第7話 手順書
日本海生存者組合 作成
灰色領域における行動
原則
原則として、灰色領域においての行動は禁止とする。
灰色人形は生存者のような高度な擬似生産活動を行うが、人形病により死亡した遺体である。
感染性が残留しており、接触すると伝染、ただちに発症し死亡する。
遺体は直ちに人形へと置換される。
模倣された応答から時間経過とともに人形になるという知見は誤解に基づいており、接触から数分で組織の置換が全身に波及するのでほぼ即死である。
一方で、遺体上に模倣された自我の崩壊は数日から数ヶ月、状況により数年である。
(参照:ベーリング海記録、九頭類浄水場記録)
人形病の治療法、遺体の処理法は確立する目処はなく、基礎研究も不可能である。
よって、人形との身体接触は禁忌である。
また、人形の行動は灰色であっても予測不能であり、目前の作業から生前の行動に突然回帰し、周囲の人間に身体接触を図る事態が度々観測されている。
例:檻の溶接作業中だった人形が、付近を通行中の生存者の肩をつかみ、料理の追加注文。
つかまれた生存者は死亡。
したがって、灰色領域での行動が全面的に禁止であることをここであらためて確認する。
除外条件
・事故や災害など、不足の事態により灰色領域への避難がやむを得ない場合
・灰色領域で生産される資源が領域外で生産できず、全ての生存者の存続に必要不可欠な場合(例:人形病の治療法、人形の処理法)
行動
①人形への呼びかけ禁止
②走行禁止
③1m以内で聞こえる程度の発話以上の音量で音を鳴らす行動は避ける
④以下の文言はごく低音量でも人形の作業を中断させ周囲への警戒を招くため発声禁止
・とまと
・どろぼう
・まさなり
・かわいそう
⑤人形を避ける場合は檻などの立方体、建築物に直ちに入り、両手を頭の上に置いてしゃがみ、可能な限り立方体の奥に身体を収納する
⑥行動は夜間とする:日没から日出
⑦ 人形が提供する食糧・医薬品は人形の体組織であり、感染性を持つ。負傷して檻の中で行動できず、やむを得ず灰色人形に救援を求める場合は、水と金属、ガラス製品のみとする。
以上
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