第76話 神守・神楽の真実①

 「ところで、あれから何か変わった?」


学校にて、幸希くんから話しかけられる。一応友人たちの前だから、詳細は避けてくれたようだった。


「なんとなく、善良な霊も見えるようになりましたかね? 守護霊の類がはっきりと。霊力は相変わらずですが……何故でしょう?」


幸希くんは何か思い当たるところがあったのか軽く空を仰ぐ。そして


「あんまり気にすることはなさそうだね!」


わかりやすく、はぐらかした。


「何? なんかあったの?」

「まぁ、いろいろ?」

「お前も憑かれやすいんだよな、確か」

「奏真と違って、神に、ね」

「なんか格の違い見せつけられているみたいでウザいな……」

「あはは。優司はもっと凄いよ」

「だろうな」

「こんな性格だしね」

「なんか父性が芽生えるよな、不思議と」

「えっ、どういうことです?」


満場一致の友人たちに思わずつっこむ。同い年だよね?


「わかる」


近くにいた悠麒さんが大きく頷く。わかるんだこれ。いや、悠麒さんは年上か。


「だめだよ、私のなんだから」


そうこうしていると、舞衣さんが教室にやって来る。


「おぉ、怖っ。束縛系は嫌われるぞ」


暁人くんの揶揄いに動じることなく、彼女は


「嫌われても離さなければ問題ないでしょ?」


冗談なのか本気なのかわからない一言を放つ。本気ではないことを信じたいところだが。


「ところでさ、神楽家の書庫からこんなものが出てきたんだけど……興味ない?」


彼女が出してきたのは、一冊の、日記のような書物。誰かに見られることを恐れたのか、強い霊力により封じられている。


「今まで誰も読めないし開けなかったの。でもふと整理していたら、偶然か必然か、この本を開くことができて。お父さんに言ったら『僕は読めないけど』って言うから不思議で」

「……なるほど。それでお嬢は優司の元に来たわけね」

「そういうこと」


え。わからない。どういうこと?


「私たち、特殊でしょ? もしかしたら、これを書いた人も特殊な人だったかもって。もしもそうなら、二人なら、二人だけなら読める気がして」


つまり、『絶望の器』である僕と、『希望』である彼女なら、この本を読むことができるかもしれないと。その人が書いたものではないかと言うことらしい。


「……開いてみますか」


僕は、恐る恐る一ページ目をめくる。すると、彼女の読みが当たったようで、文字を読むことができた。


「暗号化……。確かに、これは読めないね」

「うわぁ、文字化けしている感じか……」

「え、なんか記号みたいになっていない?」

「真っ白じゃなくて?」

「だよな。真っ白だ」


霊力量によっても見え方が異なるのだろうか。悠麒さんと幸希くんは文字になっていることは理解できて、奏真くんは何か書いてあることはわかる。他二人は真っ白。なるほど、厄介な書ではある。よく今まで処分されなかったな。


「読めますか?」

「もちろん。優司くんは?」

「えぇ、読めるようです」


僕らは互いに顔を見合わせると、頷き、日記に目を通した。

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