第29話 思惑
「青龍と玄武が、久しぶりに模擬戦だって」
嬉しそうに話す悠麒さん。
「真の目的は、こちらだったようですね」
僕が言うと、これもまた嬉しそうに
「気づいたんだ。成長したねぇ」
ニヤニヤと笑って言った。
「今の青龍は強い。僕も力だけで戦ったら互角になると思う。だけど、実戦なら僕が勝つよ。彼には力しかないからね」
「秀治くんを育てることによって、初心を思い出してもらうんですね。少なくとも、防御型の戦い方からは逃れられません。防御型の戦いができるようになれば、死亡率が下がります」
「そう。大戦では自分の身は自分で守る必要がある。攻撃型の青龍が欠けた時、僕らは一気に不利になるからね。消耗戦は苦手だ。なるべく避けたい」
「古白さんと大鳳さんも試練を受けるそうですから、ちょうど良いタイミングだったかもしれませんね」
「違いない」
あの悠麒さんが、無条件で秀治くんへの鍛錬を許可するはずがない。彼の申し出を断り、強制的に帰宅させなかった地点で確信した。これは互いに高め合えると。
「しかし、意外でしたね。以前のあなたなら、断っていたでしょう。リスクが大きい、と」
「以前なら、ね。でも、全員が神化すれば話は別だ。人間が神に敵うはずないだろう? 彼の育成の件、利益の方が大きい」
「そういうものですか?」
「あぁ。全試練経験者の僕が言うんだ。間違いない」
そんなやりとりをしていると、メールが入る。開いてみれば
「おや」
優美さんから、霧玄さんと波青さんの模擬戦の様子と、その後の談笑の様子の写真が送られてきた。
「へぇ、随分と良い顔をするじゃないか」
楽しそうに、しかし、どこか悔しそうに、悠麒さんは言う。
「良いねぇ。神守一門の模擬戦は面白い。僕も入りたかったなぁ」
「今ならできそうですが、御二方の神化の儀が終わってからですね」
「そうだね」
僕は帽子を取ると、そのまま玄関へと向かう。
「というわけで、今から買い物です。久しぶりに彼らに会うのですから、手土産くらいは持って行きましょう」
二人でのんびりと和菓子屋を目指す。きっと、彼らは張り切って大鳳さんたちを鍛えてくれるに違いない。とびきり美味しい和菓子を買って持って行こう。
彼らに会うのが楽しみだ。二人のことを気に入ってもらえると良いのだが……。
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