第30話 白虎の試練【side:古白】
正直に言う。めっちゃ怖い。
じいちゃんに勧められて「やる」とは言ったものの、オレ・白虎の試練というのは
「おぉ、貴様が我の器か」
なんと、本物の白虎と戦うことだった。見た目はデカいホワイトタイガー。たぶん、これ口に出したら殺されるだろうな。
「なに、恐れることはない。多少は手加減してやる。一本だ。我から一本取れば認めよう」
じいちゃんはこれを乗り越えたのか。負けてはいられないという気持ちと、神に勝てるわけがないという気持ちが
「……いきます」
いつも通りに構え、先制攻撃を試みる。しかしやはり一筋縄ではいかない。攻撃が当たることはなかった。
「うむ。良い拳だ。しかし、甘い」
気づかないうちに距離を詰められ、腹に一発、蹴りを入れられる。咄嗟に体を捻り、受け身を取ったものの、激痛が走る。骨、折れたかも。
「貴様の弱点は敵の攻撃に弱いことだ。玄武に甘えているのか? それでは強くならん」
遠のく意識を懸命に引き戻し、白虎の方を向き直す。防御が苦手。確かにそうだ。だが
「オレは誰にも甘えてねぇ!!」
霧玄に甘えている、と言われたのが
「怒りを力に変えることは良い。だが、感情に支配されては相手の思う壺だ」
悔しいが、正しく分析されている。反論ができない。
「その程度で、神守の子に仕えると? 笑止。やる気がないなら辞めてしまえ。お荷物だ」
それを言われた時、オレの中で何かがぷつりと切れた音がした。
その程度? やる気がない? お荷物?
ふざけるな!!
オレは、確かにじいちゃんより霊力はない。波青や霧玄、悠麒と体術縛りで戦っても勝てる自信はない。それでも、役に立ちたくて。日が暮れても鍛錬を続けていた。体調は万全であることを心掛けた。これでも「やる気がない」と言うのなら大学を辞めても良い。彼女と別れたって構わない。普通の暮らしを諦め、神守家に仕えると決めたその日から、オレの最優先することは一つだ。お荷物になってたまるか。オレが優司を守る。その決意は揺るがない。
怒りは沸々と込み上げる。だが頭は不気味なほどに冴えていた。殺意が脳を動かしていく。
今度は明確に理解できた。あえて白虎が弱点を晒していたこと。はっきり隙が見える。それを狙えと言うことだろう。ただし。
(絶対に殺す)
手加減されていることにすら腹が立った。神が何だ。オレは舐められるほど弱くない。
ゆっくりと相手に近づき、足を止める。ここから狙いを覚られる前に一気に距離を詰める。まずは
「ほう、面白い。見事な連撃だ」
しかし、白虎は声色を変えない。立ち上がっていないのに、少しも声の調子が変わらない。
そこでようやく気がついた。
「クソッ、幻影かよ!!」
高らかな白虎の笑い声が響く。オレは幻影相手に
「ははははは! そこまで見破るとは! この短時間で随分と成長したな。今後が楽しみだ」
「腹立つゥ!!」
「ははははは! 良い良い、認めてやる」
最後まで、一枚上手だった白虎に腹を立てた状態でオレの神化の儀は終了した。ベッドの上で目を覚まし、自分の敗北を悟る。
「クソッ……」
頭が痛い。まだ、体が白虎を受け止められないらしい。それすらムカつく。
オレはじいちゃんに褒められる中、絶対に更に強くなろうと決意して、体をもう一度、横に倒した。
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