五章
第49話 集結【side:秀治】
波青さんに連れられて、神守家の会議室へとやってきた。どうやらある手順を踏まなければ入れない仕組みらしく、神守一門の防犯意識に感心する。
会議室には既に四人が揃っていて、緊張感が漂っている。
「おや。随分と変わりましたね、霧玄殿。誰かと思いましたよ」
波青さんが言うと、
「俺のことはいい。時間が惜しい。早くしろ」
霧玄さんは冷静に彼に言葉を返した。
「では、単刀直入に言います」
波青さんが僕を手招きして呼ぶ。僕が彼の隣に行くと、波青さんは視線を鋭くさせて、四人を見た。空気が更に張り詰める。
「お嬢に会って確信しました。お嬢……いえ、神楽舞衣は主と対となる存在。『希望の化身』で間違いありません」
「だろうな」という納得と共に、多少の期待が打ち砕かれた落胆が四人から見える。気持ちはわかる。僕も「あわよくば姉ちゃんに説得してもらいたい」と思っていた。もし二人が家族になれたのなら、優司くんはもう一度「家族愛」を知ることができる。それが、解決に繋がるのかもしれないと。
「これは……なかなか……。過去最高レベルの厳しい試練を与えられたね」
悠麒さんは苦々しく笑っていた。しかし、その言葉とは裏腹に、余裕はありそうな笑みだ。
「それで。何か策はあるの?」
大鳳さんが冷静に問う。波青さんはその言葉を待っていたと言わんばかりに口角を上げ、
「えぇ。とっておきが」
僕を懐に引き寄せて言った。困惑する僕だったが、どうやら四人には伝わったようで、驚いた表情を見せたり、ニヤニヤ笑ったりしている。
「神守の歴史が動きそうだね」
悠麒さんは明るい声で言うと、僕を凝視した後、にっこりと笑った。真意はわからないが、なんとなく良い意味である気がする。
「私は、彼の記憶を消してでも彼を生かします。皆さんはどうしますか?」
波青さんの問いに、四人は
「俺も同じ考えだ。しかし、それは最終手段にしたい」
「そうだね。まずは彼の闇を解放してみよう。解決できるのなら、その方が良い」
「あぁ。単純に、気づいてやれなかった想いも知りたいしな。命最優先、次にオレたちの我儘って感じで」
「私も賛成。覚悟はできているけど、最後まで足掻いてみたい。強力な助っ人もいるし」
最後の大鳳さんの言葉に、疑問を浮かべる僕らだったが、彼女をよく観察すると答えは出た。
「おい、一般人を巻き込むなよ」
古白さんの、呆れと怒りが混ざった声にビクッと肩を跳ねる僕。一方、大鳳さんは
「彼を一般人だと思っていたら大間違いよ」
何かを思い出した後、顔を青くさせた。余程のことがあったのだろう。触れないでおこう。
「じゃあ、役者は揃ったわけだ」
悠麒さんは立ち上がると、棚から地図を取り、机の上に広げる。
「神が一番に狙うのは神楽家だ。ここを最初で最後の戦場にしたい。希望の化身が死ねば神の勝ち。絶望の化身が死ねば人間の勝ちだが……僕らが狙うのはその中間。誰も死なずに、事態を収束させること。まずは、お嬢を止めよう。それから僕が裏で仕掛ける。チャンスを作ってあげるんだ。後は任せたよ?」
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