第77話 冥界①
「……で、オレが呼ばれたわけね」
古白さんは僕の頭を撫でると
「良い判断だ。偉いぞ〜」
そう言って僕を抱きしめた。
「離れろ、殺すぞ」
「うわっ、露骨。本性出てるぞ」
悠麒さんもいろいろ隠さなくなったな。僕も、大概なのだけれど。
「ところで、大学の方は大丈夫でしたか?」
舞衣さんの問いに古白さんは親指を立て、だがしかし真顔で答える。
「たぶん大丈夫」
えっ、たぶん? 無理矢理開けてもらった感じだろうか。申し訳ないな。
「ってか、いざとなったらアレ使うし」
「アレって?」
「……申請ですね。単位免除の」
「え、大学にもあるの? お父さんからは高校までだって聞いたけど」
一応、古来より政府から支援を受けて成り立つ一門であるが故に、神守も神楽も、高校までは学校で単位から学費までいろいろと免除されることが多い。しかし
「神守は本当に裏社会の住人ですから、その、なんと言いますか……」
「簡単に言えば不正だよね。政治家を買収することで免除してもらうわけだ。本物のオカルトグッズも揃っていることだし、勝率は十割だ」
「神々への信仰も強まれば神にも恩を売れる。もちろん信者を抱える彼らにもお金が入る」
悠麒さんや古白さんの言うようなことを簡単にできてしまうんだよな。
「うわっ、最低……」
ごもっともである。
「そうならないように、頑張って欲しいところではありますけど」
「優司の応援次第かなぁ」
「いやお前の努力次第だろ」
透かさずツッコミを入れる悠麒さん。僕が彼の邪魔をしているのは間違いないが……応援か。
「考えておきますね」
古白さんは子どものように目を輝かせる。どれくらいを求められているのかはわからないが、検討だけで喜んでくれるのなら頑張らないと。
「早く行きましょう?」
舞衣さんの圧により、サッと切り替える。とはいえ、この先は
「じゃあ、仮死状態になってもらうよ」
「手元が狂って死んだらごめんね〜」
「悠麒さん?」
「……冗談です。すみません」
本当に、この人、たまに怖い。冗談が冗談には聞こえない時がある。そのちょっと悔しそうな顔とか、本気っぽいのやめて欲しい。本当に。心臓に悪いからやめて欲しい。
きちんと彼を監視しつつ、舞衣さんの仮死化を見守る。彼は舞衣さんに二、三回触れると、最後に一枚の札を体内へ捩じ込む。この仕組みは未だによくわからないが、これで準備完了。
「身体、霊体化しているから気をつけて。気を抜くと浮遊するよ」
「えっ、あっ、はい……」
「違和感ないでしょ? 褒めてくれても良いんだよ? これ、今のところ僕にしかできないんだからね」
「……ありがとうございます?」
舞衣さんは混乱しているようだ。まぁ、混乱はするよな。僕も初めて霊体になった時は気持ち悪かった。コツさえ掴めば一瞬で霊体化できるようになるし、違和感にもそのうち慣れるのだけれど。
「では、行きましょうか」
僕は冥界に繋がる門を出現させると、そのまま門を潜り、目的地へと向かった。
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