〜プロローグ〜「始動」

鳥が飛び回る大地。

その地には、木材や鉄で出来た町や建物に人間が住んでいた。


そこそこの技術が進んでおり、液晶パネルを駆使した映像機械が売っている。

他にも、無線通信を使ったコントロール機を操作しキャラクターを動かす遊戯機。

太陽光を使用した電気を使っていたり、小型液晶端末を持ち歩く人達がいる。


銃を装備し戦闘訓練をする人達もいたりと、様々な物があるこの世界。

ごく普通の平和な世界。


誰もがそう思っていた。

誰がいつ決めたのだろう。

平和が壊れない事を………。


この話は数年前の町並みの話だ。

この平和だった町、世界は奴らによって終わらせられた。


架空の存在としか認識していなかった。

奴らが現れる何て思ってもいなかった。


その名は「ゾンビ」

不死の肉体を持ち、顔や体は気持ち悪いほど、吐き気がするほど歪んでいたり、色が青ざめていたりと様々だ。


戦闘訓練をしていた兵達は、銃を使用し戦うも、奴らには敵わなかった。


ある一人の救世主が来るまでは…………。

その救世主は、背中に刀を背負っており、

仕事用のスーツを着ていた。

一般人の様な見た目だが、救世主が動き出した時には誰もが理解した。

こいつは只者じゃない。


そして、人間達はその救世主を「英雄」と名付け、「ゾンビ」による平和の崩壊は一時的に収まった。

そして、ここからは「ゾンビ」による平和の崩壊が止まっている現在の話だ。

物語はここから始まる。


町は発展し、縦に長い建物が増え、その間にポツポツと小さな家などが建っている。

長い筒から煙を出し、金属や生活品を製造する建物なども増えている。


そして、3割建物、7割が砂の庭になっている敷地がある。

学ぶ場所と書いて、「学場」と言う名の社会を知るため、学ぶための建物である。


その学場には、一般教育と戦闘教育の2つの分野が存在しており、それぞれ進む道が当然違う。

戦闘教育を選択した、ある少年がトレーニングルームで個人用対人模型で訓練をしていた。


長い髪を結んでおり、真っ赤な赤髪。

白いTシャツと黒い短パンを履いている男。

彼の名は「神岡かみおか湊人みなと


この学場の2年生であり、成績は上から数えたほうが早い。

対人戦闘が得意であり、銃の使い方は3番目ぐらいに入る。


デーン デーン

訓練開始3分前の鐘が鳴る。


「やべぇ、休み時間終わっちまったか…。」


そう言いながら、着々と変えの同じ服に着替え、訓練場に行く湊人。

道中、


「あ!湊人〜!」


後ろから湊人を呼ぶ声が聞こえる。

女の声だ。


「ん?何だ?未月。」


彼女の名前は「桜木さくらぎ未月みつき


湊人と同じ赤髪で、ツインテール。

同じ戦闘教育を選択した友達だ。

彼女も同じ服装をしている。


言い遅れたが、この白いTシャツと黒い短パンが戦闘教育での戦闘服である。


一般教育で配られる体操着とは違う物だ。


「これから全体訓練が始まるみたいだね。」

「そうだな、今年から決まった行事らしいからな。毎年やってくみたいだぞ。」

「どんなことするんだろう。」

「さあな。」


そんな話をしている間に、学場の庭「学庭がくてい」に入る。


「女子はあっちみたいだ。」

「そうみたいだね、またね!頑張ってね。」

「おう、そっちも頑張れよ。」


未月は手を振りながら走っていった。

湊人はゆっくりと自身の待機列に並び、訓練の開始を待っていた。


数分後


「あ、あ〜、声拡張機ボイステをテスト中、しばらくお待ちを。」


声拡張機ボイステ、実際はボイスエクステンダーといい、発した声を拡張する機械だ。略されてそう呼ばれている。


「テストが終わりました。これより…。」


戦闘教育選択者全員が静かになる。


「第一回全体戦闘訓練を開始する。」


今年から始まった全体戦闘訓練。

内容的には名前の通り戦闘教育を選択した者達全員で訓練する。


後に黒い箱が配られ、その中には全員共通の銃と装備が入っている。

装備は目を守る透明グラスと体を守る防弾着に銃は実弾ではなくプラスチックの弾が使われている。


「奇数と偶数のクラスに分かれて競い合ってもらう。」


1クラスは20人で小規模である。

だだ、10クラスあるので200人近くいる。

湊人は1組、優秀な者が揃う。


男女比は5:5なので、男女別で訓練もできる。

よって、男子50VS50、女子50VS50の戦いができる。


最初に女子戦が始まり、男子達は自身のクラスの女子達を応援していた。


「頑張れよ〜未月〜。」

「わかってるよ〜。」


未月も湊人と同じ1組であり、湊人より少し強い。

その理由は……。


「やっちゃうよ〜!」


未月は銃を構える。

その銃は連射式小口径銃、一度に30発程装填でき、切れるまで撃ち続けられる。

この未月の攻撃で相手の3分の2が脱落する。


当たったか当たっていないかは体に付けた装備が判定し、音を鳴らす。

それにより、脱落か否かを知らせてくれる。


「あいつ…やるな。」


学場長が未月の戦いに興味を持つ。

そして、疑問に思わないか?

何故30発程度の銃弾のみで3分の2も倒すことができたのか。


そう、あるのだ。

当然のように、この世界には。

ちから」が。

あるとは言ったものの、全世界の人間が持っているわけではない。


持っていればゾンビに平和を崩壊されるわけがない。

運が良ければ生まれてくると同時に力に目覚め、持っていると認識できるのは、誕生から6年後であり、認識していない間は発動条件が合致していても発動しない。


この様に、力を持つものは上へ上へと進むことが出来る。

最早未月が上に進む事もあり得る。


だが、湊人はそれを無視し己の力のみで打ち勝ってきた。

女子戦は未月のいる奇数チームの勝ち。


次は湊人、男子戦が始まる。


「湊人〜!頑張れ〜!」

「お〜う。」


流すように返事をし、装備を着用し武器を構える。

湊人は片手拳銃が武器だ。


「男子第一試合、開始!!」


刹那、相手側の陣地で既に半分が脱落している。


「なんだ?」


味方が混乱していると、

バンッ

その音と共に一人やられる。

次々と休憩無く撃たれる銃弾。


前を向くと、陣地の真ん中辺りで湊人と同じ片手拳銃を複数宙に浮かせながら攻撃してくる者がいた。


「いやっはぁ〜!さっさと終いにしてやら〜!」


味方が大勢やられて行く。

当然だ。

力を持つものは未月だけとは言ってない。

力を持つものが誕生する確率は低いものの、持つ力は強大なのだ。


結果、湊人のチームは負けてしまった。

その後、訓練の反省と改善点を紙に書き、提出。

そして、湊人は帰宅した。

その道中……。


「はぁ~、」


湊人は歩きながらため息を付く。


「残念だったね、まさかあんな奴が敵にいたなんてね。」

「本当だよ。」


未月と共に家への道を雑談しながら歩いていた。


「じゃあね、私はこっちだから。」

「ああ、じゃあな。」


湊人と未月は分かれ、湊人一人となった。


「今日は早く帰って、早く寝よう。もっと訓練しなきゃ。」


そんな事を言いながら家へ向かっていると、


「あ゙…あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……。」

「ん?」

目の前からゾンビが複数体現れた。


「なっ!ゾンビだと!今の世界には現れなくなったんじゃ…。」


湊人は混乱しながら逃げようとする。

しかし、後ろからもゾンビが来ており、囲まれてしまった。


「くそっ、誰か、助けてくれ…。」


徐々に追い詰められる湊人。

だが、そこへある救世主が現れる。


「そっち頼めるか?」

「ああ、いいぜ。」


ある2人の男の声が聞こえる。

その声と同時に湊人を囲っていたゾンビ達が殺られていく。


「なんだ…?」


湊人は呆然と立っているだけだった。


「やあ、危ないところだったね。」

「そうだな。大丈夫だったか?」

「は、はい。」


湊人の目の間には、右腕に巨大なゾンビの様な爪を持つ男と、刀を背負う男がいる。


「あなた達は?」


湊人は思ったことを口にした。

感じていたのだ、片方が何者なのかを。

あの話の人物なのかもしれないと。


「俺か?」

「それとも俺か?」

「どちらもです。」


そう言うと、まずはゾンビの右腕を持つ男が名乗りでる。


「とりま名前だけでいいか、俺はゆうだ。よろしくな。」


次に、刀を背負う男が名乗る。


「俺は裕次ゆうじで、こいつの弟だ。」


2人は名乗り終わり、「君は?」の様な顔をする。


「ああ、俺は湊人っていいます。」

「湊人か、いい名前だな。」

「響きがかっこいいな。」


裕と裕次は湊人の名前に感心していると、


「あの、裕……さん?もしかして、あなたってあのゾンビの襲撃を止めた、『英雄』ですか?」

「………。」


裕は少し黙り込む。


「いいのか?これ言っても。」

「先に行っておけば、これを聞くなら俺達の言う事を聞かなければならなくなることを。」

「なんでも聞きます、教えてください。」


湊人は目を輝かせながら言う。


「あれは俺じゃない。」

「え?」

「俺の前の継承者、それよりももっと前の、1番最初にこの力を手にした人間がやったのさ。」

「そうなんですか、ありがとうございます。」


湊人は頭を下げながら礼を言い、帰ろうとした。

だが、


「おいおい、勝手に帰っちゃ困るよ。」

「俺達の言う事を聞いてくれるんだろ?」

「そう、でしたね。」


ニヤッ

2人は笑い、こう言った。


「「俺の力を受け継いでくれ。」」

「力を…受け継ぐ………?」


湊人はまた呆然と立ち尽くした。


「おい!セリフ取るなよ!」

「そっちが取ったんだろ?」

「そもそも俺への質問だ、俺が受け継がせる。」

「いいや、俺は最初に俺達って言ったから俺にも権利はある。」

「んだと!」

「やんのか?」


喧嘩する2人を見ていた湊人はある決断をする。


「両方、」

「「あ?」」

「両方、受け継ぎます。」

「お前、正気か?」

「はい。」


裕は心配するように話す。


「2つも持つなんて大変だぞ?わかってるのか?」

「わかっています。でも、互いに継承を譲れないと言う事は、何かしら問題があるんですよね。」

「…………。」

「…………。」


2人は黙ってしまった。


「今更、抵抗しても無駄か。」

「そうだな、彼には全てわかったのだろうな。」

「やっぱり、何か問題があるんですね。」

2人は座り込む。

「ちょっ、道路……。」

「俺達の力は普通の力と違って強大な上に使用期限みたいな『任期』ってもんがある。」

「俺達が持つこの力は最大30年しか持てない。」

「つまり、もう任期がないと言うことねですね。」

「「ああ。」」


2人は同時に返事をする。

そして、立ち上がりその場を離れようとした。


「悪かったな、初対面な奴に俺等の事情を押し付けるのは良くないもんな。」


だが、


「いいえ、やります。受け継がせてください。あなた達の力を…。」

「何言って……。」

「覚悟はできてます。」


湊人は真剣な表情で2人を見つめる。


「…………。」

「そう…か……。」


悩むのも無理はない。

当たり前だ。

同時に2つも強大な力を受け継がせる。

過去に一度、受け継ごうとして失敗し、腕を失った者がいたからだ。


「死ぬかもしれない。」

「それでもやるのか?」

「はい。」


2人は互いに考え続け、ようやく決心する。


「わかった、君を信じる。」

「おい、いいのかよ裕!」

「俺達の負けだ。見ろよ、あの表情。」

「っ!」

「あんな顔されたら断れねぇよ。」


スッ

裕は右腕を人間の腕に戻し、湊人に伸ばす。


「俺は君を信じる、これからよろしくな。」

「はい。」


湊人と裕は握手を交わす。

その瞬間、


「っ!」


裕の持つ力が体に入り込んだ。


「何だ、これ、体に何かが入ってくる。」

「それが力だ。良かった、適応出来て。」


湊人は、右腕をゾンビに変える力を手に入れた。


「名は『物語ものがたり英雄えいゆう』だ。右腕を巨大なゾンビの腕に変え、身体能力を極限まで上げる。そして、ゾンビ故の再生力が備わる。」

「なる…ほど、わかりました。」


湊人は手を握りしめ、力の感覚を確かめる。


「ほら、次はお前だ。」

「わかってるよ。」


スッ

裕次も手を伸ばす。


「ほらよ、世界をよろしくな。」

「はい。」


グッ

握手を交わし、力が体に入る。

力は、渡そうと思えば握手によって渡すことが出来る。

だが、それはこの様に任期のある力のみだ。


「裕次さんの力はどんな名前ですか?」

「俺の力は…。」


話す前に裕次の背中に背負っていた刀が消え、湊人の背中には移る。


「見たまんま、名は『伝説でんせつかたな』だ。」

「普通の刀と何か違ったりしますか?」

「そりゃあ当然、普通の刀と違って、その刀は不壊、どんな攻撃や力を受けても壊れない。そして、『炎』『水』『風』『雷』『氷』と属性を付与できる。」

「そんな事が……。」

「後、最初の一撃の傷を治せなく出来る。」

「それが、伝説の刀という力なんですね。」

「ああ。」


湊人は頭を下げ、


「ありがとうございます。」

「んな頭なんざ下げなくていいよ。」

「後はよろしくな、湊人。」

「はい!」


2人は歩いて湊人と反対方向へ行った。

湊人はそのまま家に帰った。

疲れていたのか、夜食を食べ、風呂に入り、出ては直ぐに寝てしまった。

次の日


「今日は1日中戦闘訓練をしててくれ、副担任がついてくれるからしっかりやれよ。」


湊人のクラスの担任が忙しそうに言う。


「何かあるのですか?」


生徒の一人が尋ねる。


「ああ、これから出張でな。国外に行くことになってな。あっちの国の学場長に挨拶することになったんだ。」


そう放った後、直ぐに行ってしまった。


「よし。じゃあ、戦闘訓練場行くか。」

「そうね。」


湊人と未月は直ぐに訓練場に行く。

戦闘訓練場

3.5haヘクタールを広さがあり、壁は世界一硬い物質を使用しており、筋力や攻撃力、

破壊系の力で壊そうも壊せない壁になっている。

縦長ドーム状になっており、地面は木でできている。ただ、この木も当然世界一硬い木を使って作られている。


「よし、じゃあ今回は1VS1のトーナメントをしようか。」


副担任が紙を出し、誰が誰と戦うか書き始めた。


試合構成

第一試合 湊人 VS 生徒1

第二試合 生徒2 VS 生徒3

第三試合 生徒4 VS 生徒5

第四試合 生徒6 VS 生徒7

第五試合 生徒8 VS 生徒9

第六試合 生徒10 VS 生徒11

第七試合 生徒12 VS 生徒13

第八試合 生徒14 VS 生徒15

第九試合 生徒16 VS 生徒17

第十試合 生徒18 VS 未月


この様に戦っていくようだ。

勝てば勝ったものと戦い、最後まで残った者がこのクラスの1番強い者となる。


「じゃあ、第一試合の奴、配置に付け。」

「はい。」

「わかりました。」


湊人と生徒1は互いに3m離れ、


「構え」


グッ

お互い構えを取る。


「試合開始!」


湊人VS生徒1のトーナメント戦が始まる。


「相手は力を持ってるのかわからない。相手も同じ立場だ、ゆっくりと攻めないと。」


湊人は様子を伺いながら支給された銃(片手拳銃)をいつでも撃てるよう軽構えしている。

弾は全部で15発の使い切り、無くなれば

対人戦闘をするしかない。


これの勝利方法は相手を抑えつけ、行動不能にする。

あるいは降参させるかの二択のみ。


「さあ、どう出る。」


刹那、相手が動き出す。

生徒1は大回りに走り出し、銃を撃ってきた。


「なっ!」


かろうじて、回避する湊人。

銃弾は全体戦闘訓練のときと同じ物を使用しているため、装備がないと強烈な痛みを味わう。そのため、当たれば捕まるのも時間の問題。


「避けたか、次は外さない!」


その後も、撃ち続けてきた生徒1。

それに抵抗しつつ、湊人も撃つ。

だが、互いに弾を使い果たし、対人戦闘に入ることを余儀なくされる。


「こっからは俺の得意な対人戦闘だ。」


湊人の得意分野に入った。

この時の湊人は優勢である。

だが、忘れてはならない。

相手が力を持っているのであれば、力によっては負ける可能性がある。


「やっとか、やっとこれが使える。」


生徒1は笑いながら湊人の方を向き、


使。発動条件は達成した。」

「嘘だろ、力を隠してたのか?」


突然の告白に驚きを隠せない湊人。

しかも、発動条件を達成してしまった今、力の内容によっては負ける可能性がある。


「教えてやるよ、俺の力!」


ダッ

生徒1がその言葉を放つと同時に、物凄い速さで走り出す。


「はっ、速い!まるで、身体能力がさっきよりも上がっている。」

「そうだ!」


そう言いながら、湊人に拳で殴ろうとする。


「っ!」


かろうじて、湊人は拳を掴み、ダメージを受けずに済む。


「俺の力は『身体向上の力』名前の通り、自身の運動能力や体力量、行動限界を向上させることが出来る。シンプルかつ強い力だ。」

「確かに……シンプルだが強い……。」


抑えていた湊人の手は力が弱まり、押され続ける。


「チィッ」


咄嗟にその場を離れ、必勝法を考える湊人。


「どうしよう。俺の受け継いだ力は、使えば人を殺しかねない。なら、動きだけに使う事はできないか…。やってみよう。足の一部にだけ物語の英雄を使い、身体能力を上げる。」

「終わりだ、湊人!」


生徒1が近づき、捉えようとした。


「今だ!」


湊人は足にのみ物語の英雄を使い、高く飛び上がる。


「出来た!」

「なっ!嘘だろ!俺より速く動けるだと?」

「終わりはそっちだ!」


ガッ

湊人は生徒1の両腕を掴み、動けなくする。

しかし、普通なら身体能力が向上した彼を捉える事は出来ない。

何故なら力負けするからだ。


だが、足にのみ使っていた物語の英雄を腕に持っていくことで、腕を変形させずとも、相手よりも力を上回ることができた。

そのため、捉えることが出来た。


「くそ〜。やられた。」


湊人は生徒1に勝利。


「第一試合、勝者湊人!」


その後、彼以外力を持つ者は現れず、決勝戦に進出する。

だが、その相手は…。


「よかった、湊人が決勝戦の相手で。」

「最悪だ、お前になんて一回も勝ったことねぇのによ。」


湊人VS未月の決勝戦が始まる。

だが、これは一瞬だった。

未月が本気を出した。


「おい、嘘だろ?」

「ごめんね、湊人。」


未月の力に手も足も出ず、一瞬にして囚われてしまった。


「け、決勝戦、勝者未月。」


パチパチパチ

生徒らは拍手をする。

それと同時に驚いている。


「なあ未月、そろそろ教えてくれないか?」

「何を?」

「お前の力だよ、一体何の力なんだ?」

「私に勝てたらね。」

「え〜。」


そんな話をしていると、

デーン デーン デーン

帰宅の鐘が鳴る。


「じゃあ、各自解散。」

「「さよなら〜。」」


生徒らはそれぞれ荷物を持ち、戦闘訓練場から出る。


「私達も帰ろう。」

「そうだ……。」


湊人は未月といつも通り帰ろうとした。

だが、


「君、少しいいか?」


何者かに呼ばれ、振り向いた。

そこにいたのは、学場長だった。


「学場長、何でしょうか?」

「君に学場長室に来てほしい。」

「今ですか?」

「ああ、この後直ぐに来てくれ。」

「わかりました。」


それだけを言い、学場長は戻っていった。


「ごめん、そういうことだから一緒に帰れねぇ。」

「仕方ないね、またね!湊人。」

「おう!」


未月は先に帰った。

その後、直ぐに学場長室に向かい、

コンコンコン


「入りたまえ。」


湊人は学場長の言葉を聞き、部屋に入る。


「そこに座ってくれ。」


茶色い椅子に座るよう言われ、腰を下ろす。


「え〜と、一体何のご要件で?」

「礼儀正しくしっかりものじゃのお。」

「当然です、学場長なのですから。」

「まあ、良い。で、何故君を読んだか?だったのお。」

「はい。」


湊人の返事と共に、自身の席からある資料を取り出し、湊人に渡す。


「これは?」

「その資料は、今までのゾンビ出現数を年間表示で表した物だ。」

「増え…てる……。」

「やはり気づくか。」

「はい。」


学場長が湊人から資料を取り、


「受け継いだんじゃろ?『英雄』から、力を。」

「な、何故それを?」

「たまたま帰り道に見てしまってのお。」

「なるほど。それで、この力と何の関係が?」


学場長が急に真剣な顔になる。


「湊人くん、君はゾンビが平和を崩壊しに来ていない理由は、『英雄』がそれを止めただけだとしか思っていないだろ?」

「はい、そうやって習いましたから。」

「この際だから言おう。そんなわけない。」

「え?」


湊人は驚く。


「じゃあ、ゾンビ達は何処に?」

「外じゃ。この国の端のほうに水を入れていない掘りを作った。そのため、その外にゾンビが溜まっておる。そして、掘りに落ちたゾンビ達はある一つの穴から地下に落ち、溜まっておる。」

「それを、俺がなんとかしろと?」

「ああ、ゾンビを倒した『英雄』の力なら、できるんじゃないかってね。」

「わかりました、やります。」


湊人は学場長に真剣な眼差しを送る。


「真面目な生徒でよかった。」

「ありがとうございます。」

「当然報酬は与える、この仕事は死んでもおかしくない物だから……、ざっと1000万程度かな?」

「そんな大金、受け取れませんよ。」

「いいんだ、受け取れ。これは命に関わる危険な仕事なんだ。仕事はそのミッションを達成すれば報酬が手に入る、それと同じだ。」

「わ、わかりました。受け取ります。」

「好きに使ってくれよ、まずは私のお願いを達成してからな。」

「はい。」


湊人は学場長室を出る。

出動は明日。

日の出前に集合し、日が出きってから出発する。


湊人が力を継承してからの初仕事だ。

彼は次の『英雄』になるために、ついに動き出す。


「俺が、明日から世界の英雄になってみせる。」


〜プロローグ〜「始動」 終

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