第8話 現実

「現実的」の「現実」ってなんなんだろうな。

大抵、今まで通りのことをする時に使うよな。


このままでは俺たちはおしまいだ!

「新しい船」を入手するぞ!

って議題で、船長会議に出た。結論。


「幽霊船を盗む。りんごを植える」


りんごの話はどこから生えてきたんだ。

りんごだけに、てか。やかましいわ。


りんごを植えるのは、種を蒔くくらいなら誰にでもできるが下地を作るのは簡単じゃない。写真に残るりんご園と今の陸地を比較すれば俺みたいな馬鹿でもわかる。


なので”りんご計画“は組合の農政連中に任せて、俺は馬鹿でもできる方の“奪取計画“の方に関わることになった。


幽霊船を盗むのと、砂漠でりんごを育てるの、どちらが現実的なのかは正直よくわからない。他の連中もわからないから両方を取ったのだろう。そんな非現実的な計画でも、やらないと俺たちはおしまいだ。それが現実なんだ。


いっそ人形になっちまった方がいいのかなという奴もかなり出てきてる。「おおわかった。ほれ、行ってこい」と揶揄気味に言う気にもなれない。言われたら俺でも本当に行ってしまいそうだ。


まあ、失敗したら灰色に抱きついてあっちに連れてって貰えばいいだけだから。気を強く持ちましょう、そう言って励ましてる。仲間をなのか、自分なのか、両方か。

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