人は思い切り扉を開ける。


「あつっ!何だね急に!」


学場長は飲んでいた温かい飲み物をこぼしてしまった。


「すいません!休憩中に突然。ですが、大変です。」

「何だね?私の休憩を邪魔するということは、本当に大変な事が起こっているのだね?」

「はい。」

「話たまえ。」


湊人は近くの椅子に腰掛ける。


「俺は先程、地下に溜まったゾンビを一掃しました。」

「それで?」

「ところが、帰り道、またゾンビが現れました。」

「何?どういうことだ?」

「つまり……。」


「ゴクッ」と、唾を飲み込み。


「この国に国外から来たゾンビを作る、敵がいる可能性があるということです。明確な根拠はありませんが、以前に力を継承する時も、ゾンビが町に入って来ていたからでした。ですが、この話と繫げることで、あの時のゾンビも国内で作られたゾンビと言う事になります。」


学場長は固まっていた。


「まさか……そんな……そんなことが…。」

「ですので俺が、この国の為に戦います。」


湊人は立ち上がり、学場長を見る。


「そのために、戦闘許可を。」

「…………。」


学場長は少し黙り込み、


「行けるのか?」

「はい。」

「一応、助っ人を呼ぶことにはする。お前はこれから、盛大な任務を遂行することになる。覚悟はできているようだな。」

「任せてください。」


湊人は扉から出ようとする。


「待て、最後に一つだけ、守るべきルールを言う。」

「はい?」

「絶対に死ぬなよ、自身の命が1番だ。」

「わかりました。」

「命の危険を感じたら直ぐに戻ってこい。」

「はい!」


湊人は部屋を出て走り出す。


「発生源は何処だ?まずはあの場所に向かおう。」


先程のゾンビが現れた位置へ向かった。

途中、ゾンビは大量に町へ現れていた。


「もう、こんなに……早くしないと。」


ゾンビ出現場所に着く。


「奴らはあっちの方向から来ていた。その方向に向かえば、何かあるはずだ。」


走り出す。

ゾンビ出現の理由を探しに。

大量に町に現れたゾンビ。

人々を襲い、今でも沢山のゾンビ感染者を出している。


既に、この町に住む人間は学場の生徒と先生、学場長と湊人を除き、全員ゾンビへとなっている。


しかし、この町の周りの町は、バリケードを作り、ゾンビを侵入させないようにしていた。

今回ゾンビの襲撃にあった町は、この国の中心部、最大面積を誇る町であったため、敵を探すのに苦労している。


「くそっ!何処だっ!」


走っていると町の端に来てしまい、バリケードの奥で、ゾンビに怯える子ども達がいる。


「早く、探さないと。」


所々でケーサツも銃を使い、戦っており、

学場では、戦闘教育選択の生徒らが一般教育選択の生徒らを守りながら戦っている。


「おいおい、何でいきなり戦闘なんだよ。」

「聞いてないね、折角帰ってゲームしようと思ったのに。」


物影に隠れながらゾンビを倒す生徒ら。

大きな町のため、人数も面積の2倍以上いる。


「早く、早く、早く、この元凶を探さないと!」


湊人は未だ敵が見つからずにいた。

ゾンビの襲撃を起こした敵を、湊人は見つける事ができるのか……。



とある上空、そこには黒いマントを全身が隠れるように着ており、フードを被った人物がいる。


フードの隙間から髪の毛が出ており、その色は紫だ。


「フフフッ、あれが神岡湊人ね。まさか、彼が次の継承者だとは、おもしろいわね。」


湊人について書かれている資料を持ちながら走る湊人を見る女。

ゾンビ襲撃の犯人は彼女で間違いないだろう。


「私の触れた物や人間をゾンビに変える力、『接触腐せっしょくふの力』、この力のお陰で私は国外への侵略権を得た。しっかりと役目を果たさないと。」


彼女も国外から来た敵であり、この国を滅ぼしに来たようだ。

一体、この国が何をしたというのだ。

一体、この国に何があるというのだ。


プロロロロロ……

通話音がなる。

女は小型端末を耳に当て、話し始める。


「ターゲットを発見した。未だこちらには気づいてません。」

【そうか、引き続き任務を遂行せよ。】


小型端末から聞こえる音声は、機械音声だ。

そのため、性別がわからない。


【奴らはそろそろ我々国外人物に気づいているはずだ。】

「それって、長い間誤物が帰ってこなかった事と関係あります?」

【あるな、奴は誤物を捉えて調べた可能性がある。】

「なるほど。」


女はもう一度資料に目を落とす。


「この、湊人のみ殺すことを禁じるって、何なんですか?」

【奴は絶対に殺すな。生かして捉えろ。】

「理由は教えてくれないんですか?」

【すまない、教えることはできない。】

「ちぇ〜。」


資料をマントの中にしまい、


「それじゃ、状況報告でした。」

【ああ。】


プッ

通信が終わる。

しかし、

プロロロロ……。

別の者からまた通信が来る。


「はい?」

「俺だ、様子を聞きたくてな。」


男の声がする。


「おや、あんたから通信してくるなんて珍しいわね。」

「るっせぇな。様子を聞くだけだ。任務だろ。」

「はいはい、状況は変わりなし。これでいいでしょ。」


女はため息を付きながら、通信を切ろうとする。


「じゃあ、切るよ。」

「待て待て、誤物はどうだったんだよ?」

「え?まだ見つかってないよ。」

「マジかいな。」

「で?もう用はないね。そんじゃ。」


プッ

通信を切った。


「誤物、何処行ったのよ。」


誤物の通信機に通話しようとするも、

プロロロロ………

[只今、通信可能ではありません。電源が切られてる、またはバッテリーがごさいません。]


「なんでよ〜。」


この時はまだ、誰も知らない。

誤物が湊人によって殺されている事を。


「まあ、今回の任務もサクッとクリアするか。早く昇格しなきゃ、あいつを超えるために。あのムカつく男を…。」


女はゆっくりと地面に降り、湊人に近づく。

そして、ついに湊人と対面する。


「誰だ。」

「ここにいる時点でわかるでしょ。」


女はため息を付きながら、頭を下げ、呆れている。


「まさか、お前がこの襲撃を…。」

「そうよ、あなたを捉える為にね。」

「は?俺を捉える?俺を捉えて、何をするんだ。」

「言えるわけないでしょ。バカなの?」

「教えてくれないか、なら、敵は敵だ。俺がお前を倒す。」


背中から刀を引き抜く湊人。


「やってみなさい、弱者が。」


ダッ!

走り出す湊人。


「生身の人間なら、小細工なんて必要ない!ただ、切るっ!」


湊人は女に刀を振り下ろす。

ザシュッ

女は防御を回避もせず、その攻撃を受ける。

湊人はその返り血を浴びる。


「なんだ?なんの抵抗もない。一瞬だ。」


戦闘が一瞬にして終わったことに、少し混乱する湊人。

だが、その油断が命取りになった。


「この事、学場長に知らせ……。」


湊人が後ろを向いた瞬間。


ドスッ


「っ!がはっ。」


小型のナイフで後ろから刺されてしまった。

湊人は吐血する。


「私があんな攻撃で死ぬとでも?アホね、隙だらけだったわよ。」

「くそっ……やろう……。」


女はナイフを引き抜き、その血を振り落とす。

その際、湊人も振り向き直す。


「ゾンビ関連の、力を持っているみたいだな。」


女の体が植物の成長の様に、傷口から再生していく。


「教えてあげるよ、私の名前と力。」


ポケットにナイフをしまい、近くの石を拾う。


「私の名前は『悪元あくげん』、そして、力は『接触腐せっしょくふの力』。」


その言葉のすぐ後に、悪元が持っている石がウネウネと動き出し…。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」


ゾンビに変わった。


「なん…だと……?」


それに驚く湊人。


「触れた物や人を腐らせ、ゾンビにする力。この町に現れたゾンビ達は逃げられなかった人間と私が事前に触れておいた物よ。まあ、物って言ってもさっき見たいな拳に収まるぐらいの物しか、ゾンビにできないんだけどね。」


ニヤッ、湊人を見ながら笑う。


「長々と語ってくれたな。いいぜ、再戦だ。今度はしっかり戦うよ。」

「その生きだ、強者よ、その傷を気にせず戦う者よ!」


走り出し、向かってくる悪元。


「また、何もなし。突っ込んでくる。もう一度、切る。」


湊人はまた、刀を振り下ろすが…。


「なっ、いねぇ。」


切った所に悪元はいない。


「ここよ!」


ザシュッ


「あ゙あ゙っ!」


背中を切られる湊人。

悪元は素早く湊人の後ろに回り込んでいた。


「あれ?あんたも再生できんのね。」

「一応…な……。」


湊人も振り向きざまに悪元を切る。


「っ!」


バッ

後ろに下がるも、左手を切り落とされる。


「たった、左手だけか…。」

「やってくれるね…湊人くん……。」


お互い、傷が再生する。


「なんで。」

「ん?」

「何が目的なんだ!俺を捉えるだけに、ゾンビの襲撃で町の人々を恐怖に陥れるのは違うはずだ!」

「ん〜、なんだろう、これに関してはやりたかったんだよ。」

「はあ?」


悪元は笑いながら、


「やりたかった。ただ、それだけの事だよ。」

「そんな理由が、通ると思うな!」


走り出し、怒りに身を任せながら刀を振り下ろす湊人。


「そう怒るなって、湊人くん。」

「これが怒らずにいられるか!!」


湊人の攻撃を軽々と避けながら、反撃する。

しかし湊人も、その反撃を受け止めながら、どんどんと追い詰める。


「そろそろ限界だろ?湊人くん。」

「いいや、多少の疲れがなんだってんだ。」

「まじかよ。」


バッ、

悪元は湊人と距離を取る。


「なぜまだ湊人はあんなに動ける。普通ならもう体力なんて一切残ってないはず…。」

「どうした!もう終わりか?」

「別に、終わりなんて一言も…。」


その瞬間、湊人が思いっきり近づいて来た。


「うわっ!」


悪元を切る。


「ずるいね、湊人くん…。」

「どうも、よく遊戯機でレース系のイカサマ男と呼ばれた事があるんだよ。まあ、イカサマじゃなくて、コースの穴を見つけて、近道してるだけだけど。」

「最低だね。」

「ありがとさん。」


湊人はもう一度刀を構え、


「属性付与:雷 雷抜速閃らいばつそくせん


バリリッ

物凄い速さで悪元に近づき、首を切り飛ばす。


「あ゙っ!」


ボトッ


頭が地面に落ちる。

それと同時に、悪元は膝を付く。


「殺ら…れた……?いいや、まだ再生できる。」


首を繋げ直す悪元。


「厄介だな。」

「フンッ!もう増援を一人呼んだから!後はそいつに任せるから!」


悪元は何処かへ行ってしまった。


「何だ?増援って。」


すると、


「いいね、その刀、『破壊』させてもらおう。」


ある男が後ろから刀に触れる。


「なっ!」

「あれ〜、壊れねぇ。」

「このっ!」


後ろに振り向きながら攻撃する。

だが、


「見え見えだよ。」


刀の刃先に立っている。


「お前が増援か?」

「いかにも、そうだ。」


悪元と同じく黒いマントを全身が隠れるように着ており、今度は顔が見える。

紫色の髪の毛をしており、短く、片目に眼帯を付けている。


「俺は全てを破壊する。」

「やってみろよ。この刀はできないけどな。」


2人は互いに距離を取る。

悪元の次は破壊を好む国外から来た敵。

湊人は勝つことができるのか…?


〜第一話〜「地下」 終

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