第74話 これから①
「それじゃ、乾杯〜!」
礼治さんの合図で、グラスがぶつかり合う音が響く。
「ちょっと! 古白食べ方汚いんだけど!! アンタそれでも名門・神守一門?!」
「うるっせぇなぁ……」
「ふふっ、仲が良いのね」
「「良くないッ!!」」
「あらあら、まあまあ」
「秀治くんはお茶とジュースどっちにする?」
「あ、お茶で」
「了解。ストップ言ってねー」
「え、あっ、ス、ストップ!」
わいわいと賑わう食卓に思わず頰が緩む。その一方で
「えっ、龍牙くん彼女いなかったの?!」
「優司こそ命の男だったからな。一生、自分が青龍でいるつもりだったらしいし」
「モテるのにもったいないよね。遊ぶだけでも遊んでおけば良かったのに。おかげで次期青龍候補は君の息子。どうしようかねぇ……」
「本人さえ良ければ構わないけど……そちら的には大丈夫なの?」
「問題はないが……」
「波青家の神守一門退会手続きが面倒だねぇ。あと君の息子が死んだ後の青龍の引き継ぎ」
「そっか……君たちは半神になったからずっとその問題と向き合うことになるのか……」
「逃げられないよね」
「仕方がないな」
相変わらず大人組は仕事の話をしていた。
「あと彼。幸希だっけ? 彼は欲しいね。実に神守一門向きの人間だ。サポートとして入ってくれたら、戦力がアップするのに」
「えっ」と声が漏れると、一気に視線がこちらに向く。慌てて口を塞ぐが、時は既に遅し
「え、何の話?」
「幸希くん、神守一門に欲しいねって話〜」
これだから酒に酔った大人は嫌だ。舞衣さんの問いに、礼治さんは素直に答える。そして
「別に良いですよ。むしろ良いなら喜んで」
ほら。こうなった。
「危ないでしょう?!」
「それはお前だって同じだろう」
「あなたに何かあったら僕は一体どんな顔してあなたのご家族とご友人に……」
「あー、はいはい。要するに死ななきゃ良いんだろ。わかってるって」
「死ななきゃ良いで死ななければこの世の中に争いで死ぬ人なんていませんよ!」
「仕事は増やさないように頑張るってば。僕、弓なら全国トップクラスで強いよ?」
「そういう問題じゃなくて、ですね!?」
久しぶりに声を荒げて口喧嘩をすれば、横から霧玄さんがニヤニヤと笑いながら言う。
「素直に『大切な友達を危険に晒したくない』って言えば良いのに」
その言葉を聞いた幸希くんは、目を細めて口角を上げ
「へぇ〜? ふーん……?」
何か意味のある言葉をいうのではなく、揶揄うように含みのあるリアクションをする。
「う、るさいですね……あぁ、そうですよ! 友人の命は心配です!! 悪いですか!?」
開き直れば、みんなからどっと笑われた。顔が熱い。
「じゃあ、決まりだね」
悠麒さんは上機嫌で一瞬だけ姿を消すと、すぐまた姿を表す。
何が変わったのかというと、消えた後、その手には札と数珠が握られていた。
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