第51話 大人の事情②【side:古白】

 「玄武は代償を払ってでも主を守ろうとしているわよ。あなたはどう? 何を差し出す? それとも、代償は払いたくない?」


怒っているのか、畳み掛けるように問う大鳳。それが良かったのか悪かったのかはわからないが、神楽は冷静さを欠いて乱撃を繰り出した。


「結局、悲劇のヒーローごっこをしていたのはあなたの方ね。主を救いたいフリをしてみて、楽しかった?」

「そんなはずがないだろう! 真司くんの息子だぞ!? 彼が命懸けで守った息子を救いたくないだなんて……」


大鳳は神楽のセリフを聞くことなく、オレに目を向けた。連携攻撃の合図だった。


「ならばその言葉、偽善にならぬように」


先代の朱雀の口癖を呟くと、大鳳は弓を引く。当然の如く避けられる。しかし、避けたことで体勢を崩したところを、オレが蹴る。


「しまっ……!?」


最後まで言わせることなく、神楽を地面に叩きつける。オレはそのまま彼の体にまたがると、息を確認した。死んではいない。


「良い感じに気絶した。さぁ、優司のところに向かおう」


オレが言うと、大鳳は「そうもいかないみたいだけどね」と後ろを指差す。そこには、大量の神々や霊たちが押し寄せていた。


「あっ……そういえばコイツ……」

「えぇ。この場所の管理人。つまり、彼が気絶したら……」

「ですよねぇ〜!!」


敷地内に入り込もうとする魑魅魍魎を、間一髪で止める。白虎の力を得たことで、結界を張るスピードが上がっていてよかった。だが、結界を何度も張り直さなければすぐに壊れてしまいそうだ。それだけの数がいる。


「とりあえず、私たちは望まない客の対処をする必要がありそうね」


面倒だが、やるしかない。


「だが、どうする。他の三人が心配だ。加勢ができるものならしたいが……」

「そんなものはみんな同じ。だからこそ、あの三人が無駄な戦いをしないようにする。それが私たちにできることだと思う」


驚いた。昔なら、いち早く「優司くんのところに行かないと!」と言っていた彼女が、冷静に分析している。


「大人になったな」


オレは結界を張り直しながら、隣の少女に言葉をかけた。


「ウザい」


そう言う大鳳の耳は赤く染まり、「なんだよ、可愛いところあるじゃん」と内心思いながら、敵の勢力を可能な限り削っていく。神は流石に難しいが、一般的な霊はで除霊できた。


「問題は青龍だよな。あの神、だいぶ偉いやつなんだろう? その神を一人で相手できるものなのか?」

「さぁね。でも、策はあるって言っていたわ。信じましょう」


気の遠くなる作業に心身を奮い立たせながら、オレたちは戦い続けるのであった。

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