第79話 誕生秘話①

 「早速ですが、本題に。我々を作った理由、戦わせる理由、そして特異の力について教えていただきたいと思います」


単刀直入に聞けば、


「そうだな。これはお前たちの生みの親である我々の口から話すべきだ」

「可愛いねぇ、優司。成長したなぁ」

「まず、希望と絶望を作った理由から話そうか」

「えへへ、その困惑した顔も可愛いねぇ」

「その昔、神々が……」

「食べちゃいたいなぁ〜!」

「うるっさいッ!!」


にこにこと笑いながら関係のない話を続ける彼を蓬莱が殴って黙らせる。が、


「……その昔、神々が」

「あ、優司のお膝だ。可愛いねぇ」

「ぶっ飛ばすぞお前」


なかなか話が進まず、僕らは苦笑した。


「優司、一回だけで良い。棒読みでいいから、彼に『お父さん』って言ってやれ」

「えっ」


兄からの唐突でわけのわからない提案に驚いていると


「話が進まない。早くしろ」

「えぇ……」


蓬莱からもほぼ命令に近い指示を受けた。困惑しながらも、恐る恐る


「お、お父さん……?」


その言葉を口にしてみれば、「ア゜ッ……」と到底この世のものではないリアクションと共に黄泉がバタリと倒れた。「こんなことで?」と思ったが、どうやら、彼らの読みは正しかったようだ。


「ふぅ。ありがとう、優司。改めて話そうか」


何事もなかったかのように続ける蓬莱を見ると、やはり彼女は人間ではないのだと思い知らされる。僕はまだ驚きで口が塞がらないのに。


「その昔、神々がまだ人と深く関わりを持っていた頃。人間が神々を騙し、利用する、今では重罪とも言える事件が多発した。そのせいで、多くの神が邪神化。天界と冥界の神を派遣したとて手がつけられない、という状況に陥った。このままでは、まずい。そう思った我々最上位クラスの神は、力を合わせ、全国的に神の姿を見ることができる人間を減らしたのだ」

「霊力量が一定の数値を超えないと、神の姿を見えない仕組みにしたのか。霊力のある人間は限定されている。元より神の近くで働いていた者、神に気に入られた者、或いはその末裔」

「なるほど。信頼できる人間だけが神々を見ることができるようになり、そのおかげで事件は激減すると。オレたち人間ではとてもじゃないが力の及ばない領域の話だな」


蓬莱の話に加えて解説を入れる悠麒さんと古白さん。息ぴったりだ。


「だが、この政策で別の問題が発生した。神と人とを繋ぐ者がいないと信仰が自然と薄れる。そして人が無意識に神域を侵してしまった時、短気な神もいる、その神が怒り狂って大災害を起こすかもしれない。実際、何度か起こした」

「そこで誕生したのが、神守と神楽か」

「あぁ。神守は神の使いとして、神楽は神から気に入られた者として、人類の代表を頼んだ。神守は危険が伴う仕事が多くなるため、五人の従者……私の直属の部下……つまり五神の依代をつけたわけだ。これで、全て上手くいくはずだった。だが……」

「だが……?」

「初代神守は女、初代神楽は男だったんだ」


ここで一度、蓬莱が口を閉ざす。不思議に思い、首を傾げると、彼女は言いにくそうに、苦笑しながら話す。


「あー……なんだ、その……リアルで、織姫と彦星みたいになってしまって……」

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