第34話 模擬戦②
始めに優勢になったのは、古白さんだった。
「おらよッ!!」
白虎の力を得た古白さんは、霊力とスピードが著しく上がっていた。砂を蹴り上げ、みんなの目を眩ませる。その中で、一番近くにいた波青さんに狙いを定めると、砂の中からもう一発、蹴りを入れる。
「あの子に武器はないのかい?」
「彼は体術を得意としています。手足が武器、と言えるでしょう。他にも、噛む力も強化されているんですよ。あまり使わないんですけど」
礼治さんの問いに、解説を交えて返していく。
続いて、勢いを増したのは波青さんだった。古白さんの蹴りを刀で受け止め、跳ね返す。その隙に放たれた大鳳さんの矢さえも斬り落とし、頭上にいた悠麒さんに斬りかかった。
「すごいね、侍みたいだ」
「剣士の一族の生まれです。幼い頃から厳しめに鍛えられているため、腕はピカイチです」
「遠距離タイプの人たちが押されている……。やっぱりスピード命の接近戦の方が優勢になりやすいのかな?」
「さて、それはどうでしょう?」
直後、今まで息を潜めていた霧玄さんが波青さんに銃弾を放つ。突然の死角からの攻撃に、波青さんは驚いて避けるが、銃弾は、軽く彼の腕を
「……っ!」
痛みを堪え、波青さんは刀を構え直す。
「おぉ! 武瑠くん、やるぅ!」
「防御だけでなく、攻撃にも長けています。敵にすることは最も避けたい相手ですね。しかし、アレは少々厳しいかと」
「えっ?」
体勢を立て直していた古白さんが、霧玄さんを狙って拳を振り上げる。受け身をとって攻撃を
「うおっ!? アレ、武瑠くん死なない!?」
「大丈夫ですよ。ルールで殺すことは禁止していますから。それに彼の得意分野は防御です」
玄武の力を使って、盾を出す。盾に弾かれた悠麒さんは、楽しそうに笑うと、すぐに標的を近くにいた大鳳さんに変えた。
大地を大きく揺らし、足場を崩す。悠麒さんの固有の技に動揺しつつも、なんとか避け、弓を引く大鳳さん。
「さぁ、どうする、朱雀!」
無数の針を降らせる悠麒さん。一方、大鳳さんはそれを潜り抜け、
「この程度、朱雀の試練に比べたらマシよ!」
燃え盛る矢を悠麒さんに放った。それを避ける悠麒さん。避けると同時に爆発を起こし、周囲を巻き込む。
「何あれ、何あれ!」
「どちらも、神の加護による固有の技ですね。麒麟の大地、朱雀の火炎……『
「爆発するんだ……。
「そうなりますね」
みんなの戦闘の様子を手帳に記録する。すると
「勤勉だね。細かく分析されている」
礼治さんは手帳を覗きながら言う。正面では、多くの爆発音と、消滅時の光が飛び交う。
「……失いたくないじゃないですか。最終的な判断を下すのは僕です」
少しずつ怪我が増えていくみんなを見て、ペンを強く握る。必死に戦う五人を見つめ、僕は、はっきりと言い放った。
「僕は、僕にできることをするまでです」
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